改正労働基準法解説レポート

令和5年4月1日から、月60時間超の割増賃金率の引き上げが中小企業にも適用となります。
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労働時間の考え方

東京都の実労働時間

労働者の区分 H23 H24 H25 H26 H27 H28
一般労働者 1,955 1,996 1,978 1,972 1,967 1,955
パートタイマー 1,065 1,068 1,044 1,028 1,019 1,016

始業終業時刻主義と実労働時間主義

始業終業時刻主義

時間外の残業時間の取り扱いにあたって、労働契約上の形式的な労働時間規定をベースとして取り扱う方法のことです。

実労働時間が何時間であろうと、始業時刻より前の労働を「早出残業」として時間外労働扱いし、終業時刻より後の労働を「残業時間」として取り扱います。

実労働時間主義

時間外労働の取り扱いの基準を実際の労働時間に置く考え方です。

始業時刻以前の労働でも、早退した場合は時間外労働として扱わないという考え方です。

労基法は、実労働時間主義の取り扱いとなっています。

すなわち、形式的な労働時間ではなく、実際に何時間労働したかを判断の基本に据えようということになります。

この考え方をベースとすると、遅刻をしても残業すれば労働時間としてはつじつまを合わせる、ということになります。


法律上の労働時間と実務上の労働時間は違う

労基法上の労働時間規制=実労働時間主義

労基法の労働時間の規制は、「実労働時間」(=現実に使用者の直接的指揮命令下で労働した実際の時間)を対象としています。

したがって、労働者の遅刻、早退、職場離脱、私的外出、組合活動の時間など、現実に使用者の支配下から離脱し、服務せず就労しなかった時間がある場合には、これらを除いて通算し、1日8時間以内かつ1週40時間以内であれば適法であるとされています。

言い換えれば、労基法は、契約外の労働をさせた(1日7時間のところを8時間労働させた)という、義務なき労働をさせることを罰し禁止しているのではなく、「実労働時間が1週40時間、1日8時間を36協定等の法定の許容事由がないのに超えて労働させること」を罰し、禁止しているのです。

実務上の労働時間管理=始業・終業時刻主義

一方、各企業においては、必ずしも実労働時間主義によらず、時間外労働を始業・終業時刻を基準として算出する始業・終業時刻主義(形式主義)によることを就業規則に定めたり、慣行として実施しているケースも少なくありません。

この方法は、当日の実労働時間の長短にかかわらず始業時刻以前に労働した場合には、たとえその労働者が午後から早退し、結果として5時間位の労働しかしなかったとしても「早出残業」とし、また、終業時刻後に労働した場合に、たとえ午前中私用で出勤せず、午後から就労し、結果として6時間の労働しか行わなかった場合でも、終業時刻の午後5時を超えて労働している時間分を「残業」として算定し、いずれも「残業手当」を支払うという取り扱いをいいます。

このような算定方式による取り扱いは、法律上のものではなく、法律を上回る企業独自の定めだと解釈されています。


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