労働協約とは

形式的要件が必要

労働協約は、「書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印すること」が効力発生要件となっています。

逆にいえば、書面に作成しないものはもちろん、両当事者が署名(サイン)または記名押印しないものも、労働組合法による労働協約ではないことになり、効力は生じなくなります。

録音されたもので、日付があって証拠能力があったとしても、労働協約にはなりません。


団体交渉の成果

労働者は、自らに希望する労働条件を得、それを維持向上させるために団結して労働組合という組織を作り、その集団の力を背景に使用者と団体交渉をします。

その団体交渉で、ようやく合意に達しても口頭の約束では、後でその履行をめぐってトラブルが生じることもあります。

そこで、合意した内容について、書面で労働協約を作成しておくことになります。


名称が違っても労使間の合意文書は協約になる

労使間の合意文書の表題が「覚書」「了解事項」等の名称であっても、労働組合法第14条に該当すれば労働協約といえます。(青森放送事件 青森地裁 平成5.3.16)

労働組合と使用者又はその団体との間に労働条件その他に関して合意が成立し、両当事者が署名または記名押印していれば、たとえそれが「労働協約」という名称を付されたものでなく、例えば「協定」とか「覚書」という名称をもつものであっても、その名称のいかんを問わず、本法にいう労働協約である。

(労収第5号 昭和29.1.19)

団体交渉記事録であっても、労使双方が署名したものであれば、その内容によっては労働協約と解されることがあります。 (東京12チャンネル事件 東京地裁 昭和43年2月28日)


当事者

労働協約の当事者は、社長と委員長とは限りません。

職場闘争において、そのとき対応していた管理職と職場員の間で交わされたものであっても、要件を満たしていれば労働協約になります。

後日、社長権限がない者が勝手にやったことだと主張して一方的に破棄された場合には、不当労働行為となります。


労働協約に反する規定は無効に

こうして労働組合が結成されますと、その活動を通して労使間で合意に達した事項を書面で取り交わすようになります。

そして、労使双方が約束したある一定期間、例えば半年間とか1年間はお互いに協定したことを遵守することになります。

これが労働協約といわれるもので、それは組合活動の中から必然的に生まれたものであり、労働協約の歴史はそのまま組合活動の歴史といっても過言ではありません。

労働協約とは、労働組合と使用者またはその団体との間の労働条件その他に関する契約です。

労働協約に反する労働契約のその部分は無効であり、就業規則も労働協約に反してはならないことが労働基準法で規定されています。


トップ同士の独断による約束は

トップ同士の独断による約束の場合は、拘束力を持たないと判断される可能性があります。

労働組合の代表者(例えば組合長、副組合長)が組合員の相違に依らず、独断的に使用主と覚書等を交換したる場合、其の覚書の効力如何は組合規約等により定められている当該代表者の権限によって決定される。

即ち当該代表者が会社と協定を締結する権限を有する場合には、その締結した覚書は一応有効なものとして組合を拘束し、これを改廃する為には再度会社と交渉せねばならぬが、組合規約上当該代表者は交渉の権限を有するのみで、協定の締結には組合の特定機関、例えば評議員会又は総会の決議を要することとなっている場合は、その代表者の交換した覚書は単なる下交渉であって何等組合を拘束しない。

(労発第442号 昭和21.8.7)


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