複数組合の併存

少数組合の組合員の場合

少数組合の構成メンバーには、原則として労働協約の適用はなく、より有利な労働契約は維持されます。

ただし、4分の3以上の労働者を組織する多数組合が不利益な労働協約を締結した場合については疑義が残ります。

通牒では否定されることになっていますが、学説も裁判例も肯定・否定に分かれています。

当該工場事業場に使用される他の同種の労働者は、別に労働組合を組織していると否とに拘わらず、また他の労働協約の適用を受けていると否とを問わず、当該労働協約の適用を受けることとなるのであって、少数者が他の労働協約の適用を受けている場合には、その労働協約は拡張適用される協約にてい触又は重複する限りにおいて、その効力を停止する。

(労発第209号 昭和29.7.20)

肯定説

労働組合法第17条には、少数労働者が組合を結成している場合には適用を排除する明文の規定がありません。

また、拡張適用を認めても、少数組合がより有利な解決を求めて団体交渉・争議行為をすることは自由ですから、少数組合の自主性を奪うことにならず、むしろ弱い少数組合の保護に資することになります。(桂川製螺製作所事件 東京地裁 昭和44.7.19、佐野安船渠事件 大阪地裁 昭和54.5.17)

否定説

少数組合の組合員にも多数組合の労働協約が適用されるとすると、少数組合は多数組合の協約の成果を自動的に利用できるとともに、それに満足できなければより有利な労働協約を求めて団体交渉・争議行為ができることになります。

このことから、肯定説は、多数組合の団体交渉権を少数組合の団体交渉権に優越させ、少数組合の団体交渉上の独自の立場を侵害する結果となると解されます。(福井放送事件 福井地裁 昭和46.3.26)

黒川乳業事件 大阪地裁 昭和57.1.29

労働協約の拡張適用は、一つの工場事業所に二つの労働組合が存する場合に、多数派の労働組合の組合員の労働条件よりも有利な部分に限ってなされるのであって、少数派の組合員の労働条件の不利な部分に限ってなされるのであって、少数派の組合員の労働条件の有利な部分については、その拡張適用がないものと解するべきである。・・・もし右のように解さなければ・・・多数派の労働組合の締結した労働協約によって、右有利な労働条件が引き下げられることになって、右少数派の労働組合固有の団結権・争議権・団体交渉権をほとんど意味のないものにするからである。


組合に決定権限が必要な場合

組合大会や組合員一票投票による特別の授権を必要とする場合
例えば、会社再建のための賃金の引き下げ労働時間の延長、人員整理方針など、異常事態に対処するための労働条件や雇用に関する異例な集団的措置の実施に関する協約の締結など。
集団的授権では足りず、個々の労働者の個別的授権が必要な場合
例えば、すでに発生している賃金請求権の放棄など個人的権利の処分や特定の組合員の雇用の終了に関する協約の締結など。

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