未払い賃金の遅延損害金
遅延利息とは
賃金が不払いの場合、本来支払われるべき日の翌日から遅延している期間の利息に相当する遅延損害金(年利6%)の請求をされることがあります。(商法514条の商事法定利率)
また、退職した労働者の退職金以外の不払い賃金については、退職日に支払日が既に過ぎている賃金については、退職日以後、退職日以降に支払日がある賃金については、その支払日以後について、年利14.6%の遅延損害金の請求をされることがあります。(賃確法6条1項、同法律施行令1条)
関連事項:賃金の考え方→
遅延利息
労働者が在職しているとき
区分 | 種別 | 利息 | 根拠 |
---|---|---|---|
営利企業の場合 | 賃金 | 6% | 商法第514条 |
それ以外の場合 | 賃金 | 5% | 民法第419条、第404条 |
※学校法人、医療法人、財団法人などは営利企業扱いではありません。
労働者が退職している場合
区分 | 種別 | 利息 | 根拠 |
---|---|---|---|
営利企業の場合 | 賃金 | 14.6% | 賃確法第6条、同法施行令第1条、施行規則第6条 |
退職金 | 6% | 商法第514条 | |
それ以外の場合 | 賃金 | 14.6% | 賃確法第6条、同法施行令第1条、施行規則第6条 |
退職金 | 5% | 民法第419条、404条 |
天変地変や会社倒産など、やむを得ない事情のある場合
区分 | 種別 | 利息 | 根拠 |
---|---|---|---|
営利企業の場合 | 賃金 | 6% | 商法第514条 |
退職金 | |||
それ以外の場合 | 賃金 | 5% | 民法第419条、第404条 |
退職金 |
「やむを得ない事由」とは
以下のように定められています。
(1)天災地変により金融が麻痺した等の場合
(2)事業主が破産宣告等を受けた
- 破産の宣告を受けた
- 特別清算開始の命令を受けた
- 整理開始の命令を受けた
- 再生手続開始の決定があった
- 更正手続の開始の決定があった
- 事業活動に著しい支障を生じ賃金を支払うことができない(労基署長の認定が必要。また、中小企業事業主に限られる)
(3)法令の制約により賃金の支払に充てる資金確保が困難(特殊法人等の場合)
(4)支払が遅延している賃金の存否について、裁判所・労働委員会で争っている
(5)その他、上記(1)~(4)に準ずる場合
なお、これらの事由が生じる前の期間、および止んだ後の期間については、当然、遅延利息を支払わなければなりません。
いつからが遅延か?
月例賃金であれば、就業規則や賃金規程で、例えば毎月25日支払いと定まっている場合は、26日から遅延損害金がつきます。
しかし、退職した労働者の場合には、労働者から請求があれば通常の支払日前でも、請求から7日以内に未払いの賃金を払う必要があります。(労働基準法23条)
例えば、労働者がある月に5日付けで退職して、10日に支払請求が会社に届いたとした場合、支払日は17日(10日+7日)となります。
ただし遅延損害金は、退職日の翌日から発生します。
この場合でも、退職金については、支払時期が就業規則等で規定されている場合は、その規定に従います。
例えば、退職してから1ヶ月以内に退職金を支払う旨の規定があるときは、退職が5日付けなら、この規定に従って翌月に5日が退職金の支払日になります。
退職労働者の賃金に係る遅延利息
賃確法第6条
事業主は、その事業を退職した労働者に係る賃金(退職手当を除く。以下この条において同じ。)の全部又は一部をその退職の日(退職の日後に支払期日が到来する賃金にあっては、当該支払期日。以下この条において同じ。)までに支払わなかつた場合には、当該労働者に対し、当該退職の日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該退職の日の経過後まだ支払われていない賃金の額に年14.6パーセントを超えない範囲内で政令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。
2 前項の規定は、賃金の支払の遅滞が天災地変その他のやむを得ない事由で厚生労働省令で定めるものによるものである場合には、その事由の存する期間について適用しない。
どの部分の利息か?
労働者が裁判で請求する額(訴訟物の価額(訴額))は、未払賃金額に加えて付加金の支払いを求めるのであれば、未払賃金額+付加金の金額になります。
遅延利息については賃金支払日の翌日から請求できます。
ただし付加金の遅延利息については裁判所の判決言い渡し日の翌日からになります。
予告手当の場合
解雇予告手当は、遅くとも解雇日までには支払わなければならないものですから、遅延利息の起算日は、解雇日の翌日となります。