休業中のアルバイト
休業期間中にアルバイトはできるか
休業期間は、使用者の事情、あるいは天災地変などの理由により労働者の労務提供ができなくなっている状態であり、その期間使用者が他社の就業を許可しない理由はないといえます。
多くの会社は、兼業禁止規定を設けています。
ただし、無許可他社就労禁止規定は、その就労義務の完全履行を担保するために設けられたと考えられます。
したがって、他社に就労すること一切を禁止するものは、公序良俗に反し無効とされています。
休業中、無許可で他社に就労したことを理由として行われた懲戒解雇が無効となった例
平仙レース事件 浦和地裁 昭和40.12.16
無許可他社就労が禁止されるのは、それによって会社の秩序を乱し、あるいは従業員の労務提供が不能若しくは困難になることを防止することにあり、そのような恐れの全くない場合などは、就業規則違反として懲戒処分することは許されない。
休業中アルバイトで得た賃金はどうなるか
賃金の100分の60の部分は、協定で一時帰休中に他で働いて得た収入を休業手当から控除する取り決めがあっても控除できません。
ただ、労働省通達によると、一時帰休期間を「休日」とする取り決めであれば、労働日を休業とするのではないから休業手当の問題も起きないとされています。
休日増による一時帰休の場合は、休業期間中の生活が問題になりますから、協定でその間の生活保障について取り決めておくべきでしょう。
また、平均賃金の100分の60を超える部分について、別に取り決めをすることは自由です。
この部分については、アルバイトによる収入に応じて減額されることもあります。
次に協定がない場合ですが、民法536条第2項後段は「自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない」と規定しています。
判例(駐留軍山田部隊事件 最高裁第二小法廷判決 昭和37.7.20)では「債務を免れたるに因りて得たる利益」とは、単に債務の免除による直接の利益だけでなく、債務免除によって得た時間を利用して他で働いて得た利益も含まれるとし、副業程度の労働から得た収入でない限り、「債務を免れたるに因りて得たる利益」になるとしています。
民法の立場に立てば、アルバイト収入は返還し、反対給付として給料全額相当を受けることになります。これでは、アルバイト収入が100分の40以上になると、会社側にとって有利です。
一般的に、一時帰休中のアルバイトは生活を維持していくうえでの家計補助のための臨時的なものですから、副業程度の利益といえるでしょう。したがって、アルバイトの収入は償還すべき利益とはならないと考えられます。
また、仮に償還すべき利益になるとしても、民法536条2項と違って、労基法26条は、休業手当部分の(平均賃金の100分の60)の減額を認めていませんから、使用者がアルバイト収入を休業手当から控除することは許されないという考え方が確立しています。