人員削減の必要性

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整理解雇の4要件:人員削減の必要性


人員削減の十分な必要性があること

会社の維持および存続を図るために、整理解雇が必要かつ最も有効な方法でなければなりません。

人員削減措置の実施が不況、斜陽化、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること、ないしはやむを得ない措置と認められることです。

具体的には、受注減少や採算悪化による業績の著しい落込みなどで、遊休資産の売却など経営合理化した上での経営危機であることです。

初期の判例では、単に、赤字経営程度ではなく、このままでは企業の存続が危ぶまれる程の経営危機が存在し、人員整理の必要性があることが求められていました。(三萩野病院医師解雇事件 福岡地裁小倉支部 昭和50.3.31など)

日本スピンドル製造事件 神戸地裁尼崎支部 昭和55.2.29

このような解雇が有効とされるためには、第一に、人員整理の必要性、すなわち、企業が客観的に高度の経営危機下にあり、解雇による人員整理が必要やむを得ないものであること。

しかし、その後の判例では、「倒産必至の場合に限局することは、経営権ないし経営の自由を制約することやや大幅に過ぎる」とされており、客観的に高度な経営上の必要性があれば足りるというものが増加しており(住友重機工業玉島製造所事件 岡山地裁 昭和54.7.31ほか)、状況如何によっては、危険予防型の整理解雇も認められています。

東洋酸素事件 東京高裁 昭和54.10.29

使用者はいったん労働者を雇用した以上、客観的、合理的事由のない単なる自己都合によって、これを解雇する自由を有しないが、資本主義経済社会においては、一般に、私企業は、採算を無視して事業活動及び雇用を継続すべき義務を負わないし、雇用の安定による労働者の生活保障、失業者の発生防止等の観点から私企業に対し、需要供給の関係を全く無視した特別な法的負担を課する根拠は現在の法制のもとにおいては認められないからである。

裁判所は、企業の合理的運営上やむを得ない必要に基づくものであれば、いわゆる倒産回避型のみに限られず、危険予防型の場合も承認されるとした。


科研化学事件 東京地裁 昭和30.10.15 ほか

(危険予防型解雇の原因が)経営者の怠慢等その他経営者側の責に帰するべきものであってもさしつかえない。

こういった判例の背景には、倒産必至という事態まで人員整理を認めないのでは、企業再建の機会までをも失わせることになる、という見解があります。

次の判例は、企業全体として黒字であっても、不採算部門の廃止ないし剰員の削減は経営判断上必要であるという考え方をとっています。

鐘淵化学工業(東北営業所)事件 仙台地裁 平成14.8.26

債務者全体としてみた場合には過去最高の経常利益を上げる状態とはなっているが、建材部門については赤字状態が続き、債務者は債権者らの整理解雇を検討する以前からも、経費削減のための合理化努力を続けてきたものと認められるところ、債務者のように企業全体として黒字であったとしても、事業部門別に見ると不採算部門が生じている場合には、経営の合理化を進めるべく、赤字部門について経費削減等の経営改善を図ること自体は、債務者の経営判断として当然の行動というべきである。

・・・業績の落ち込みは、一時的な景気後退による不況というよりも、経済構造の変化に伴う不況というものと考えられることに照らし、・・・東北営業所の閉鎖によって、剰員が生じる結果となるのは避けられないのであるから、・・・人員削減の必要性が認められるといわなければならない。

ともかく、人員削減措置の決定後、大幅な賃上げ、多数の新規採用や高額の株式配当など、素人目からみても明瞭に矛盾した行動がとられた場合には、人員削減の必要性はないといってよいと考えられます。


経営判断のポイント

現実に経営状況を見極める場合、次のような事項が参考となります。

(1) 収支決算上の赤字の有無・程度、借入金返済の逼迫度、資産の増減など
(2) 人件費や役員報酬の額と増減
(3) 新規採用・臨時工などの社員の増減
(4) 業務量の増減
(5) 株式配当があるか、あるときはその金額はどうか

ちなみに、宝林福祉会(調理師解雇)事件(鹿児島地裁 平成17.1.25)において、原告側は次の項目を経営判断の要素として上げています。

自己資本構成比率 高ければ高いほど安全性が高い
活動収支差額構成比率 法人成立以来どれだけの繰越金が残っているかを計る。高いほど良い。
国庫補助金等特別積立金構成比率 固定資産の減価償却等に伴って減少していく。少ないほど自己資本の安全性は高い。
固定資産構成比率 資産に占める固定資産の割合。安全面からは、この数値は次第に減少していくことが望ましい。
流動資産構成比率 高いほど安全性が高い。
総負債比率 高いほど資産的余裕がないことになる。
流動負債構成比率 高いほど短期に返済する負債が多く、資金繰りに支障が出ることが考えられる。
負債比率 自己資本に占める負債の割合。高いほど、他からの資本を当てにしていることになる。
固定比率 固定資産の純資産に占める割合。自己資産で固定資産を賄えるようにするには100%以下にしていくことが望ましい。
固定長期適合率 自己資産だけで固定資産がまかなえなくとも、長期の借入金でこれが賄える割合であり、100%を下回り低いほど健全。
流動比率 流動資産の流動負債に占める割合。短期の支払の安全性を見るものであり、高いほど資金の支払いの心配が少ない。
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