労働者災害補償保険の不服申立て

保険給付に不服があるとき

労災保険の保険給付について不服がある場合は、以下の申し立てを行うことができます。

審査請求

都道府県労働局に置かれている労働者災害補償審査官に、労災保険審査請求書を提出することによって、不服申立てをすることができます。

不服申立ては、決定の通知を受けてから3ヶ月以内にしなければなりません。

口頭で申し出ることもできます。

審査官は、審査請求の理由、提出書類、原処分を行った労基署長の決定理由等を検討し、必要な調査を行い、判断します。

労基署長による認定結果の影響を受けますので、同じ結論となることが多いと考えられます。

審査請求をしてから3ヶ月経過してもその決定がない場合は、当該審査官の決定を経ずに再審査請求を行うことができます。

再審査請求

審査官の決定に対し、さらに不服がある場合は、労働保険審査会に再審査請求をすることができます(決定の日から2ヶ月以内)。

再審査先の労働保険審査会は、当初の認定基準の拘束は受けません。

行政訴訟

それでも納得がいかなければ、行政訴訟を起こすことになります。

審査会への再審査請求から3ヶ月経過しても裁決がないなどの場合を除いて、審査会の裁決の後でなければ、行政処分の取消訴訟を起こすことはできません。これを、不服申立ての前置といいます。(労災保険法第37条)

労災保険とは別に、使用者に対して民事上の損害賠償請求をすることもできます。

その場合、労災保険の給付を受けていれば、損害賠償請求は、保険給付を除いた差額(労災福祉事業の部分は損害額から控除されないとされています(改進社事件 最高裁 平成9.2.28))と慰謝料について行うことになります。


労災訴訟

労災に関する訴訟には、労災の認定そのものを求め、労働基準監督署長を相手方として起こす労災認定訴訟と、会社側を相手方とする労災民事訴訟があります。

相当因果関係の認定については、労災民事訴訟の方が緩やかなように思われます。

これは、労災認定訴訟では、業務起因性があるか否かという択一的な選択が迫られるのに対し、労災民事訴訟では、損害額を決定する場合に、過失相殺の理論を用いるなどできますし、因果関係のほかに安全配慮義務(ないし注意義務)違反を検討することなどにより、妥当な解決が図り得ることなどを考慮してのことと思われます。

関連事項:過労死


過失相殺

被災者側に過失があり、過失相殺(民法第418条、第722条2項)がなされる場合、過失相殺を行った後で労災保険給付の控除を行うか、あるいはこれと逆に、労災保険給付の控除を行った後で過失相殺を行うかによって被災者側の受け取る賠償額に差が出ます。

最高裁は、損害賠償額の算定に当たって、その残額から過失相殺による減額をした上で、その残額から保険給付の額を控除する方法を妥当としています。(高田建設従業員事件 最高裁 平成1.4.11)


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