被保険者資格の取得・喪失


社会保険の資格喪失手続きは、原則として健康保険と厚生年金保険を一緒に行います。


被保険者資格の取得日(健康保険への加入)

適用事業所に使用されることになった日、臨時に使用されていたため適用除外となっていた者が常用雇用となった日、もしくは一定の期間を超えて引き続き雇用されることになった日など。

事業主は事実のあった日から5日以内に、日本年金機構または健康保険組合に「被保険者資格取得届」を提出します。

この時、被扶養者がいる方は、「被扶養者(異動)届」を併せて提出します。


被保険者資格の喪失日

退職・死亡した場合

適用事業所に使用されなくなった日の翌日、死亡した日の翌日に被保険者資格を喪失します。

退職に当たっては、資格喪失後でも給付が受けられる保険給付がありますので、手続き等を忘れずに行うことが大切です。

事業主は、健康保険被保険者証を添付して、被保険者資格喪失届を退職した日の翌日から起算して5日以内に日本年金機構または健康保険組合に提出します。

労働者は、健康保険被保険者証を会社を経由して保険者に返還することになりますが、労働者が被保険者証の返還を拒んでも、健康保険被保険者証添付不能届を添付して被保険者資格喪失届をすれば、届け出は受理されます。

転勤した場合

これに対して、転勤で資格を喪失した場合は、資格喪失月日と資格取得月日を同じ日付にしなければなりません。

例えば、9月30日付けで転勤の場合、転勤前事業所で提出する資格喪失届の喪失日を退職の場合と同じようにその翌日とすると10月1日となり、9月分の保険料がかかります。

一方の転勤先事業所での資格取得は、が9月30日となりますから、9月分の保険料が重複して徴収される恐れが生ずるのです。


その他の手続き

被保険者資格の得喪以外でも、次のような場合には事業主を通じて保険者に届け出ることが必要です。

  • 紛失などで、被保険者証の再発行が必要になったとき
  • 被扶養者に異動(出生、就職、結婚など)が生じたとき
  • 被保険者の氏名が変わったとき
  • 被保険者とその被扶養者が遠隔地に住むとき

病気休職と被保険者資格

単なる欠勤などで給料が支払われないからといって、資格を喪失させることはできません。

しかし、長期間休職の状態にあって無給が長く続き、職場への復帰も見込めない場合は、事実上使用関係がないものとして、資格を喪失することとなります。

資格喪失までの期間は、給料の支給がなくとも、事業主には当然保険料の納付義務があります。

その負担については、事業主と被保険者の双方で相談して決めなくてはなりません。


保険証を持たずに医療を受けたとき

保険診療は、健康保険の医療機関の窓口に保険証を提示して受けます。

しかし、やむを得ない事情で保険証を提示できなかった場合は、掛かった費用を一時立て替え払いしておいて、後で健康保険に請求して払い戻しを受けることができます。

具体的には、旅先で保険証を持っていなかった、就職直後で保険証をまだ受け取っていなかったなどの場合が該当します。

※2021年10月よりマイナンバーカードを保険証として登録する手続きを行えば、マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようになりました。(マイナンバーカードの健康保険証利用に対応する医療機関に限る)


被保険者証をなくしたとき

事業主は、管轄の日本年金機構に「健康保険被保険者証再発行交付申請書」を提出します。


事業主が日本年金機構への届け出を忘れていた

被保険者が健康保険の資格を取得するのは、適用事業所に使用された日となりますから、届け出を忘れていて、その間保険を利用していなかったとしても、事実上の使用関係が生じた日にさかのぼって資格取得届を提出することになります。

この間、被保険者としないことはできません。

健康保険および厚生年金保険の保険料を源泉徴収できるのは、前月分だけであり(月末退職のときは前月分と当月分)、事業主が数ヶ月分を控除することはできません。(健康保険法第167条、厚生年金保険法第84条)

しかし、労働者としても被保険者の保険料に関し、事業主に対して債務を負うことになるので、その支払い方法を労使で話し合うことが必要です。


事業主が健康保険料を滞納している場合

事業主が健康保険料を滞納していても、保険料の納付は事業主の責任であるので、労働者(被保険者および被扶養者)の保険給付(保険診療や現金給付)は受けられます。


遡及した場合の保険料

事業主は、被保険者に支払う報酬から保険料を控除することが認められていますが、この場合、源泉控除できるのは、前月分に限られています。

したがって、被保険者資格の遡及適用によって事業主が数ヶ月分の保険料を納付しなければならない場合であっても、それを報酬から控除することはできません。

この取り扱いについては、事業主と被保険者が話し合いで決めることになります。


保険給付を受ける権利の消滅時効

保険給付を受ける権利の消滅時効は、2年です。起算日は以下の通りです。

(1) 療養費 療養に要した費用を支払った日の翌日
(2) 傷病手当金 労務不能であった日ごとにその翌日
(3) 出産手当金 労務に服さなかった日ごとにその翌日
(4) 出産育児一時金 出産した日の翌日
(5) 埋葬料 死亡した日の翌日
(6) 埋葬費 埋葬を行った日の翌日
(7) 移送費 移送に要した費用を支払った日の翌日
(8) 高額療養費 診察日の属する月の翌月1日

関係書類の保存期間

健康保険法関係の書類の保存期間は、2年間です。


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