年金制度廃止問題

容易に廃止・減額できない

経済不況によって経営が悪化したため、企業が退職金や企業年金を減額ないし廃止するケースが生じています。

松下電器産業(年金減額)事件 大津地裁 平成16.12.6

退職した従業員らが、会社が私的に運営する福祉年金制度においてなされた年金支給額の減額は、上記各年金契約に違反し、無効であるとして、会社に対して、上記各年金契約に基づき、減額前の年金額との差額を求めた。

裁判所は、本件年金制度について、給付を一律2%引き下げる相当性があったと認められる改訂は適法であるとした。

風月堂事件 大阪地裁 平成15.5.23

被告が従業員の退職金の資金源とするために、保険料を全額負担した企業年金を解約して受領した金員を原告に支払うべき義務はない。

自社年金の場合は、退職一時金の減額の場合と同様に、「就業規則の不利益変更」として取り扱われることになります。

テザック厚生年金基金事件 大阪高裁 平成17.5.20

厚生年金基金の加入員らが、会社退職の際に老齢年金のうち加算年金つき年金で受け取るとの選択をしていたところ、基金の解散により、一時金を選択した者ようり少ない支給額となったため、基金及びその理事らに対し、加算年金受給権に基づく基金の財産の精算及び優先的な残余財産の分配を求めた。

裁判所は、基金が解散した場合、本件のような事態も、自由な選択の結果であるというべきであり、加算年金受給権者が優先的な残余財産分配を請求し得る権利を有する法的根拠は認められない、とした。

ボーセイキャプティブ事件 東京地裁 平成15.9.9

本件企業年金保険契約は、その契約上、解約時の返戻金は、解約後に引き続き勤務する場合であっても、被保険者である従業員が受け取るものとされており、適法に取得したものであるから、不当利得にも不法行為にも該当せず、これを返還しなかったことを理由とする懲戒解雇は無効。

幸福銀行(年金打切り)事件 大阪地裁 平成12.12.20

勤続20年以上の退職者が満60歳に達したときには終身年金が支給されるという規程があった。同規程の付則には「経済情勢または銀行の都合等によりこの規定を改訂することがある」旨の条項が置かれていた。

その後、業績悪化により銀行は事実上経営破綻した。

こうした経過から、退職年金受給者に対し、退職年金の解約と一時金(年金の3ヶ月相当)の支払いが通知された。これを違法無効として、退職した元従業員らが提訴した。

裁判所は、この退職年金制度について、賃金の後払い的性格は希薄で功労報償的であるとしつつも、「労働に対する対償、すなわち労度基準法第11条にいう賃金としての性格が全く否定されるものではない」と判断。

銀行が改訂できるのは在職者に対する権限であって、退職者がすでに取得した退職年金受給権を個別に解約する権利を留保したものではない。3ヶ月分の支払いをもってしても、代償となるとは認められない、とした。

なお、改訂時に年金受給資格を満たしていない者の訴えについては、請求の理由はない、として棄却された。


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