判例にみる協調性と解雇理由

解雇有効の判例

具体的には、以下のようなケースでは協調性に欠くことによって、解雇も有効とされています。

CSFBセキュリティーズ・ジャパン・リミテッド事件 東京地裁 平成17.5.26

外資系証券会社にヴァイスプレジデントの肩書きで配属された従業員(月給総額114万余円)が、同僚との人間関係がうまくいかないため、インターバンク部門に配転された。

原告はその後も、同僚が出張先の海外で性的に問題を起こしたなどとする誹謗中傷文書を、事実の裏付けもないまま、本社に送付したりしており、協調性が問題とされた。

同時期、会社は経営悪化から従業員の退職勧奨を波状的に行っており、今度は、インターバンク部門が人員削減の対象となり、原告が解雇対象となった。会社は、社宅明渡しも同時に請求した。

このことについて、ユニオン等を通じて会社と交渉していた原告は、組合嫌悪による不当解雇だという訴えを起こした。

裁判所は、「事業の継続が困難」だという解雇理由を是認し、原告の訴えを却下。また、社宅経費について支払うよう命じた。

(1)経営状態から人件費削減の必要性があり、同僚と比べ高収入である原告が対象とされたのも、理解できる、(2)人選も配置部門・給与水準・勤務実績から原告が選ばれたのも不合理とはいえない、(3)新規採用も手控え、引き続き大規模な人員削減を予定している中で、回避解雇努力も難しい、(4)人間関係上の問題について原告が主張するような会社側のハラスメントだとは認められない、(5)組合とも団体交渉に応じ、優遇案も提示しているところから、組合加入を嫌悪して解雇に及んだとはいえないとして、解雇の有効性を認めた。

社宅については、家賃(月21万6千円)の支払い義務を、原告が負うとしたが、会社側への仮執行宣言については却下された。

日本郵政公社(大曲郵便局)事件 最高裁 平成16.3.25

郵便局職員(公務員)に対する「適格性」欠如を理由とする分限免職処分の適法性が争点となった。

職員は、約7年間の間に、超過勤務命令拒否、研修拒否、胸章不着用、制服不着用、管理者に対する暴言等を理由に多数回にわたり指導、訓告、戒告等を受けてきたが、最終的に「適格性を欠く」とされ、分限免職処分にされた。

第一審(秋田地裁 平成13.2.23)、第二審(仙台高裁秋田支部 平成14.3.27)とも、裁量権の濫用にあたり、違法としたが、最高裁は適法と判断し、免職処分取り消し請求を棄却した。

グリーンポップ事件 東京地裁 平成15.7.25

パチンコ店の景品買取所の窓口で景品販売に来た顧客に対し、本来渡すべき代金より少ない金額を交付したり、金員を要求したりしたことを繰り返した従業員に対する解雇が有効とされた。

毅峰会(吉田病院)事件 大阪地裁 平成15.7.18

夜間事務職員が上司の指示に反して、看護師詰め所に赴いたり、カルテ等に触る等の行為をし、侮辱的な発言をノートに記載したこと等は解雇事由に当たる。

ハイソル事件 東京地裁 平成15.4.21

上司の指示に従わず、社員としての協調性を欠くうえ、日本語の会話能力や理解力が十分とはいえない社員の解雇について、著しく不合理とする事情は見いだせず、有効であるとされた。

アジア・ネットコム・ジャパン事件 東京地裁 平成15.3.31

シニアマネージャーとしての能力面、日常業務における能力面、同僚等とのコミュニケーション面で要求される能力を欠いていたとして、解雇有効。

カジマ・リノベイト事件 東京高裁 平成14.9.30

譴責処分4回の後、勤務成績不良を理由とした解雇事案。

第一審の東京地裁(平成13.12.25)は解雇無効と判断したが、第二審は解雇を認めた。

譴責等の理由

  1. 会社の導入したパソコンソフトを利用せず、自分の慣れたソフトを使用した
  2. 仕事のミスについて「上司がしっかり引継ぎしないからよ」と侮辱
  3. 上司の業務処理説明について「ネチネチと話をするのは止めて下さい」と反論
  4. 派遣社員を「無能力」と決めつけて指導せず
  5. 時間外労働をしないようにとの指示に従わず、時間外勤務
  6. 集計表の編綴のやり方を指示通りしない
  7. 職場内で独り言を声高にいう
  8. 隣席の従業員に対し「居眠りばっかりして、そんな時間があるなら自分でコピーしなさいよ」と言って傷つける
  9. 現場や下請からの電話による問い合わせに対し、独断で処理、事後報告もしない
  10. 取引業者からの労務費請求に対し、請求書提出が遅れたといって無断で支払を翌月に延ばす
  11. インターネットに、社内の業務ミスや批判記事を掲載

こうした行為に対し、4回の譴責を通告されたが、始末書を提出せず、さらに処分通知書をシュレッダーに投入した。 裁判所は、これらの事実を一つ一つ取り上げるならば比較的些細なものが多いように思われるが、企業全体として統一的・継続的な事務処理が要求される事柄に対し、自己のやり方を変えないという態度が顕著であること、弁明する期間が与えられていたこと、就業規則に「勤務成績又は能率が著しく不良で、就業に適しないと認めるとき」との解雇条項があることなどから、解雇権の濫用にはあたらないとした。

東京海上火災保険事件 東京地裁 平成12.7.28

通勤途上の負傷や私傷病などを理由に4回の長期欠勤(4ヶ月、5ヶ月、1年、6ヶ月)をはじめ、約5年5ヶ月のうちの約2年4ヶ月欠勤していた者について、労務能率が甚だしく低く、会社の業務に支障を与えたとして、解雇を有効とした。

ケイ・エス・ピー事件 東京地裁 平成11.9.29

レストランのマネージャーを勤務態度不良で解雇した。

重要業務当日に2度にわたり欠勤したこと、明らかに居丈高な発言により顧客の予約を破棄させるに至ったこと、許可なく人気料理を止め高価なオーブンを廃棄処分にしたことなどから、解雇は有効とされた。

株式会社ミック事件 福岡地裁 平成10.4.22

クレーンのオペレーターが、工事現場で暴言を吐き戒告処分を受けたが、その後も客先の現場監督の指示を守らず、チームワークを乱したことで、解雇は有効とされた。

日本火災海上保険事件 東京地裁 平成9.10.27

損保会社社員が、自己中心的で職務怠慢であり、上司の注意や業務命令に反発するばかりで従わず、 不衛生等、社員として自覚に欠け、代理店や顧客からも批判やひんしゅくを買っていたほか、職場では、他人に極端に近づいたり離れたりして人間関係について不自然な行動をとるため、女性社員から敬遠され、職場の雰囲気を著しく乱され、業務の運営に大きな支障をきたしており、改善の可能性のないことから、雇用契約を維持することは限界に達しているとして解雇がなされたケース。

裁判所は、こられの行為について事実認定したうえで、このような勤務態度および言動は、職場の人間関係及び秩序を著しく乱し、業務に支障を来すものと認め、本人がまったく反省していないことも考慮して、解雇を有効としている。

近藤化学工業事件 大阪地裁 平成6.9.6

作業上の注意をした上司に対して、「これ以上文句をいうなら殺すぞ」と暴言を吐くなど繰り返し反抗的な態度をとっていたケースで、解雇が有効とされた。

重光事件 名古屋地裁 平成9.7.30

取締役の解任に反対し、会社従業員に対し署名を求める等した幹部職員を解雇した事案。

労働者は自己の労働条件を守るため、あるいは社会的公正の見地から、経営者の経営意欲、経営能力、経営方針に信頼をおけないときには、これらについて批判し、その改善を求め、あるいは経営担当者には誰がふさわしいかなどの点について批判し、その改善を求め、あるいは経営担当者には誰がふさわしいかなどの点について意見を表明することも許されると解するのが相当であるが、その批判や意見表明は、企業秩序、経営秩序に反する社会的相当性を欠く行為であってはならない。

よって、解雇は有効。

東京合同自動車事件 東京地裁 平成9.2.7

タクシー会社の乗務員について、精神性疾患の診断を受け、約3ヶ月の入院治療により軽快して勤務を再開したが、その後会社を中傷する文書を送付したり、上司に対して罵詈雑言を吐いたり、自過失による事故への注意に対して、上司に暴言を吐いたりしたため、就業規則上の規定「精神もしくは身体に障害があるため業務に堪えないと会社が認めたとき」に該当するとしてなした解雇が、有効とされた。

情報システム監査事件 東京地裁 平成6.5.17

業務命令に対し、何かと理由にならない理由をあげてこれを拒否し、会社の不当性をあげつらう態度に出るなどしたケースで、解雇有効と判断された。

山本香料事件 大阪地裁 平成5.3.8

従業員や上司に対し感情的になり過激な言葉を発するということで何度も注意されたが、それに従わない。

裁判所は、一つ一つにしてみれば大したことはないが、その積み重ねがあり、程度を超えれば職場の秩序を乱したといえるので、解雇もやむを得ないと判断した。

相模野病院事件 横浜地裁 平成3.3.12

病院勤務の助産婦が、独善的・他罰的であり他の職員との円滑な人間関係を回復しがたいほど損ない、看護職員として不可欠な共同作業を不可能にしてしまった。

謙虚に批判を受け入れるどころか他の職員や病院に対する批判に終始し、折り合おうとしなかった――などを理由として行われた解雇が有効とされた。

日産自動車事件 東京地裁 昭和61.11.28

2ヶ月半の間に回数にして60回、累計時間にして110時間30分に及ぶ遅刻を繰り返し、上司の指示命令を拒否した事案。解雇有効とされた。

三矢タクシー事件 浦和地裁 昭和63.3.7

同僚運転手の運転するタクシーに客として乗り、「返事をしないのか、この野郎、ぶっ殺してやる」などと大声を上げ、さらに、同僚運転手が運転中にもかかわらず、ネクタイの結び目あたりとワイシャツの襟首をつかみ、首を絞め、さらに後頭部を5~6回こづいた。

懲戒解雇は有効だとされた。

日本テレビ事件 東京地裁 昭和62.7.31

欠勤・早退・遅刻・離席を繰り返し、1年間ほとんど勤務せず、上司から命ぜられた業務をほとんど履行せず、上司に反抗し悪態をつくし、上司が業務命令書を交付したところ、これを面前で八つ裂きにして上司の頭上に振りかけたという事案。解雇有効とされた。

狭山交通事件 浦和地裁川越支部 昭和62.3.25

タクシー運転手の接客態度不良が重なり、再三注意していたにもかかわらず、近距離の乗客に対し、「そこまで歩いていけねえのか」と怒鳴りつけたという事案。

接客に携わる者としては通常許されない暴言であり、懲戒解雇を有効とした。

守口市門真市消防組合事件 大阪地裁 昭和62.3.16

消防署職員について、精神性疾患による奇行が見られたため、入院治療を受け退院したが、医師の診断書等によれば、消防職務の遂行に支障ありとあるため、これに堪えないものと判断された。

さらに、病気療養に専念せず、他人に迷惑を掛ける行状を繰り返し、今後もそのおそれが強いと危惧されるといった判断から、分限免職処分となったが、これが有効とされた。

信用交換所東京本社事件 東京地裁 昭和60.9.25

上司の質問に対し回答を拒否したり、レポートを上司に無断で持ち出したり、資料の返還命令について社長名の命令書を出せと要求するなど反抗的な態度をとったため、解雇有効とされた。

東京芝浦電気事件 東京地裁 昭和58.12.26

大学院工学研究科卒の労働者が自己に与えられた業務の遂行結果の不具合についての原因が、電算機プログラムの欠陥であるとして再検討の指示に応じず、仕事上の話し合いにおいて、上司を大声でどなりつけ、あるいはわめき散らす態度をとるため、業務遂行上の話し合いはまったく不可能であり、また、会社の関係先・客先等に対しても非常識な言動に及ぶなど、職場、上司、同僚にも迷惑を掛けており、業務遂行に大きな障害となっていることを理由に、「能力若しくは勤務成績が著しく劣り、又は職務に怠慢なとき」「会社の業務運営を妨げ又は著しく協力しないとき」に該当するとして、解雇。解雇は有効とされた。

雅叙園観光事件 東京地裁 昭和57.7.28

ミスが多いことに加え、協調性がなく同僚を無視するような態度をとり続けたり、上司の注意や指示を素直に聞かなかったなど、トラブルが絶えない。解雇は有効とされた。

マール社事件 東京地裁 昭和57.3.16

異常な言動が目立つようになった労働者について、会社がその母親と相談し入院させた。医師は、精神性疾患によりその後も入院治療が必要であるとの判断をしたが、その説得に応じず退院し、会社への連絡も行わなかったため、「6ヶ月間の休職期間を経て復職を命ぜられない時は解雇する」との会社規定が適用された。この解雇は有効とされた。

西武病院事件 東京地裁 昭和50.4.24

病院に勤務していた給食婦について、奇怪な言動・態度がみられるようになり、勤務を継続させることが困難となったため、継母に相談したところ、精神病歴があることを知らされた。継母に本人を預かって療養させて欲しいと申し入れたが断られ、さらに叔母にも同様の申し出を断られたため、病院自ら精神衛生法(現・精神保険法)の規定に従い、医師の診断を求めたところ、精神性疾患の疑いがあるとして、入院が必要と診断された。

本人に入院の必要性を説明したが、同意が得られなかったので、注射により入眠させたうえで入院させ、3ヶ月後の退院以降も依然として思考障害、感情鈍麻、妄想気分および非協調性の傾向が残存したため、解雇した。この解雇は有効とされた。

松江木材事件 松江地裁 昭和48.3.23

業務の習得に熱意がなく、上司の指示に従わず、協調性に乏しいとされたケースで、解雇が有効とされた。

マーガレット美容院事件 東京地裁 昭和43.7.18

美容師の見習生の失敗に邪険に対応したこと自体はささいなことにすぎないが、小規模な企業では仕事および私生活での融和なくしては円滑な経営維持が難しいとした。

東京西部建設労働組合事件 東京地裁 昭和41.7.9

比較的少人数の労働組合書記局における書記局員の解雇に関し、一応勤務時間は守っていたが、積極的に仕事をするようなことはないばかりか、同僚の悪口をいい、組合大会で決定した納税申告に関する取り決めにも従わないのみならず、納税等に関する組合事務が繁忙で全員協力してこれを消化すべき時期においても、「他人の税金を安くするために残業なんかできるか」といって帰り、また機関誌の発送等全員でやるべき仕事にも協力しなかったこと、書記局の同僚もあまり原告に近づかなかったことが認められた。

このことから、右認定のような原告の言動は、・・・比較的小人数の被告組合書記局においては業務遂行上重大な障害となるものというべきであるから、被告組合が原告の言動を理由にこれを解雇したのは相当であって、原告の解雇権濫用の主張は理由がない、と判示された。

日本青年会議所事件 東京地裁 昭和40.4.28

少人数職場で、繁忙期にもかかわらず仕事を積極的に手伝おうとしないばかりか、同僚を声高になじったり、出勤簿で打つ、待ち伏せするなどの言動があった。

チームワークを要求される小人数のサービス機関の一員として、執務能力の点で著しく欠けるところがあり、被告理事会において「将来見込みがない」と判断したことは必ずしもこれを早計と断ずることはできない、とされた。


解雇無効の判例

昭和大学事件 東京地裁 平成15.9.30

被告大学は、前訴判決で、原告の助手としての地位確認後も本件解雇に至るまで一貫して原告からの復職の申し入れを拒否してきたことが認められ、原告が助手として就労しなかったのもやむを得ないというべきであり、「正当な理由なく長期無断欠勤したとき」には該当せず、解雇は無効である。

ホテルプラザ勝川事件 名古屋地裁 平成15.9.22

営業部長と宿泊部長の整理解雇の理由について、会社は当初、「一部の人間で仲良しグループを作っているため、職場全体を管理できていない」などとしたものの、その後、これらの解雇理由を含む被解雇者の選択基準の設定とその具体的適用に関して「本件解雇の時点において策定されていたものではない」として主張をほぼ全面的に変えた。

債務者の主張の一貫性の欠如も考慮すれば、被解雇者の選択の妥当性は認められず、本件解雇は無効である。

カテリーナビルディング事件 東京地裁 平成15.7.7

親会社の経営姿勢を厳しく非難し、常務からいさめられても同様の行為を継続したため解雇。

裁判所は、当人の行為を企業秩序の観点から問題があり、その方法・態様が相当とはいえないとしながらも、その内容が、主に労基法の遵守や労働条件の改善を目的としたものと認められるので、解雇権の濫用として無効と判断した。

エース損害保険事件 東京地裁 平成.13.8.10

希望退職者募集に応じなかった従業員を、地方事務所に配転のうえ、自主退職を勧告し、さらに応じない者を、就業規則の「労働能力が著しく低く事務能率上支障がある」に該当するとして、解雇した。

裁判所は、本件解雇を解雇権濫用に当たり無効と判断した。

ワタシン事件 東京地裁 平成11.3.19

ビデオソフト、書籍等の販売店長が、勤務時間中の勝馬投票券の購入、タイムカードの不正打刻、独断による多数の競馬ビデオの購入など、勤務態度が著しく不良であることを理由に解雇されたケース。

裁判所は、それぞれの行為についての会社の主張が具体的でなかったため、会社の主張は抽象的であり、解雇はさしたる理由もなくされたものであって、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当として是認することができないから、解雇権の濫用に当たり、無効であるとした。

丸彦製菓事件 仙台高裁 平成9.10.17

製菓工場に勤める社員が上司を呼び捨てにしたり、その他の不都合行為があったとして勤務態度不良を理由に解雇されたケース。

裁判所は、上司や同僚に対する言葉遣いが悪かったことについて、穏当を欠くような発言があったとしても、言葉遣いが職務内容と密接につながっている(例えば接客など)ものではないとして、他の理由に関する判断も含め、解雇を無効としている。

葉山国際カンツリー倶楽部事件 横浜地裁 平成9.6.27

上司批判などをしたパートキャディの雇い止め。

はっきり物をいう性格であったことから、協調性に問題があると映ったり、他との融和に欠けると受け取られたり、感情的な言動があると表される場合があるかもしれないが、業務が妨害されたとか、キャディとして不適格であると認められる事情がない限り、それのみでは解雇の事由にならない。

新日本通信事件 大阪地裁 平成9.3.24

名刺肩書の改善、帰省費用の支給、赴任手当の増額、給与の増額、時間外手当の支給要求、代休の取得要求等、上司等に対する自己の処遇改善要求を熱心に繰り返す者について、就業規則の「業務能力又は勤務成績が著しく不良のとき」との解雇事由に基づいてなされた解雇につき、「処遇改善の要求についても、その頻度はいささか常識の範囲を超えている感がないわけではい」としながらも、使用者による違法な配転命令が被解雇者の処遇改善要求を激化させたとも言えること、その要求の中には労働基準監督署長による是正勧告が発せられたものもあること、その要求によって会社の業務が阻害されたことを示す証拠はないことなどを考慮して、当該解雇は無効とされた。

聖仁会(横浜甦生病院)事件 横浜地裁 平成8.2.9

経営不振の病院の経営を引き継ぎ、職員全員を雇用したところ、労働者の1人が就労条件をめぐって就労を拒否して連続14日以上無届欠勤を続けたため解雇した事案。

裁判所は、「業務遂行に具体的な支障があった」という要素が充足されていないことを理由に、解雇は権利の濫用であり、無効であるとした。

三木市職員事件 神戸地裁 昭和62.10.29

市清掃センターの条件付き採用期間中の職員が、勤務時間中に「てんかん」の発作を起こしたことを理由に、職務遂行に支障があるとしてなされた分限免職処分について、本人の疾患は交通事故による受傷を原因とする外傷性てんかんであり、その程度は極めて軽度であり、特に危険な作業を避ける限り、発作が事故につながる可能性はほとんどなく、「身体の故障のため職務の遂行に支障がある」とはいえないとして、分限免職処分は処分理由を欠き、無効とされた。

セントラル病院事件 名古屋地裁 昭和56.8.12

協調性の欠如、経営者への批判的言動などを理由とする女性栄養士の解雇について、批判的言動は、解雇の不安を抱くなど特殊の対立状態のもとで行われたもので、協調性の欠如はそれほど悪質、顕著なものではなく、改善可能であったとして、解雇を無効とした。

神田運送事件 東京地裁 昭和50.9.11

1年間に欠勤を72日したことや職場での暴行など勤務状態不良を理由とする諭旨解雇については、会社が、これまでの勤務状態の不良について何らの制裁措置もとっていなかったことから、解雇が無効とされた。


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