パートタイマーと有給休暇

パートタイマーの年次有給休暇

雇入れ日から6ヶ月間継続勤務し、所定労働日数の8割以上出勤すれば、パートタイマーにも労働基準法で定める有給休暇の権利(年休権)が発生します。

年休権の成立には、「継続勤務」と「所定労働日数の8割以上出勤」の2つの要件があります。

「継続勤務」については、実質で判断されます。期間の定めのある労働契約の場合でも、契約更新により6ヶ月間継続勤務すれば上記の要件により与えられます。

「所定労働日数の8割以上出勤」の算定は、当初6ヶ月、それ以降1年が単位です。

付与日数は、勤続年数に応じて増加しますが、パートタイマーの場合は勤務形態によって比例的に、週又は年間の所定労働日数に応じて定められています。

週所定労働時間が30時間以上の年次有給休暇の付与日数

上記要件を満たした場合、勤務開始後6ヶ月経過で、10労働日の有給休暇が発生します。

その後は、継続勤務期間が1年増えるごとに、下表の日数の有給休暇日数となります。

パートタイマーの名称で働いていたとしても、週の所定労働日が5日(または、所定労働時間が週30時間以上)なら、この表が適用されます。

勤続年数 6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月以上
付与日数 10 11 12 14 16 18 20

※週所定労働時間が30時間以上、または、週所定労働日数が5日以上か1年の所定労働日数が217日以上の場合

週所定労働時間が30時間未満の年次有給休暇の付与日数

アルバイト・パートタイマーなどの名称にかかわらず、6ヶ月以上継続勤務(勤務実績8割以上)した従業員に対しては、有給休暇が付与されます。

これは、企業の大小を問いません。

パートタイマーなどの週所定労働時間が30時間未満の労働者に対して比例付与される年次有給休暇の日数は、以下の通りです。

勤続年数 6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月以上
所定労働日(週:4日)
年:169日~216日
7 8 9 10 12 13 15
所定労働日(週:3日)
年:121日~168日
5 6 6 8 9 10 11
所定労働日(週:2日)
年:73日~120日
3 4 4 5 6 6 7
所定労働日(週:1日)
年:48日~72日
1 2 2 2 3 3 3

※例えば、1日の所定労働時間が4時間のパートタイム労働者は、1日分の有給休暇も4時間として計算されます。

その日に1時間でも出勤していれば、その日は「1労働日の出勤」として出勤率に算定されます。

なお、上記比例付与は、通常の労働者の週所定労働日数を5.3日として、端数切り捨てにより算出されています。

一般の労働者同様の有給休暇日数となる場合

週5日勤務であれば、1日の所定労働時間が少なくて、週30時間未満となる場合でも、通常の休暇日数となります。

週4日勤務であっても、週所定労働時間が30時間以上なら、通常の休暇日数です。

週4日勤務で、所定労働時間が30時間未満であっても、1年間の所定労働日数が217日以上なら、通常の休暇日数となります(ただし、週4日だと年217日には達しません)。

勤務日が年間指定であり、217日以上あれば、所定労働時間にかかわらず、通常の休暇日数となります。


「継続」勤務の考え方

有給休暇などの算定基礎として「継続勤務」というものがありますが、実務処理上では、何が継続かが問題となる場合があります。

この点について通達では次のようなものが実質的に継続しているとして、勤続年数の通算対象となるとされています。(昭和63.3.14 基発150号)

(1) 定年退職による退職者を引き続き嘱託等として再採用している場合(退職手当規程に基づき、所定の退職手当を支給した場合を含む)。ただし、退職と再採用との間に相当期間が存し、客観的に労働関係が断続していると認められる場合はこの限りでない。
(2) 法第21条各号に該当する場合でも、その実態より見て引き続き使用されていると認められる場合
(3) 臨時工が一定月ごとに雇用契約を更新され、6ヶ月以上に及んでいる場合であって、その実態により見て引き続き使用されていると認められる場合
(4) 在籍型の出向をした場合
(5) 休職とされていた者が復職した場合
(6) 臨時工、パート等を正規職員に切り替えた場合
(7) 会社が解散し、従業員の待遇等を含め権利義務関係が新会社に包括継承された場合
(8) 全員を解雇し、所定の退職金を支給し、その後改めて一部を採用したが、事業の実体は人員を縮小しただけで、従前とほとんど変わらずに事業を継続している場合

上記(2)(3)から、継続雇用されるパートの大半は、その勤続年数が引き続く年数として計算され、有給休暇の発生や繰り越しも生じるものと思われます。

具体的に何日間の空白なら中断といえるかという基準はありません。

中断の考え方については、労基法20条の解雇予告から、1ヶ月とする考え方、民法627条をもとに2週間とみる考え方、雇用保険法42条の日雇労働者の適用の趣旨から18日とみる考え方、同法21条(待機)の趣旨から7日とみる考え方等があります。

パート労働法の施行について、次のような通達が出されています。

年次有給休暇の付与に係る「継続勤務」の要件に該当するか否かについては、勤務の実態に即して判断すべきものであるので、期間の定めのある労働契約を反復して短時間労働者を使用する場合、各々の労働契約期間の終期と始期の間に短時日の間隔を置いているとしても、必ずしも当然に継続勤務が中断されるものではないことに留意すること。」
(平成5.12.1 基発第663号)

正規職員が定年退職して月に18日勤務する非常勤の嘱託となったケースで、「勤務状況に実質的変更がないとはいえないことから、労基法39条1項の継続勤務とはいえない」とされた判例があります。(東京芝浦食肉事業公社事件 東京地裁 平成2.9.25)

これとは逆に、「馬券売り場の馬券発売・払戻従事者のように、競馬開催期間が雇用期間とされ、その一方で1ヶ月に1日も就労しない期間もある場合でも、競馬開催が法令上の制限に基づいていることから、これを継続勤務として年次有給休暇の請求権がある」と判断された例もあります。(日本中央競馬会事件 東京地裁 平成7.7.12)

国際協力事業団事件 東京地裁 平成9.12.1

1年間の期間の定めのある雇用契約を繰り返し更新し、途中中断することなく継続雇用されている者に対する労働基準法39条の適用については、これらの者は継続勤務したものとして所定の日数の年休を与えなければならず、当該年度に消化されなかった年休の繰り越しも認めるべきである。


年度途中で週の所定労働日数が変更になった場合

有給休暇については、付与日数が決定される「基準日」が決められていて、この基準日における勤続年数と所定労働日数、過去の出勤率がチェックされます。

したがって、年度の途中で所定労働日数が変わっても、あくまでも「基準日」現在の週所定労働日数が基準となって付与日数が決められると考えられます。

法改正などによって日数が変動した場合も、実際にこれが適用されるのは、その基準日が来た時点からとなります。


シフト制勤務などの場合

シフトを組む際にあらかじめ労働者に休暇の希望を聞き、年休を組み込んだシフトを作成することも可能です。

ただし、厳密には休暇の時期指定権を制限することになりますので、本人の理解を得ることが必要です。


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