解雇か退職の判断

サイトマップ
大分類

解雇か退職か


解雇と退職の判断

退職か解雇の判断は、簡単にいかない場合が多々あります。

ちなみに、解雇の妥当・不当の問題については、労働基準監督署では扱いません。

「辞めろ」と言われたが、こんな上司の下では働けないと「自分で決めた」ということであれば、本人の意思で決めたことになりますから、退職ということになります。

しかし、口論が酒の席で行われたり、やりとりの行われた状況如何によっては、一時の感情にかられた意思表示であって真意でないと判断でき無効とされる(民法95条)場合もあるかと思われますし、また詐欺や脅迫による意思表示として取り消しうる(民法96条)場合に該当することも考えられます。

一方、強く命令口調で叱責されたときなど、「辞めろ」と言うのは会社の退職勧告であるものの、実際は労働者自らが辞めるように仕向けたということになれば、解雇になると考えられます。

例えば次のような事例は、どう考えればいいのでしょう。

(事例)

やる気のない部下に対し、「お前にはこの仕事は向いていないのではないか。自分にあった仕事にチャレンジした方がいいのではないか」と言ったところ、翌日から出勤してきません。

ウワサでは、不当に解雇されたとして、訴訟を準備しているとのことです。

さて、この場合はどのように判断すべきでしょうか?

上記事例についていえば、にわかに判断は出来ませんが、次の事項について検証することになります。

  1. 上司の発言は、解雇通告と見なされるか?
  2. 上司の発言は、合意解約の申込みと見なされるか?
  3. 部下の出社拒否は、合意解約の申し出に対する承認に該当するか?
  4. 部下の出社拒否は、単なる無断欠勤と見なされるか?

解雇と退職の分類

労働契約終了事由から、解雇と退職を分類すると次のようになります。


退職となる場合

(1) 任意退職 労働契約の合意解約
(2) 無断退職 労働者からする労働契約の一方的な解除
(3) 契約期間満了 契約期限の到来
(4) 休職期間満了自動退職 約定契約終了条件の成就と期限の到来
(5) 行方不明期間経過による自動退職 同上
(6) 定年退職 終期の到来
(7) 本人の死亡 法定終了

解雇となる場合

(1) 普通解雇 やむを得ない事由の発生による使用者側からする労働契約の解除
(2) 懲戒解雇 懲戒処分としての労働契約の一方的解除
(3) 整理解雇 やむを得ない人員整理の必要性に基づく労働契約の解除
(4) 雇用契約を更新しない場合 事実上の期間の定めのない契約の準用とその解除
(5) 本採用拒否 試用期間中の留保解約権の行使
(6) 採用内定取消 就労前のやむを得ない事由の発生による労働契約の解除
(7) 休職期間満了による解雇 約定によるやむを得ない事由の発生による解除
(8) 定年解雇 定年の到来を原因とする労働契約の解除
※平成10年4月1日以降は、60歳未満の定年は無効となった(高齢者雇用安定法第4条)

コモンエンタープライズ事件 東京地裁 平成15.9.16

労働者から会社代表者に退職を申し出ていると解されるので、解雇予告手当の請求には理由がない。


山三建設事件 東京地裁 平成15.5.12

月末をもって退職したいとした原告を、特段の理由を説明することなく即日解雇したことは違法であるが、金銭の支払いにより慰謝すべき損害の発生を認めるまでの特段の事情は認められないから、損害賠償請求は理由がない。

→ 会社を守るための賠償責任保険についてはこちら

ユニフレックス事件 東京高裁 平成11.8.17

原審は合意解約を認めなかったが、高裁は、退職後の引き継ぎ等が円満になされていること等から、合意解約の成立を認めている。


「辞めてほしい」は解雇通告ではない

たとえば「辞めてくれないか」といわれて辞めた場合、労働者の意思でやめれば退職勧奨による合意解約になります。

これに対し、実際に使用者からの強い働きかけがあり辞めるように仕向けられたというときには退職強要による解雇となります。

このように同じ言葉が使われても、状況如何では解雇となったり退職勧奨による合意解約になったりします。

解雇と退職勧奨による合意解約では、その法律関係はまったく異なり、以後の対応が違ってくるのです。

会社が相談者に解雇を通告するには、それが法的に正しいかどうかはともかく、それなりの理由があるはずです。

その本当のところが不明確なままでは、今後の会社との交渉もうまく続けられませんし、第三者に相談するにあたっても、その理由が重要なポイントとなります。


合意解約と辞職

労使双方の「合意」によって雇用関係を解消するというとは、まずは労働者からの申込みがあって、それに対して使用者が承諾するという手順になります。

使用者が承諾しなければ、解約の効果は発生しないことになります。

会社の承諾が決定するまでは撤回が許されます(大隅鉄工所事件 最高裁 昭和62.9.18、関西事務センター事件 大阪地裁 平成11.6.25)。

これに対し、絶対辞めたいという意思のもと、労働者がきっぱりと「辞めます!」と伝えて、辞表をたたきつけたとすれば、これは退職の意思表示(一方的通告)と思われます。

したがって、この場合の辞職の意思は確定したものと見なされますので、後日撤回しようとしてもできません(東京ゼネラル事件 東京地裁 平成11.4.19)。

また、辞表をポンと提出し、出社しない場合は、無断欠勤と見なされます。懲戒処分の対象ともなります。


トラブルを発生させない

解雇理由には納得できない。でも、こんな会社にはこれ以上居たくない」と訴える労働者は少なくありません。

しかし、前述のように、解雇か自己退職かで、その後の扱いは大きく違います。

労働者にとっては、雇用保険の給付等に差が出る場合も少なくありません。

さらに、解雇を解雇予告手当の支払いだけの問題として扱うと、解雇そのものの妥当・不当を見失うおそれがありますし、トラブルの発生につながる可能性も出てきます。

ですから、解雇の詳細な理由とその裏付けとなる事実を確認したうえで、感情に走ることなく慎重に対応されることをお勧めします。


解雇か雇止めか

最近は、雇用期間の定めがある有期雇用(期間雇用)が増えています。

期間の定めのない雇用関係における解雇と、雇用期間満了による雇止めとでは、雇用継続に対し求められるものが大きく異なります。

雇用契約書をきちんと締結しておくことが非常に重要となります。


このページのトップへ