契約期間と解雇理由について

期限の定めのある契約の場合

期限の定めのある契約の場合、使用者はその期間中労働者を原則として解雇することはできません。

使用者は「やむを得ない事由」(民法第628条)があるときに限り、30日前に予告をするか30日分以上の平均賃金を支払って解雇することができます(労働基準法第20条)。

また、その事由が使用者の過失によって生じたときは、使用者は労働者に対して損害賠償の責任を負います。(民法第628条後段)

この賠償額は、契約で定めた期間満了までの賃金相当額であると考えられます。

これに対して、「天災事変その他やむを得ない事由」または「労働者の責に帰すべき事由」に基づいた場合には、使用者は即時解雇することができます。(労働基準法20条1項但書)


期限の定めのない契約の場合

法令上の解雇禁止規定に抵触さえしなければ、労働者を自由に解雇できるわけではなく、また、解雇予告をしたり解雇予告手当を支払えば労働者を自由に解雇できるわけでもありません。

解雇は原則として就業規則に規定された解雇事由に限って認められ、それ以外の解雇は認められません。

従って、解雇を行うときは、その理由を明示するとともに、解雇に値する根拠を就業規則に基づいて明らかにすることが重要です。

もちろん就業規則がない場合も、解雇の理由がどんなものでもよいということではありません。


就業規則への記載

労使当事者間において、解雇についての事前の予測可能性を高めるため、就業規則に「退職に関する事項」として「解雇の事由」を記載することが必要です。

すでに作成している就業規則に、「退職に関する事項」として「解雇の事由」を記載していない場合には、「解雇の事由」を記載した上で、改めて、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

就業規則の解雇規定について、それが多くの解雇理由の「例示」であって、項目に該当しない理由でも解雇が可能なのか、「限定列挙」されたものであって、それ以外の理由では解雇されないのか、については次の判例があります。

茨木消費者クラブ事件 大阪地裁 平成5.3.22

会社の就業規則の規定は普通解雇事由を限定的に列挙したものと認められ、このように使用者が就業規則において普通解雇事由を限定的に列挙して規定している場合には、普通解雇事由に該当する事実がなければ解雇しない趣旨に使用者自ら解雇権を制限したものと解することが相当であるとした。

関連事項:退職手続


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