裁判手続

裁判所での手続にはどういうものがあるか

民事調停

管轄は簡易裁判所です。

裁判所を通した話し合いの手続きです。
「調停申立書」を出すと、担当の調停委員や裁判官が双方の言い分を聞いて、合意点が得られるように調整の努力をしてくれます。
呼び出しを受けながら理由無く出頭しない場合は、5万円以下の過料を命じることができます。(民事調停法第34条)

必要なもの:申立書、証拠等の書類、手数料等の収入印紙等

調停は、法廷ではなくて調停室で申立人と相手方が交互に調停委員に話を聞いてもらうことになります。
調停委員は、一般市民の中から選ばれ、裁判官とともに調停委員会メンバーとなります。

費用は訴訟に比べると安く、例えば10万円の貸金返済を求める調停の手数料なら500円で済みます(代理人を立てればその料金は必要)。

調停の成立を不能または著しく困難にする行為は禁止されており、現状の変更または物の処分の禁止などの措置、及びそれに従わない者に対する制裁も可能となっています。(民事調停法第12条、35条)

そして調停委員の人が当事者双方の折り合いがつきそうな調停案(和解案)を提示し、場合によっては当事者を説得し、当事者双方がその調停案でいいということになったら調停調書という書面にしてくれます。

本人だけでもやりやすい手続きです。言い分を全部書面に書かなくても、多くは口頭でのやりとりで手続きが進められます。

もちろん、裁判所に行く場合には証拠となる記録の類は持って行くことをお薦めします。
合意ができれば「調停調書」が作られ、そこで決まったことは確定判決と同じ強制力があります。
しかし、合意に達しない場合は、調停不調として手続きは打ち切られ、裁判所から相手方に何も命じてもらえません。

特定調停

債務者と債権者の双方にとって経済的合理性がある場合で、法律違反などもない場合、特定調停という制度があります。「このままでは支払えない。だが、条件面で譲歩してくれれば、払いたいと考えている。」といった状況で利用する調停制度です。

例えば、個人の場合、借金返済をしたいが、このままでは無理なので、返済額や返済期限について条件調整してほしいという調停に活用されます。

事業主の場合は、資金繰りの切迫から返済困難のため、相手方の譲歩がないと返済自体不可能となってしまうというというケースでの調停などが該当します。

調停の結果に従わないと、強制執行を受けることもあります。

通常訴訟

管轄は、請求額が140万円以下の場合は簡易裁所、140万円を超える請求や解雇・配転などの効力を争う場合は地方裁判所です(事件によっては例外があります)。

必要なもの:訴状、証拠等の書類、手数料等の収入印紙等。
なお、裁判所には定型の起訴用紙や定型の答弁書用紙が備え付けられています。

訴訟とは「訴状」を提出して判決を求める手続きです。
訴えを起こされた側が、呼出状に記載された期日に裁判所に行かないと、訴えを起こした人の言い分の通りの判決が出ることがあります。

ただ、実際は判決になる以前に和解の試みがなされることが多く、現に判決までいく事件はそう多くないのが実状です。
裁判所の仲介により和解勧告が行われ、事案の解決が図れれることも少なくありません。(民事訴訟法89条)

原則として、言い分は全部書面にして提出し、証拠も提出方法の約束事があるなどの形式が要求されますから、 本人ではやりにくい場合が多いです。
ただ、簡易裁判所での事件や内容が簡単な場合は、本人だけでも困難ではありません。
解雇等身分関係を争う場合や、請求が高額な場合、内容が複雑な場合は、弁護士に依頼した方がよいでしょう。

まず、証人尋問が行われますが、最初に申請をした側の弁護士が主尋問を行い、次に相手方の弁護士が反対尋問をして、最後に聞き足りないと思っている点があれば、裁判官自らが尋問するという順序で行われます。
集中証拠調べ方式により、1日に複数の証人の尋問が行われることもあります。

和解で解決できない場合には、証拠書類、証言などに基づいて、判決というかたちで何らかの結論が出されます。
相手方が判決に従わない場合は、強制執行ができます。
決着がつくまでに時間がかかる場合があります。

少額訴訟

60万円以下の金銭支払い請求について、簡易裁判所で、原則として1回だけの審理で結論(和解または判決)を出してしまう制度です。

必要なもの:訴状、証拠等の書類、手数料等の収入印紙等
必要な書式は簡易裁判所に置いてあります。

何回も裁判所に足を運ばずにすむ、誰にでもできる、という利用しやすさに配慮したもので、訴状の書式も裁判所に用意されています。

また、判決では分割払いなどを命ずることもできることになっています。
この制度を上手に利用するには、その1回しかない審理の前に証拠書類を整えておく、聞いてほしい証人は当日裁判所に連れて行くなど、 事前の準備が大切です。

通常訴訟同様の入念な準備が必要だと考えた方が間違いがありません。

支払督促

金銭の支払いだけを求める場合に利用できる手続きで、管轄は簡易裁判所です。

必要なもの:申立書、証拠等の書類、手数料等の収入印紙等

「支払督促申立書」に必要事項を書いて提出すれば、裁判所は申立人(債権者)の言い分だけで、とりあえず支払督促を出してくれます。
これに対して相手方(債務者)から異議が出なければ、その支払督促は確定判決と同じ強制力を持ちます。

しかし、相手方から異議が出された場合、本訴手続きに移行します。
支払督促を出してもらうまでは、本人でも十分できますが、本訴に移行すると本人ではやりにくい場合があるのは、前述のとおりです。

請求金額を相手方が争ってこないと思われるような場合に使うことが多い手続きです。

仮処分

急迫した状態を暫定的に解消するために用意された手続きで、労働事件では、解雇配置転換などを急いで争う場合や、 ひどい退職強要をやめさせようとする場合に使われます。

暫定的な決定ですが、本訴よりはるかに短い期間で結論が出されること、仮処分手続きの中で和解が成立し紛争が終結する場合も多いことなど、メリットの多い手続きです。

原則として、弁護士に依頼しないと困難でしょう。

仮差押え

未払い賃金など、金銭支払いを求める場合に時間をかけて本訴や調停をやっているうちに、相手方の財産が散逸してしまって、 支払い能力がなくなってしまうおそれがある場合、例えば、使用者の不動産や賃貸保証金などを他に処分できないように暫定的に差し押さえておく手続きです。

これも本人ではなかなか困難でしょう。また、原則として、請求額や押さえる財産に応じた保証金を積まないと、 仮差押決定を出してもらえません。


ケース別訴訟の仕方

解雇された場合
「地位保全」「賃金仮払い」の仮処分を申し立てることができます。
解決金の支払いや退職金の上乗せを条件とした退職というかたちで解決するケースもあります。
配転命令
「配転命令の効力を一時的に停止する」仮処分を申し立てます。配転の不当性を証明する資料を念入りに集めることが必要です。
執拗な退職勧奨を受けた場合
度重なる退職勧奨にストップをかけたい場合は、「会社は退職勧奨をしてはならない」という仮処分を申し立てます。
いつ・誰から・どのように退職勧奨を受けたか、事実を詳しくメモしておくこと。
退職勧奨、配転、解雇、いじめなど本裁判では、その効力を争うと同時に、損害賠償を求めることもできます。
未払賃金・退職金の支払いを請求する場合
簡易裁判所に「支払命令」の申し立てをします。
初めから本裁判に移ることがはっきりしている場合は、まず「仮差押」という方法により、会社の財産を処分できないようにしておきます。
その後、判決が出るか和解が成立したら取り立てるという流れです。

申立書類

  • 調停→調停申立書
  • 本訴→訴状(正本と被告数と同数の副本を提出)
  • 支払督促→支払督促申立書
  • 仮処分→仮処分命令申立書
  • 仮差押→仮差押命令申立書
  • 会社登記簿謄本
    相手が会社のときは、その代表者を明らかにするために必要。管轄の法務局で入手します。
  • 委任状
    弁護士に依頼した場合、必要です。

期間はどの位かかるか

調停の場合、1ヶ月に1回位のペースで調停期日が持たれ、事案によりますが、半年位が一つの目安でしょう。

本訴の場合、判決までいくと第1審だけで数年かかると考えた方がよいですが、途中で和解によりもっと早く解決することも少なくありません。また、最近訴訟の迅速化も図られつつあります。

支払督促は、相手方から異議が出なければ1ヶ月程度で終わりますが、異議が出されると本訴に移行することになり、時間がかかります。

労働事件の仮処分は数ヶ月かかることが多いのが実状ですが、本訴より頻繁に期日が持たれ、迅速な結論が得られます。

裁判にかかる時間

裁判にかかる時間は、その事件によってさまざまで、一概には言えませんが、平成15年の司法統計による平均期間は、民事裁判では、地方裁判所で8.2か月、簡易裁判所で2.0か月、刑事裁判では、地方裁判所で3.2か月、簡易裁判所で2.3か月となっています。

(最高裁のパンフレットより)


費用の目安はどの位か

裁判所の手数料
申立書類に収入印紙を貼って納めます。金額は請求額や本訴、調停など手続きの方法によって、細かく決められています。例えば、30万円の支払督促は1,500円、200万円の本訴は15,600円といった具合です。
予納郵便切手代
裁判所から相手方に書類を送るときの切手代数千円分を予め納めます。切手の種類・金額は裁判所に確認します。
弁護士費用
弁護士費用は最初に払う着手金、実費、事件解決後に払う報酬の大きく分けられます。
金額は請求額などによって基準が決められていますが、例えば、数百万円を本訴で請求する場合、着手金が請求額の5~8%位、報酬金が得られた利益の10~16%位です。
詳しいことは、相談する弁護士や弁護士会などに問い合わせてください。
なお、弁護士費用は勝っても負けても自分持ちという原則です。
また、費用が払えない場合は法律扶助協会で着手金、実費などを当面立て替えてくれる制度もあります。

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