改正労働基準法解説レポート

令和5年4月1日から、月60時間超の割増賃金率の引き上げが中小企業にも適用となります。
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特別条項付き協定

特別条項付き協定とは

一定期間についての延長期間は限度時間以内としなければなりませんが、現実的にはこの限度時間を超えて臨時的に時間外労働を行わざるを得ない特別な事情が発生することも考えられます。

このような場合、次の事項をあらかじめ明確に協定しておけば、限度時間を超える一定の時間まで延長することを定めておくことができます。

これを特別条項付き協定(通称エスケープ協定)と呼んでいます。

ア 原則の「限度時間」

イ 「特別の事情」の内容

ウ 特別の事情が発生したときの労使間協議などの「手続」

エ 特別な事情に対処するための「特別延長時間」

特別の事情とは

当然のことながら、特別の事情とは、労使当事者が「事業または業務の態様等に即して自主的に協議し、可能な限り具体的に定める必要がある」(平成11.1.29 基発45号)とされています。

たとえば「機械の故障、特別な注文、取引先倒産、納期の切迫」など、具体的な条件設定が必要です。

また同時に、「時間外労働をさせる必要のある業務の種類を区分し、できるだけ当該協定の対象労働者の範囲を限定することが望ましい」とも要請されています。

手続とは

手続は36協定の中に定められますが、方法は「協議」「通知」「通告」「同意」「了解」「承認」「届出」等、36協定の趣旨に反しなければ差し支えありません。

手続が取られたことは、いちいち届け出る必要はないのですが、その事実(時期・内容・相手方)を明らかにする書面等は残しておきます。

なお、手続は事前に行われるのが原則ですが、「臨時的・突発的でその余裕がないときは、事後手続とすることもある」と、36協定に規定されていれば、延長時間の範囲内なら差し支えないとされます。

延長時間とは

一定期間内に延長できる時間数は、必ず決めておかなければなりません。

「1ヶ月について45時間とする。ただし、受注上の突発的事由により、これを超えることがある」といった規定は、不適法で受理されません。

ただし、この特別延長時間については、「限度とする時間は示されておらず、労使当事者の自主的協議に委ねられている」とされていて、したがって、月間60時間であろうと70時間であろうと、また3ヶ月200時間、1年500時間といったものでも、制限がないことになります。

特定の期間とは

週を単位とする場合・・・1週、2週、又は4週

月を単位とする場合・・・3ヶ月以内の期間

1年間を単位とすることもできると解されています。

したがって、延長時間の目安とされた「360時間」を超える特別延長時間も設定可能となります。

変形労働時間にも適用される

特別条項は、1年単位の変形労働時間にも適用可能です。


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