強制執行の準備

必要な書類

まず、債務名義の基礎となる公文書(債務名義・執行名義)を用意します。
債務名儀には次のようなものがあります。

  1. 確定判決、仮執行宣言付判決
  2. 仮執行宣言付支払命令
  3. 執行判決
  4. 和解調書
  5. 調停調書
  6. 金銭支払いを内容とする執行認諾文言付の公正証書など

その他、送達証明書(判決を出した裁判所からもらう)、会社の商業登記簿謄本(その後、所在地・代表者が変更していないか確認するため)が必要です。


先取特権の実行としての強制執行

賃金債権の先取特権(民法306条2項、308条)として、財産の本差押えができます。

この先取特権の実行としての強制執行には、次のような特徴があります。

(1) 債務名義(支払命令や判決など)を得なくてもできる強制執行である
(2) 仮差押えのような保全処分と異なり、終局的な債権回収である
(3) 仮差押えのように保証金を要しない
(4) 他の一般債権(優先権のない債権)と差押えが競合した場合に、優先的に配当を受けられる

先取特権に基づく差押えを申し立てるに際しては、「担保権の存在を証する文書」(先取特権の証明文書)を裁判所に提出することが必要です。(民事執行法181条1項4号、193条)

仮差押えの場合に比べて、労働債権の存在についてより厳格な疎明が求められます。

(資料の例)

  • 過去の給与明細書、給与辞令
  • 賃金台帳
  • 未払賃金等労働債権確認書
  • 離職票
  • 賃金規程、賃金に関する労働協約
  • 労働契約書
  • 労働者名簿、社員住所録
  • 健康保険・厚生年金被保険者資格喪失確認通知書、源泉徴収票

また、先取特権に基づく差押命令は、仮差押命令よりは日にちがかかり、早くても3~4日かかるのが実情です。

したがって、緊急を要する場合は、とりあえず仮差押えの申立をしておく必要があります。


何を強制執行するのか

差し押さえる物を特定します。

何を差し押さえるかは、差し押さえる側が調査し、決めなければなりません。
対象となる財産により申立先、収入印紙や切手の額、別途の手続費用予納の有無などが異なります。

なお、分かっている財産に対する強制執行を実施しても、全額の支払いを受けられないときなど、一定の条件を満たせば、財産開示手続(相手方に財産の有無、所在等を申告させる手続)の申立てをすることができます(詳細は地方裁判所に問い合わせてください)。

債権執行
金銭債権(銀行預金、会社の取引先に対する売掛債権など)では、目的物を特定する必要があります。
銀行預金の場合、銀行による相殺が優先されます。あらかじめ借入金のない(少ない)銀行はどこか、特定しておきます。
売掛金の場合、どのような契約内容か、確実に回収できるのかどうか調査します。
契約書や請求書の写しを確認します。相手先企業が倒産することがないともいえません。
動産執行
動産執行では、目的物の特定の必要はありません。
しかし、会社の財産なのかどうか、確認が必要です。リース物件であったり、委託販売の商品であったりすると、執行できません。
会社の購入備品であっても、代金を支払っていないこともあります。
不動産施行
会社の財産なのかどうか、不動産登記簿で確認します。他に抵当権がついていると、それが優先されます。
なお、保全執行の利用(財産隠匿、第三者譲渡、第三者執行の事前対策)という方法もあります。

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