派遣社員と業務命令

命じられる業務は、あらかじめ決められた範囲内

派遣元会社は、派遣社員を派遣するにあたり、派遣社員に対して就業条件を明示する義務があります。

派遣労働者からの苦情には「労働条件が約束と違う」というものが少なくありません。

派遣元は派遣先からオーダーが入り、要望に沿ったスタッフに仕事を紹介するときに、まずは電話で内容を伝え、OKをもらうことが多いのですが、この連絡内容で本人が派遣に応じるかどうかを決めることとなるので、この電話が労働条件の提示となります。

その後発行される「就業条件明示書」と電話での説明が異なる場合、電話で話した内容の方が条件として優先されるので、電話説明だからといって軽く考えてはいけません。


就業条件明示書

とは言っても、実際に電話の内容で争うとなると、「言った言わない」の水掛け論となることがほとんどです。したがって、書面となったものが重要となります。

「就業条件明示書」の記載内容について、もう一度確認してみましょう。

明示書の範囲外の仕事を頻繁に命じられるような場合は、派遣元の担当者と相談して、派遣先に申し入れてもらいましょう。

ただし、指示された業務に付随・関連する業務については、社会通念上、これも業務に含まれてくる場合があります。

当該業務と密接に関連し、その遂行のため不可欠又は必要な業務、あるいは当該業務に密接に関連するとはいえなくとも、業務の円滑な遂行のため、職場での人間関係の維持を含めて必要な関連性のある業務などは、派遣労働者において行うことが必要な業務というべきだとされます。

具体的には、対象業務の実施上必要不可欠な「準備・整理・後始末等」の付随業務や、当該業務を円滑かつ完全に遂行する上で必要な付帯業務や、事務処理上必要とされる相当範囲の関連業務というものがこれです。

また、派遣先の正規社員が臨時の欠勤、休暇、外出等で不在のおり、その職場に取引先の者の来訪があったときに案内したり、お茶を入れたりすることは、派遣先の職場における人間関係の円滑化を図り、適法な派遣業務をスムーズに遂行する上では必要な場合もありえます。

派遣先の社員が全員「いらっしゃい」と笑顔であいさつしているのに、派遣社員だけ「私は別です」と知らぬふりの態度をしたり、自分が手空きで容易に対応できるのに知らぬふりをしていることは、派遣先の職場に違和感をもたらし、人間関係を害して、かえって派遣業務の円滑、かつ完全で能率的な遂行に支障を生じることにもなりかねません。


まずは派遣元に相談を

いずれにしても、労働者は、契約内容と実際の労働条件が異なっていたときには、即時に労働契約を解除することができますが(労働基準法15条2項)、解約をしないで働き続けたいという場合には、派遣先に就業条件明示書で示された契約内容を守ってもらえるように、派遣元責任者に相談してみることになるでしょう。

派遣法では、派遣労働者の就業条件を確保するために、派遣元は、派遣先を定期的に巡回することなどによって、派遣労働者の就業の状況が契約内容に反していないかどうか確認したり、派遣労働者の適正な就業環境を確保するためにきめ細やかな情報提供を行うなど、派遣先と的確に連絡調整を行うよう定めています。(派遣元指針第2の5)

また、派遣労働者を指揮命令する立場にある者に対しては、労働者派遣契約に定められた就業条件の周知徹底をはかったり、定期的に就業場所を巡回して、派遣労働者の就業の状況が契約内容に反していないかどうか確認したり、契約内容に反する業務命令を行なわないように指導を徹底するように示しています。(派遣先指針第2の2)


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