内職商法

「副業で高収入」で誘う

失業者の増加がインターネット等の普及と同時進行して、いわゆる「内職商法」と呼ばれる詐欺まがいの悪質業者が増えています。

内職者には家内労働法が適用されますが、個人事業主に近い就労形態なので、労基法の手厚い保護が受けられません。

したがって、甘い誘いに乗ると、さまざまなトラブルに巻き込まれる危険があります。


いわゆるインチキ内職とは

講習会詐欺型

内職講習会と称して多額の受講料等を取るが、出来た製品については種々の条件をつけて買いたたいたり、買い上げを拒否したりする。

「講習を受ければ、初心者でも簡単にでき、1日5,000円の収入になります。製品は全部買い上げます。」と電話で説明され、4万円の講習料を払い、アクセサリー加工の講習を受けたが、説明とは異なり、この仕事はかなりの技術を要し、できた製品には何かとけちをつけて買い上げてくれない。

広告で、「パソコンの経験がなくても講習を受ければ大丈夫、試験に合格するまでサポートします。その後は仕事をあっせんします。」との掲載内容をみて、講習料を払い、試験を受けて合格したが、その後あっせんはまったくしてくれない。

機器売りつけ型

相当の工賃収入が得られると宣伝し、高額な機械を市価の倍額ぐらいの価格で売りつけるが、曖昧な工賃の取り決めで、実際はそのとおりの収入が得られない。

「専用の織機を使って縫製の仕事をすれば、月に10万円の収入になる。」と勧誘され、仕事に必要だということで高い機械を購入したが、仕事をほとんど回してもらえず、思うような収入が得られない。そのうち、業者が行方不明になってしまい、連絡がとれなくなってしまった。

電話で、「在宅でホームページ作成の仕事をしてみませんか。あなた次第で月20万円の収入も可能です。」と勧誘され承諾したところ、後日パソコンの購入契約が送られてきた。家にあるパソコンではダメと言われ、やむなく50万円以上する高額のパソコンを買ったが、思うような収入が得られず、解約を申し出たが応じてもらえない。

契約詐欺型

解約時に返還するとして徴収した契約料等を返還しないもの。

「お家で空いた時間にパソコンを使ってデータ入力の仕事をしてみませんか。登録料を払って会員になれば仕事をご紹介します。」という折込広告をみて、登録料3万円を払ったが、仕事はまったく紹介してもらえず、返還を要求しようとしたが、そのうちあなたに適した仕事を紹介するからと、取り合ってくれない。

新聞の折込みで、「高収入の宛名書き」の募集広告をみて応募したところ、後日返還するとの約束で保証金等の名目で金銭を徴収されたが、仕事を辞める際、これらの金額の返還を要求してもまったく返還されなかったり、支払った直後に業者が行方不明で連絡が取れなくなってしまい、お金は返ってこなかった。

説明虚偽型

「自宅で安定収入が得られます。」という広告の受注代理店の仕事の折込みを見て説明会に行き、その際相手事業者と代理店契約を結んだが、実際には自分で仕事先を開拓しなければならず、それに係る経費はすべて自分持ちで、報酬も歩合制で支給される。


最初は優しく勧誘し、脱退すると言うと脅迫

東京都が行政処分した内職は、次のような経過をたどっています。

内職商法の事例

まず電話で勧誘

「自宅で、旅行業務の手伝いをして収入を得ませんか。そのためには、資格を取得してもらい、合格後は確実に仕事を依頼します。」

「自宅で副業をしませんか。旅行主任という資格があり、試験に合格したら、仕事のやり方や旅行会社を紹介します。」「旅行会社からの要請で人を募集している。子供がいると外で働けないが、この仕事は空いている時間を利用してできる。そのつど連絡してくれれば、仕事を紹介する。」

「在宅で長く続けられる仕事がある。そのためには資格を取る必要があるが、費用の一部は合格すれば戻ってくる。残りは、仕事をして返していけばいい。」などと言う。

相手が、合格できるか心配だと不安を言うと、「当社の資格は国家資格であり、資格を取るのに国から8割の援助もある。当社には、指導センターがあり、一人一人に担当がつく。あなたの担当は、私です。絶対に合格させます。教材は多いが、そのうち3冊やれば合格する。前回は、68人中全員が合格しました。」と言葉巧みに、同社の教材を使って資格を取り仕事をしている女性たちの例を次々と話して安心させる。

仕事は自分で探さなければならないかと聞くと、「そのような仕組みの会社もあるが、当社は仕事を紹介するので自分で探す必要はない。今は子育てで仕事ができなくても、仕事ができるようになったら何時でも電話をくれれば仕事を斡旋します。」と答え、そして「この場で申し込む必要がある。絶対受かる。ダメならお金が返ってくる。」と粘り、「契約しますね。契約書面を送ります。電話でも契約は成立します。今後取り消しはできません。」と、契約することを了解させた。

契約取消を求めると態度が急変

数日後、同社から送られた申込書面に8日間のクーリング・オフの記載があるのを見て、前日の担当者に電話をすると、同社従業員は、担当者は不在であると言い、「当社は、教育・指導を名目にしているので、クーリング・オフはできません。クーリング・オフするようであったら、こっち(北海道)にきてもらうことになる。あなたの電話の内容は録音されており証拠があります。名誉毀損で訴えることができる。」と答えた。

「ぼったくりではないか。」と反論すると、従業員は急に態度を変え、あなたが困ろうがどうしようが関係ない。・・・クーリング・オフはできない。」「てめえ、覚えていろよ。こっちに来い。弁護士を呼んで待っているからな。・・・とにかく弁護士を呼んで何とかするから覚えておけよ。いいな。」と一方的に暴言を浴びせ続けた。

これに怖くなって、主婦らは、送られてきた「販売契約申込書」、「受講入会申請書」及び「クレジット契約申込書」(現金価格48.3万円)に記入し、同社宛送付するとともに、指導料2万円を振り込んだ。

同社は、契約内容を明らかにする書面を送付することなく、教材を送付した。

この事例で、東京都が調査したところ、次の事実が判明しました。

調査の概要

同社は、北海道、沖縄を除く全国で電話勧誘により、一般旅行業務取扱主任者の資格取得のための教材及び講座を販売。仕事を紹介すると言って勧誘しているが仕事は紹介していない。試験は簡単と言っているが、同社の講座受講者366名に対し、14年度合格者は1名であった。

主な違反行為

このことから、次の違反行為(特定商取引法)があったとされています。

(1) 概要書面不交付(第55条第1項)
契約を締結する前までに、業務提供の条件等について記載した書面を交付していない。
(2) 契約書面不交付(第55条第2項)
契約を締結した場合に、遅滞なく業務提供の条件等契約内容を明らかにする書面を交付していない。
(3) 不実告知(第52条第1項)
試験には9割が受かる、昨年は68人中全員が合格したと事実でないことを言って勧誘している。
契約書面が交付されてから20日間は契約の解除が可能であるにもかかわらず、申込みの取消しはできないと電話で説明している。
(4) 威迫困惑(第52条第2項)
相手方が申込みを取り消したいと言うと、申込みの電話は録音している、裁判にする、北海道に来い等と脅している。
(5) 断定的判断(第56条第2号)
確実に合格させると言って収入が確実に得られるような断定的判断を提供している。

結果

このことから、業務の改善が求められ、改善されない場合は業務停止処分を行う旨の通告がなされています。

また、インチキ内職が家内労働法に適用される場合は、労働基準監督署が監督指導を行うことも可能です。

しかし、何よりも、内職希望者自身の注意によって、インチキ内職に引っかからないようにすることが大切だといえます。


【問い合わせ先 】
国民生活センターまたは東京都生活文化局 消費生活部取引指導課


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