仮差押え

取り敢えず資産を保全する

債権取立の手続きは、本裁判の提起→証拠調べ→判決→判決確定→強制執行(差押え・競売)の順で進み、強制執行をするまでに、どうしても時間がかかります。

したがって、そのまま放置しておくと、財産を処分されたり、隠匿される可能性があります。

そこで、本裁判を起こす前に、あらかじめ財産を差し押さえて、財産の処分を防ぐことが可能です。

手続は、仮差押命令申請書を作成することから始まります。

秘密裏に行うため、申請書は自分用と裁判所用の2通だけ用意し、相手方には送付しません。

申請書は訴状の様式に準じます。

仮差押えの申立を行うに際しては、被保全債権(債権者の債務者に対する金銭債権の存在)および保全の必要性(本案訴訟を提起して判決を待っていたのでは強制執行をすることができなくなる、または著しい困難を生ずるおそれがあること)を疎明する必要があり、これを裏付ける資料(疎明資料)を提出することになります。


仮差押えの手順

書面による証拠をつけた申請書類を裁判所に提出すると、裁判所は書面審査だけで、一定額の保証金を積むことを条件に仮差押え決定をします。

(1) 仮に差押えようとする財産を明示(金銭の場合は、遅延利息も忘れずに請求するようにします)
(2) 保全されるべき債権者の権利と保全の必要性を記載した仮差押申請書を作成
(3) (2)の事実を疎明(証明より簡単で良い)する資料を添付する
(4) 印紙を貼付する
(5) 本訴(債権回収訴訟)を管轄する裁判所か、仮差押えをする財産の所在地の裁判所へ申請書を提出する

普通は、その日のうちに裁判官との面接があり、細かい事情を説明することになります。

この仮差押えは、不動産、売掛金、有体動産(商品、機械など)の全てについて実施できます。

その上で、本裁判を提起し、判決が出された後、正式に差押え競売することになります。

ただし、同じ債権に対して他の債権者が差押えをしたため、第三債務者が供託をした場合、先取特権があっても優先的に弁済されない可能性があります。

したがって、債権の仮差押えの申立をする場合でも、併せて一般先取特権を行使するための差押えを早急に申し立てるよう努力すべきです。


仮差押えの申請先

訴訟が係属している裁判所、または仮差押えの目的物の所在地を管轄する裁判所です。

債権の場合は第三者債務者(会社の持っている債権の債務者)の所在地を管轄する裁判所です。

債権額が140万円以下ならば簡易裁判所、140万円超ならば地方裁判所となります。


不動産に担保権が設定されている場合

不動産に担保権が設定されていても、これを仮差押えしておけば、仮差押債権者の同意が無いと、事実上、売却などの処分ができなくなります。

このことから、仮差押えの取り下げと引き替えに、売却代金から一定額の回収を図れる可能性もあります。


弁護士に金員を預けた場合

債務者である会社が、依頼した弁護士や債権者委員会によって任意整理手続を進めて、債権者への支払いを行う場合があります。

このようなケースでも、債権の保全に不安がある場合は、会社資産(預金、売掛金、賃料債権、不動産など)の差押えや仮差押えなどの法的手続きを迅速に行う必要があります。


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