労働組合の資格審査

資格審査を受ける場合

労働組合は自主的に組織・運営されるものです。

ですから、労働組合を作るにあたり、誰かの承認を得る必要や、役所に届け出る必要はありません。

ただし、次の場合には、労組法で決められた要件を備えた労働組合であるかどうか、労働委員会で審査することになっています。

(1) 労働組合が労働委員会の労働者委員の候補者を推薦する場合
(2) 労働組合が不当労働行為の救済を申し立てる場合
(3) 労働組合が労働協約の一定地域の労働者への拡張適用を申し立てる場合
(4) 労働組合が法人登記をするために資格証明書の交付を受けようとする場合
(5) 労働組合が職業安定法で決められている労働者供給事業および無料職業紹介事業の許可申請を行う場合

審査の基準

労働組合の資格基準は、自主的な労働組合といえるかどうか(労働組合法第2条)と民主的な労働組合に必要な規約を備えているかどうか(労働組合法第5条2項)の2点について、次の基準に基づいて行われます。

労働組合法第2条

必要条件
(なくてはならないこと)
(1) 労働者が主体となって組織していること
(2) 労働者が自ら進んで結成していること
(3) 労働条件の維持・改善及び経済的地位の向上を主たる目的としていること
禁止条件
(あってはならないこと)
(4) 使用者の利益代表が参加していないこと
(5) 使用者から労働組合運営のために経済上の援助を受けていないこと
(6) 共済事業や福利事業のみを目的にしていないこと
(7) 政治活動や社会運動を主目的にしていないこと

労働組合法第5条第2項

組合規約に次の取り決めを含むこと

(1) 労働組合の名称
(2) 労働組合の主たる事業所の所在地
(3) 連合団体でない労働組合(単位労働組合)の場合には、組合員がその労働組合のあらゆる問題に参加する権利及び均等の取扱いを受ける権利を持つこと
(4) 誰でも、どのような場合であっても、人種、宗教、性別、門地又は身分を理由として、組合員としての資格を奪われないこと
(5) 単位労働組合の場合には、役員は組合員の直接無記名投票によって選挙されること
連合体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合の場合には、役員は、傘下の単位労働組合の組合員の直接無記名投票によって選挙された代議員の直接無記名投票によって選挙されること
(6) 総会は少なくとも毎年1回は開催すること
(7) 会計報告は、あらゆる財源と支出内容、おもな寄付者の氏名及び現在の経理の状況を記載し、組合員が依嘱した職業として会計監査を行う会計監査人によって正確であるとの証明を受け、その証明書とともに、少なくとも毎年1回は組合員に公表すること。
(8) ストライキを行うには、組合員の直接無記名投票か、又は組合員の直接無記名投票によって選挙された代議員の直接無記名投票を行い、その有効投票の過半数の賛成を得ることが必要であること
(9) 規約を改正するには、単位労働組合の場合には、組合員の直接無記名投票を行い、全組合員の過半数の賛成を得ることが必要であること
連合体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合の場合には、傘下の単位労働組合の組合員の直接無記名投票によって選挙された代議員の直接無記名投票によって全代議員の過半数の賛成を得ることが必要であること

審査の流れ

(1) 申 請

労働組合の資格審査は、労働組合からの申請書と証拠となる資料の提出によって開始されます。

ただし、不当労働行為の救済申立にともなう場合は、申請書は不要です。

(2) 資料の審査

審査委員は、提出された資料に基づき労組法第2条と第5条第2項の定めに適合するかどうかを調べます。

必要があるときは、労働組合の役員に説明を求めることもあります。

提出する資料

(1) 組合規約および付属規程(議事運営規程・選挙規程など)
(2) 組合役員名簿(会社における役職名があれば付記)
(3) 労働協約(就業時間中の組合活動・専従者の取扱い・非組合員の範囲などの協定がある場合)
(4) 組合会計決算書(又は予算書)
(5) 非組合員の範囲を示す一覧表(職名をしるした会社の機構一覧図に、組合員と非組合員の区分を線で明示したもの)

(3) 補正勧告

審査委員は、労組法の定めに適合しない点がある場合でも、ただちに不適合の決定をせずに、適合しない点を直すよう勧めます(補正勧告)。

この場合は、決められた期間内に指摘された個所を直せば、法に適合するものとされます。

(4) 資格の決定

審査が終わると、公益委員会を開いて労組法の規定に適合するかとうかを正式に決定します。

その結果、資格決定書が作成され、その写しが労働組合に交付されます。

資格要件について問題がある場合は、是正指導が行われます。さらに、補正勧告制度もありますので、最終段階で資格が認められないというケースはほとんどありません。

(5) 決定に不服がある場合

労働委員会の行った決定に不服がある場合は、中央労働委員会に再審査を申請することができます。

東京都の地方労働委員会の場合

公益委員会議を毎月第1・第3火曜日に開催し、資格審査を実施しています。

その結果は、通常、即日ないし翌日には決定されます。

なお、資格審査の費用は無料です。


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