労働組合と労働協約

労働協約は労使双方に必要なものである

労働組合と使用者の間で組合員の賃金、労働時間、休日、休暇等の労働条件や団体交渉のルール、組合活動等の事項について交渉を行い、その結果を書面にあらわし、両当事者が署名または記名押印したものを労働協約といいます。

この労働協約は、労働者と使用者が個々に結ぶ労働契約や、最終的に使用者が決めることができる就業規則とは区別され、これらに優先して、労働者および労働組合と使用者の関係を規律する効力が与えられています。

したがって、労働契約や就業規則は労働協約に反することはできません。

労働協約が締結されると、当事者である労働者や労働組合、使用者を拘束することになりますから、労働協約の締結によって、労働条件や労使関係、あるいは企業経営にどのような影響が生じるのかということを、あらかじめ知っておかなければなりません。

労働組合の目的は、端的にいいますと労働協約の締結にあるといえます。

いったん労働協約が締結されると、労働者にはその有効期間中は一定の労働条件が維持確保されることになります。

また使用者にとってもその有効期間中は、企業の平和が維持され、労使関係が安定しますから、労働協約は労使双方に必要なものといえます。


上部団体も締結できる

単位労働組合の上部団体である連合体が、団体交渉の当事者となった場合には、その連合体も労働協約を締結することができます。

単位組織内の下部組織である支部・分会であっても、それ自体が一個の労働組合としての組織を備えていれば、独自の団体交渉権があると認められますから、労働協約を締結することができます。

逆に未組織労働者が一時的に「争議団」を結成し、組織を整えないままに団体交渉して締結したものは、その団体自体が労働組合と認められないため、労働協約とはされません。(三和タクシー事件 熊本地裁 昭和40.9.29)


非組合員に規範的効力は及ばない

労働協約は規範的効力を持つため、例えば労働契約では基本給が18万円となっていても、労働協約が20万円と決めていれば、20万円の基本給が適用されることになります。

しかし、この効力の及ぶのは、原則として当該労働組合と使用者との間のみと考えられています。

京王電鉄事件 東京地裁 平成15.4.28

ボーナス交渉の場でバス部門の合理化を条件として会社側が提示。組合がこれを飲んだところ、反対した従業員が新労組を結成した。

会社は新労組の構成員に対し、賞与を支給しなかった(後日仮処分により80%が支給)。

新労組組合員は、さらに差額分を請求。旧組合との労働協約の内容が、そのまま個別の労働契約の内容となっているということが根拠として主張された。

裁判所は、労働組合を脱退した時点で、労働協約の適用はないと判断した。

安田生命保険事件 東京地裁 平成7.5.17

労働者が協約を締結した労働組合から離れた場合(除名・脱退を問わず)は、その労働者の労働契約には協約の効力は及ばないと解するべきである。


ページの先頭へ