裁判例

「会社都合退職」と認めた例

クレジット債権管理管理組合事件(福岡地裁 平成2.2.13)

事実無根の横領行為への関与を疑われ、違法な業務命令(自宅待機、福岡から東京への配転命令)を受けた労働者が退職届を提出したケースで、退職届を出したのは、一連の違法行為によるものであり、やむを得ない業務上の都合による解雇と同視すべきとし、会社都合の退職金の支払いを命じた。

黒田病院事件(東京地裁 平成6.3.7)

事実無根の不正行為の疑いをかけられるなどして退職願を提出して退職したケースで、当該労働者は病院側の一連の不法行為により退職を余儀なくされたものであるから、「病院の都合による解雇」に準ずるものとして、会社(病院)都合の乗率による退職金の支払いを命じた。

なお、判決は退職願の「一身上の都合」という記載は、いわば決まり文句であるから、この記載をもって自己都合退職と扱うことはできないとしている。

ペンション経営研究所事件(東京地裁 平成9.8.26)

賃金不払いを理由に、労働者が労働契約の解除を申し入れたケースで、やむを得ない業務上の都合による解雇の場合に準じ、会社都合退職の退職金の支払いを命じた。

エフピコ事件(水戸地裁下妻支部 平成11.6.15)

茨城県から広島県福山市への転勤を拒否した労働者が会社の用紙で自己都合を理由とする退職届を提出したケースで、会社が転勤の理由を明らかにせず、転勤に応じない場合には自己都合で退職するように強く求め、当該労働者に転勤に応ずる義務があるように誤信させた場合には会社都合退職となるとし、会社都合退職金の支払いを命じた。

データベース事件(東京地裁 平成11.9.30)

地域限定採用の労働者が一身上の都合と記載した退職届を提出して退職したケースで、業務委託契約の終了によって会社が事業所を廃止することを決め、勤務場所がなくなったにもかかわらず、会社側から別の勤務場所の提案もなく、労働者が他の部署への異動も困難であるという事情がある場合は、会社都合退職となるとし、会社都合退職金の支払いを命じた。


会社都合退職を否定した例

株式会社ニチマ事件(東京地裁 平成9.3.21)

賃金の遅配欠配を理由として退職したケースで、「やむを得ない業務上の都合による解雇」の場合に準じて退職金が支払われるべきであるとの主張に対して、解雇されたものでないから、上記場合に準ずるものとは認められないとして自己都合の乗率による退職金のみを認めた例。


ページの先頭へ