休業手当

休業手当が支払われるのは

休業手当は休業事由が使用者の責に帰すべき場合に支払われます。

次のような場合、労働者は休業手当を請求できることになります。

(1) 使用者の故意又は過失による休業
(この休業の場合は、民法536条の規定により賃金の全額の請求もできる)
(2) 仕事がない、製品が売れない、資金調達が困難など経営不振による休業
(3) 資材の不足による休業
(4) 会社の設備、工場の機械の不備・欠陥による休業
(5) 従業員不足による休業
(6) 親会社の経営不振による休業

休業手当は平均賃金の6割

休業手当の支払いは、休業期間中について平均賃金の100分の60以上です。

平均賃金は、労働基準法では、休業手当のほか解雇予告手当有給休暇に対する賃金などの計算の際にも使われます。

月給制の場合

平均賃金は、該当すべき事由の発生した日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額をその期間の総日数(暦日)で除した金額とされています。

賃金が日給若しくは時給の場合

平均賃金は、該当すべき事由の発生した日以前3ヶ月間に支払われた賃金総額をその期間の労働日数で除した金額とされます。

※算出した平均賃金をもとに、休業手当は次の通り計算します。
平均賃金×休業日数×0.6

一部時間の休業の場合は

資材の調達が間に合わないなどの理由で、1日(8時間労働)のうち半日(4時間)を休業する場合はどうなるのでしょうか。

休業手当は労働者の最低生活を保障するために設けられた制度であり、労働者の収入補償的な意味合いがあります。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、平均賃金の6割以上を補償するものであるところから、現実に働いた時間(4時間)に対して支払われる賃金が、平均賃金の6割より少ないときは、その差額を休業手当として支払わなければなりません。

それより多いときは休業手当を支払う必要はありません。


民法と労働基準法との考え方の差

民法536条2項の考え方によれば、使用者の都合による休業に対し、労働者は賃金全額の請求権をもつことになります。

民法第536条(債務者の危険負担等)

前2条に規定する場合を除き、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。

2 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

労務の提供が不可能となった場合、労働者は賃金を受ける権利を失いますが、それが使用者のせいならば、賃金全額に相当する反対給付を請求できるということが規定されています。

労基法が6割補償であるのに対し、民法は全額ですから、一見すると労基法の方が弱いように思われます。

しかし、民法に規定している「債権者の責に帰すべき事由」とは、債権者の故意・過失、または信義則上これと同一視すべき事由とされています。

天変地異などの不可抗力はもとより使用者に責任を負わせられない経営上の障害なども「責に帰すべき」ではないと考えられます。

一方、労働基準法に規定する「使用者の責に帰すべき事由」は、それよりも広い概念であって、経営・管理上の障害による休業を含めて使用者の責に帰すべき休業に該当するとされています。(ノースウェスト航空事件 最高裁第二小法廷 昭和62.7.17)

また、労基法は、休業補償をしなかった場合に罰則(6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金 労働基準法119条)を設けて臨んでいる点にも注意が必要です。


ページの先頭へ