解雇が禁止される場合とは
解雇の禁止と解雇制限
以下の場合には、解雇が禁止または制限されます。
(1) | 労働者が業務上の負傷をし、または疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後の30日間(労働基準法第19条) (だだし、使用者が労働基準法第81条の規定によって打切補償を支払った場合=現実には打切補償は困難、 業務上の事由による負傷等により休業している従業員が療養開始後3年経過時に傷病補償年金を受けている場合、天災事変など、やむを得ない事由により事業の継続が不可能となり、その事由について、所轄労働基準監督署長の認定を受けた場合はこの限りではない(※)) なお、この期間内に解雇予告を行うことは禁止されていない。 また、業務上の療養期間には、治癒(症状固定)後の通院期間は含まれない。 |
(2) | 労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇 (労働基準法第3条) |
(3) | 行政官庁または労働基準監督官に申告をしたことを理由とする解雇 (労働基準法第104条第2項) |
(4) | 年次有給休暇を取得したことを理由とする解雇 (労働基準法附則第136条) |
(5) | 労働者が女性であることを理由とする解雇。 男女の均等な機会および待遇の確保に係る紛争に関する援助・調停を都道府県労働局長に求めたことを理由とする解雇 (均等法第6条) |
(6) | 女性労働者が婚姻し、妊娠し、出産し、産前産後の休業をしたことを理由とする解雇 (均等法第9条) なお、この期間内に解雇予告を行うことは禁止されていない。 |
(7) | 産前産後の女性が労働基準法第65条の規定によって休業する期間及びその後の30日間 (労働基準法第19条(解雇制限)) |
(8) | 育児休業の申出をし、または育児休業をしたことを理由とする解雇 (育児・介護休業法第10条) |
(9) | 介護休業の申出をし、または介護休業をしたことを理由とする解雇 (育児・介護休業法第16条) |
(10) | 不当労働行為となる解雇 (労働組合法第7条) 労働者が労働組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと、若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもってする解雇及び労働委員会への申立等を理由とする解雇は「不当労働行為」として禁止されています。 |
(11) | 従業員が労働基準監督機関に申告したことを理由とする解雇 (労働基準法第104条、労働安全衛生法第97条) |
(12) | 女性労働者が、男女の均等な機会・待遇に関する事業主の措置で募集・採用、配置・昇進・教育訓練、一定の福利厚生、定年・退職・解雇に係る紛争について都道府県労働局長に援助(注:募集・採用は調停の対象とならない)を求めたことを理由とする解雇 (均等法第17条2項、第18条2項) |
(13) | 解雇予告または予告手当の支払いを欠く解雇 (労働基準法第20条) |
(14) | 就業規則・労働協約に反する解雇は、一般的に無効です。 |
※「やむを得ない事由」とは
事業場が火災や震災などにより、消滅、倒壊、類焼などの不可抗力によるものでかつ突発的な事由であることを指します。よって、事業主の故意又は過失による場合は含まれません。
やむを得ない事由となる例
- 事業場が火災により焼失
- 震災に伴う工場、事業場の倒壊、類焼等により事業の継続が不可能
やむを得ない事由とならない例
- 事業主が経済法令違反のため強制収容され、又は購入した諸機械、資材等を没収された場合
- 税金の滞納処分を受け事業廃止に至った場合
- 事業経営上の見通しの齟齬の如き事業主の危険負担に属すべき事由に起因して資材入手難、金融難に陥った場合
- 従来の取引事業場が休業状態となり、発注品がなく、そのために事業が金融難になった場合
※「事業の継続が不可能になる」とは
「事業の継続が不可能になる」になる例
- 事業の全部又は大部分の継続が不可能になった場合
「事業の継続が不可能になる」にならない例
- 当該事業場の中心となる主要な建物、設備、機械が焼失を免れ、多少の労働者を解雇すれば従来どおり操業し得る場合
- 従来の事業は廃止するが、多少の労働者を解雇すればそのまま別個の事業に転換しうる場合の如く事業がなおその主たる部分を保持して継続しうる場合
- 一時的に操業中止のやむなきに至ったが、事業の現況、資材、資金等の見通し等から全労働者を解雇する必要に迫られず、近く再開復旧の見込みが明らかであるような場合
(昭和63.3.14 基発150号)
業務上災害の解雇の禁止と通勤災害の解雇との違い
この禁止は絶対的なものなので、たとえ労働事業の継続が不可能になるものの重大な非行を理由とする懲戒解雇であっても禁止されています。(三栄化工事件 横浜地裁川崎支部 昭和51.6.19 ほか)
ただし、通勤中のケガなどいわゆる「通勤災害」は、「業務上の負傷」には該当しないとされています。
しかし、通勤災害による解雇の場合も、合理的な理由と、解雇予告等の手続きは当然必要になります。
他の企業が疾病の原因を作った場合
解雇制限にはかからないと解されています。