紹介予定派遣とは

採用後のミスマッチを避けるための手段

一定期間を派遣社員として働き、その後で正社員として採用される道を開く制度です。日本では2000年12月から始まりました。

この制度のメリットは、雇用主にも労働者にも、採用後のミスマッチを回避できる点にあります。派遣先は、労働者の適性、能力をじっくり判断した上で、その労働者を直接雇用するかどうかを判断することができるのです。

紹介予定派遣の場合、次のことが可能です。

(1) 派遣就業開始前(又は派遣修業期間中)の求人条件の明示
(2) 派遣期間中の求人・休職の意思の確認及び採用内定
(3) 派遣就業開始前の面接、履歴書の送付等の派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為(派遣開始前の面接、履歴書の送付等)

派遣先企業から見たメリット

通常の企業は、「試用期間」を設けていますが、試用期間といえども合理的な理由がなければ容易に解雇できるわけではありませんし、14日以上勤務したなら解雇予告手当も必要になります。

また、社会保険の手続も、雇用開始の日をもって被保険者とされますので、試用期間の設定は、実際にはあまり意味のないものだといえます。

これに対し、紹介予定派遣は、少人数を採用する場合に有利な制度といわれており、一斉に募集してもあまり人が集まってこないような職種などの場合には、最初から少人数の候補者を派遣元事業主の調査なども前提にした上で派遣してもらうということにすれば、採用にあたってのコストも減らすことができます。

事前面接、履歴書等の取り寄せも行うこともできます。

紹介予定期間の社会保険負担などは派遣企業ががやってくれます。

労働者から見たメリット

派遣労働者の側から見れば、紹介予定派遣制度を活用することによって、派遣先の仕事の内容や会社の雰囲気を理解した上で就職することができることになります。

派遣期間を通じて「将来、正社員としてやっていけるか」を企業、派遣社員の双方が見極められるのが利点で、欧米では派遣社員の約3割を占めるとされています。

派遣業者から見たメリット

派遣社員が派遣先の企業で直接雇用されることを、派遣元が妨げることは許されていません。

このため、良質の派遣労働者は、次々と派遣先に直接雇用されてしまいます。

派遣元は、それに先だって、登録や教育などの先行コストを支出していますから、あまりに早く派遣労働者を手放しては、コスト回収ができません。

だったら当初から「紹介料」を設定し、労働者を派遣する方が合理的だということになります。

従来は、労働者派遣契約に基づく収入のみでしたが、「職業紹介手数料」という新たな収入源が発生します。


紹介予定派遣の導入

派遣元事業主は、紹介予定派遣に係る派遣労働者を雇い入れる場合は、その旨を派遣労働者に明示しなければなりません。

また、既に雇い入れている労働者を新たに紹介予定派遣の対象とする場合はその旨を労働者に明示し、同意を得なければなりません。

また、紹介予定派遣の場合は、就業条件明示書に紹介予定派遣に関する事項を記載することとなっています。

この派遣を行うためには、派遣元は職業派遣事業としての許可・届出とあわせ、職業紹介事業としての許可も必要となります。

2003年改正派遣法第2条(用語の定義)

6.紹介予定派遣

労働者派遣のうち、第5条第1項の許可を受けた者(以下「一般派遣元事業主」という。)又は第16条第1項の規定により届出書を提出した者(以下「特定派遣元事業主」という。)が労働者派遣の役務の提供の開始前又は開始後に、当該労働者派遣に係る派遣労働者及び当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受ける者(以下この号において「派遣先」という。)について、職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして、職業紹介を行い、又は行うことを予定してするものをいい、当該職業紹介により、当該派遣労働者が当該派遣先に雇用される旨が、当該労働者派遣の役務の提供の終了前に当該派遣労働者と当該派遣先との間で約されるものを含むものとする。


紹介予定派遣の基本的な流れ

紹介予定派遣の基本的な流れ

必ず採用してもらえるわけではない

また、これまでの「試用期間」の取扱いでは、雇用者は、本採用拒否を行うためにそれなりの合理的根拠が問われていたところであり、また、解雇にも30日前の予告などの法的責任が求められたところですが、こうしたリスクは紹介予定派遣を利用することで回避することができます。

したがって、労働者側にとって注意が必要なのは、必ずしも派遣先がその労働者を採用するわけではない、という点です。

まず、紹介予定派遣は、労働者派遣を開始する時点で派遣労働者と派遣先の意思を確認し、同意を得て行う場合に限って可能です。

もし、派遣就業を始めてから、派遣労働者の希望によって新たに紹介予定派遣とする場合には、三者(派遣元、派遣先、派遣労働者)の合意のもと、従来の労働者派遣契約及び派遣労働契約を終了させ、新たに紹介予定派遣としての契約を結びなおす必要があります。

派遣先が職業紹介を受けることを希望しないときには、その理由を派遣元に通知したうえで拒否することができます。

採用しない場合は、派遣先は、派遣元にその理由を通知しなければなりません。

派遣先への正社員としての雇用を望むスタッフの期待に反して、派遣先企業の採用意欲は高くない、という現実をあらかじめ覚悟しておくべきだといえます。

また、派遣先が派遣労働者を直接雇用する場合であっても、必ずしも正社員として雇用しなければならないというものではなく、例えば3ヶ月間の有期雇用などでもよいことになっています。

ただし通達では、1年間の労働者派遣の受け入れ期間と、3ヶ月程度の直接雇用期間を繰り返す場合などのように、派遣先の1年の受け入れ期間の制限を免れる目的で紹介予定派遣を活用していると考えられるときは、是正指導の対象となります。

こうしたことから、人材派遣の拡大は人件費抑制を進める企業には便利ですが、労働組合などには「不安定な雇用が増える」と慎重な意見もあります。

紹介予定派遣においては、派遣労働者が派遣就業を始めてから、就職活動の一環として、自ら派遣先に履歴書を送付したり、仮に雇用された場合における労働条件等の確認を行うことが認められています。

また、派遣就業終了予定日と直接雇用予定日が近接している場合には、求人・求職の意思確認および労働条件の明示を派遣就業終了予定日のおおむね2週間程度前の日以降に行って差し支えありません。


医師・看護師の取り扱い

医師・看護師など病院等における医療関係業務についても、紹介予定派遣の場合には労働者派遣を行うことが、平成16年3月から可能となりました。

紹介予定でない場合は、従前通り禁止されています。

また、この場合派遣元は、相談・苦情等に適切に対応しうる体制(専門的なスタッフの配置等)を有していることが望ましいとされています。

医療関係業務

医師、看護師、保健師、助産師、放射線技師、理学療法士、作業療法士、臨床検査技師、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士、救急救命士、言語聴覚士、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、薬剤師、管理栄養士


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