企業施設へのビラ貼り

施設管理権とのかねあいが問題に

最高裁は、使用者の許諾なしに企業施設を利用して組合活動を行うことは、特段な事情がない限り正当性を持たないとしています。

特段の事情については、総合的に判断されることになりますが、例えば、次のような要素が判断基準となります。

(1) 過去の例(過去に使用者が許容した例があるか等)
(2) ビラ貼付の目的
(3) ビラ貼付の必要性の度合
(4) ビラの貼付された場所
(施設の種類・位置・大きさ・構造、顧客・労働者等の目に容易に触れる場所か否か等)
(5) ビラの形態(大きさ、色彩)
(6) ビラの枚数
(7) 貼付方法
(糊付か粘着テープによるものか、剥離が用意か否か、はがした後痕跡が残るか否か)
(8) 貼付の回数・期間
(9) ビラの内容
(名誉を毀損したり誹謗中傷文言が用いられているか、虚偽歪曲の事実か否か等)
(10) 業務を阻害するものであったか否か、業務阻害の程度
(11) 建造物の美観・効用が損なわれた度合

千代田学園事件 東京地裁 平成15.10.9

学園の経営状況などに関するビラ配布を理由とする教職員12人の懲戒解雇は、原告らに弁明の機会を与えておらず、就業規則および賞罰委員会規則を無視した重大な手続き違反があり、無効である。

住吉学園事件 大阪地裁 平成8.11.27

入試説明会の場で組合ビラを配布した組合書記長たる高校教諭に対する解雇を、無効とした。

原告らがビラを配布したのは、入試説明会に来た受験生及び保護者約40名で、住吉学園の受験生のごく一部であること、原告らのビラの配布行為によって、この年の受験状況にどのような影響があったかは、必ずしも明らかではないことからすると、前記のとおり原告の教師としての適格性にやや疑問の余地があるとしても、ビラの配布行為を理由として何らかの軽微な処分を発することはともかく、これのみをもって原告を解雇することは、そのもたらす結果が過酷にすぎるというべきであて、本件解雇は解雇権の濫用に当たり、無効であるというべきである。


ページの先頭へ