職務の専門性と解雇について

採用と訓練のシステム

日本における従業員の採用は、普通、欧米におけるような特別の資格や技能を要件として特定の職種に雇い入れるという形態をとってはいません。

企業は普通、特別の資格・技能を条件とせず労働者を採用します。

企業は、試験や試用期間により「労働者の能力・適性」をふるいにかけ、その上で教育訓練を行います。

特別の資格・技能をもたない労働者は、企業によって主としてOJTで育成されるのが普通です。

したがって、職務遂行能力を問題にする場合にも、こうした企業の教育訓練が適正になされたかどうかが問題となります。


資格職種の場合

資格・技能があることを条件に、特定の職種に雇い入れられているのは、医者や看護婦といった専門職などの労働者です。

資格・技能を条件とし特定の職種に雇い入れられた場合に、その「資格・技能」が一定水準に達していない場合には、命じられた職務を遂行できないことになりますから「職務能力に欠ける」といえるでしょう。

この場合には、資格・技能が採用の条件になっており、資格・技能に欠けることを証明できれば、解雇も可能になると考えられます。

プラウドフットジャパン事件 東京地裁 平成12.4.26

専門職の成績不良、適格性不足を理由とする解雇について、今後向上の機会を与えたとしても平均に達することを期待するのは困難だとして、解雇が有効だとされた。

フォード自動車事件 東京高裁 昭和59.3.30

職務の地位が特定され、その地位に相応する能力の発揮が期待されている場合には、降格や代替勤務の可能性を検討することなく、解雇しても有効である。


ページの先頭へ