懲戒解雇とは何か
解雇予告手当も退職金も支給されない
懲戒解雇は、企業秩序違反行為(非行)に対する制裁罰としての解雇をいいます。
通常、解雇予告も予告手当の支払いもせずに即時になされ、また退職金の全部または一部が支給されません。
さらに懲戒解雇の場合は、雇用保険の求職者給付にあたり、原則3ヶ月間の支給制限があります。
懲戒解雇は懲戒処分としての性格と解雇の性格を合わせ持ち、両者に関する法規制を受けます。
一般的には、その対象となる服務規律違反は、「労働関係からの排除を正当化するほどの程度に達していること」が必要です。
また、懲戒は労働者に不利益をもたらす処分を、使用者が一方的に行うものですから、自ずから内在的な限界があります。
それは業務の正常な運営を維持するための必要最小限の範囲内のものでなければなりません。
使用者の恣意に基づくものであってはならないことも当然です。
懲戒処分に合理性があっても自動的に解雇予告や予告手当の支払いが不要になるわけではありません。
解雇予告手当等を不支給とするには、使用者は、労働基準監督署の除外認定を受ける必要があります。
退職金不支給も就業規則等にその旨の規定が存在する必要があります。
懲戒解雇の手順
-
解雇しなければならない事由を正確に把握する
-
その解雇事由に対して、就業規則の解雇規定を適用することができるかどうかを検討する(就業規則違反の解雇は無効)
-
解雇が、労働基準法第3条の差別的取扱いの禁止に違反していないかどうか検討する
-
過去の裁判における判例などを検討して、解雇の正当性を確認する
全国調理師養成施設協会事件 東京地裁 平成15.10.9
理事兼事務局長としての雇用契約の解除は、懲戒解雇に相当するところ、原告に弁明の機会を与えずになされた点で重大な手続きの違反があるから、懲戒解雇は無効である。
懲戒解雇は限定列挙
懲戒権は契約に基づく制裁であり、就業規則に明示される懲戒条項は限定列挙とになります。
包括条項があれば無制限というわけではありません。
裁判所の判断も、「懲戒解雇事由につき法律あるいは就業規則・労働協約等による具体的定めが存在しなければ、使用者はたとえ労働者に企業秩序違反の行為があったとしても、その労働者を懲戒解雇することはできない。」(洋書センター事件 東京高裁 昭和61.5.29)としており、その明示は非常に重要です。
しかしながら、あらゆるケースを記載することは容易ではないため、通常、就業規則には「その他前各号に準ずる行為があったとき」というような包括的な懲戒事由が定められます。
しかし、この包括条項があっても、厳密な判断が求められることになります。
杵島炭坑事件 佐賀地裁 昭和40.12.7
懲戒事由の列挙は制限列挙と考えるべきであり、したがって・・・概括条項もこれを厳格に制限的に解釈しなければならない。