休業手当を請求できない場合
使用者の責に帰さない事由による休業
使用者の責に帰さない事由による休業の場合は、使用者は休業手当を支払う義務を負いません。
次のような場合、休業手当を請求してきても認められないでしょう。
天災地変など不可抗力による休業
台風により工場が倒壊し使用不能になるなど、使用者の努力ではいかんともし難い休業の場合です。
しかし、雨天による休業などの場合でも、それが自然現象だという理由だけで一律に不可抗力による休業であると、みなされるわけではなく、個々のケースについて使用者に帰責事由がないかどうかが判断されます。
法律を遵守することにより生ずる休業
法律の定めによる休業は使用者の責に帰すべきものではないとされています。
労働安全衛生法による健康診断の結果、労働者を休業させるなどが、これに当たります。
一部労働者のストライキによる休業
これについては、見解が分かれます。
労働省通達によると、一部労働者のストにより、残りの労働者を就業させることができなくなった場合、ストライキは労働者の権利の行使であり、使用者がいかにスト回避の努力しても最後は避けられないものだから使用者の責に帰さないものとしています。
ノースウエスト航空事件 最高裁 昭和62.7.17
正規従業員のストライキにより業務が困難となり、そのために、地上作業の従業員(別会社)の就労を必要としない期間が生じた。
このため会社は、当事者に休業を命じ、休業期間中の賃金をカットした。
別会社の従業員らは、賃金支払ないしは休業手当の支払いを請求判決は、「使用者の責めに帰すべき事由」に、本件ストライキは該当しないとして、これを認めなかった。
なお、このような場合でも残りの労働者を就業させることが可能であるにもかかわらず、それをせず単に残りの労働者の就業を拒否したようなときは、使用者の責めに帰すべき事由になり、使用者は休業手当の支払を免れません。
使用者の工場を閉鎖(ロックアウト)による休業
使用者の正当な争議行為の範囲内であれば、それは使用者の責に帰すべきものではないとされています。
正当な争議行為かどうかは、労働争議における労働者側の争議行為の対抗手段として相当かどうかにより判断すべきであるとされています。
ロックアウトすべてが、賃金支払義務を免れるわけではありません。
労働者側に就労する意思がない場合
これまでの判例は、使用者が労務の受領を拒否する意思を明確に示している場合、労働者は就労の用意をして待機すれば足りるとされてきました。
ところが、最近は、労働者が客観的に就労する意思と能力を有することを要し、解雇されたことで労務遂行の意思を喪失している場合には労務の提供があったといえないとする裁判例(ユニ・フレックス事件 東京地裁 平成10.6)も、生まれています。