最低賃金とは

最低賃金について

最低賃金制度とは、国が労働者の賃金額の最低限度を定め、使用者に罰則付きでその遵守を強制する制度です。

最低賃金法第4条(最低賃金の効力)

使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。

2 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で、最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、最低賃金と同様の定めをしたものとみなす。

最低賃金法第40条

第4条第1項の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)は、50万円以下の罰金に処する。

賃金額は労使が自主的に決定すべきものですが、労使の力関係等から人間らしい生活が困難な低賃金が定められるおそれがあり、国が賃金額の最低基準を設定することとしています。

仮に最低賃金より低い賃金を労使合意の上で定めても、それは法律により無効とされ、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなされます。(最低賃金法4条2項)

最低賃金の適用を受ける使用者は、最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければなりません。(最低賃金法4条1項)


最低賃金の種類と効力

最低賃金の決定方式には、地域別最低賃金、産業別最低賃金および労働協約の拡張適用による地域的最低賃金の3種類があります。実際は最低賃金審議会の調査審議に基づき、労働大臣または都道府県労働局長が決定する最低賃金が中心となっています。

これには、以下の2つの制度があります(上表参照)。

(1) 地域別最低賃金 各都道府県のすべての労働者とその使用者に適用される
(2) 産業別最低賃金 各都道府県の特定の産業の労働者とその使用者に適用される

両方の最低賃金が同時に適用される場合には、高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。


最低賃金の対象となる賃金等

最低賃金の対象となる賃金(最低賃金法4条3項)

(1)1ヶ月を超えない期間毎に支払われる賃金以外の賃金で労働省令で定めるもの

結婚手当、賞与、1ヶ月を超えて算定される精勤手当・勤続手当・奨励加給・能率手当等が除外されます。

(2)通常の労働時間または労働日以外の賃金で労働省令が定めるもの

時間外・休日・深夜の割増賃金が除外されます。

(3)当該最低賃金において参入しないことを定める賃金

精皆勤手当・通勤手当・家族手当が除外されます。

賃金 定期給与 所定内給与 最低賃金の対象となる賃金
基本給
諸手当
(精皆勤手当、通勤手当、家族手当は対象外)
所定外給与 時間外勤務手当
休日出勤手当
深夜勤務手当
臨時の給与(結婚手当等)
賞与

現物給与等の評価(最低賃金法5条

現物給与としての食事の供与等がなされているときは、最低賃金額を下回っているかどうかは、食事代等を含めて判断されることになります。

食事の供与が現物給付としての賃金かについて、解釈例規では、食事の供与に賃金の減額を伴わないこと、就業規則や協約等で明確な労働条件の一つになっていないこと、食事の供与による利益が社会通念上僅少なものと認められること、の三要件を満たすことを要するとされています。(昭和30.10.10 基発644号)

こうした現物給付については、実際の費用を超えない「適正な評価」が必要であり、適正な評価の結果、支払った賃金が最低賃金額に満たない場合には、最低賃金法違反となります。


給与形態別の最低賃金

最低賃金の時間額は時間給制の労働者に、最低賃金の日額は時間給制以外の労働者にそれぞれ適用されます。

実際の賃金額が最低賃金以上となっているかどうかは、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を次の方法で比較します。

(1) 時間給の場合 時間給≧最低賃金の時間額
(2) 日給の場合 日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金の時間額
(3) 週給・月給等の場合 賃金額を時間当たりの金額に換算し、最低賃金額と比較

月給制と最低賃金

月給制の場合、月給額を1時間当たり金額に換算して最低賃金額と比較します。

月給額×12ヶ月÷年間総所定労働時間≧最低賃金額


歩合制と最低賃金

出来高制などの請負制によって定められた賃金(請負給)については、その賃金算定期間(賃金締切期間)について支払われる請負給の総額をその期間の総労働時間数で除した金額で比較します。


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