早期退職優遇制度について

早期退職優遇制度=選択定年制

早期退職優遇制度とは、定年前に自らの意思で退職する者を退職金支給等の面で優遇する人事制度です。

退職時を本人の選択にゆだねるという意味で「選択定年制」と呼ばれることもあります。


適用対象者の選定

次の基準によることが一般的です。

(1) 一定年齢以上の者とする(例えば50歳以上)
(2) 年齢が一定の範囲の者とする(例えば53歳以上58歳以下)
(3) 特定年齢の者に限る(例えば、50歳、55歳の者のみ)

勤続年数については、「10年以上」「15年以上」などの条件を付けます。


退職金の優遇方法

退職金の優遇方法には、次のような方法があります。

(1) 会社都合退職の場合の支給率を使用して退職金を算出する。
(2) 60歳定年まで勤続した場合に適用される支給率を使用して退職金を算出する。
(例:50歳で退職する場合であっても、その社員が60歳まで勤続したものとみなし、60歳退職に相当する支給率を用いて退職金を算出)
(3) 退職金の一定パーセントに相当する額を上積み支給する。
(例:退職金の30%相当額を上積み支給)
(4) 退職時の年齢区分に応じて、退職金を一定のパーセントに相当する額を上積み支給する。
(例:退職時の年齢50~52歳=退職金の30%相当額、53~55歳=20%相当額、56~58歳=10%相当額を上積み支給)
(5) 一定額を特別加算する。
(例:全員に300万円を特別加算)
(6) 退職時の年齢区分に応じて、一定額を特別加算する。
(例:職時の年齢50~52歳=300万円、53~55歳=200万円、56~58歳=100万円を加算)

日本オラクル事件 東京高裁 平成16.3.17

本件早期退職金制度の不適用につき、不適用通知後に退職した者による割増退職金請求を棄却した一審判決に対する控訴が棄却された。

従業員からの応募が本件制度適用による解約合意に向けての申込みで、被告会社がこれに対して承認するのが承諾となるところ、原・被告間には解約合意が成立しているとは解されない。

大和銀行事件 大阪地裁 平成12.5.12

会社から従業員に対する早期転職支援制度の募集の通達は、申し込みの誘引にすぎず、その適用にあたって会社の承諾を要件とすることは公序良俗に反しない。

住友金属工業(退職金)事件 大阪地裁 平成12.4.19

退職優遇制度を実施したが、その際に、退職済みだった従業員や対象職場にいなかったため加算金が支給されなかった従業員が、同額(定年までの1年につき50万円)の加算金支給を求めた。

裁判所は、画一的な処理は必要ないとして、労働者側の訴えを退けた。

津田鋼材事件 大阪地裁 平成11.12.24

早期退職の募集は、退職の申込みではなく、あくまでの「誘引」である。労働者が応募することで退職の効果が自動的に生じるものではない、とされた。

大阪府国民健康保険団体連合会事件 大阪地裁 平成10.7.24

早期退職制度の導入前に退職した場合でも、制度が適用されていれば得ていたはずの額と、実際の退職金額との差額の請求は認められない。

イーストマン・コダック・アジア・パシフィック事件 東京地裁 平成8.12.20

労働者は早期退職優遇制度が近々設置される予定であることを知らされずに退職した場合、会社には、そのような制度が設置されることを、退職する労働者に知らせる義務はなく、早期退職付加金に相当する金額の損害賠償請求は認められない。

長崎屋事件 前橋地裁桐生支部 平成8.5.29

会社がより有利な優遇制度を設けたからといって、会社に差額金(損害賠償)責任はない。

下関商業高校事件 最高裁 昭和55.7.10

市教育委員会Aは、第一審原告の男性教諭Xらに対して、退職勧奨の基準年齢である57歳になったことを理由に、2~3年にわたり退職を勧めてきたが、両者とも応じなかった。

この間、所属校の校長やAらが、Xらに退職を強く勧め始め、3~4ヶ月の間に、11~13回にわたりAへ出頭を命じ、20分から長いときは2時間にもおよぶ退職勧奨を行った。

その際Aは、退職勧奨を受け入れない限り、Xらが所属する組合の要求に応じない、提出物を要求する、配転をほのめかすなどした。

そこでXらは、これら一連の行為は違法であり、精神的苦痛を受けたなどとして、市Y1、同市教育長および次長Y2らに対して、各自50万円の損害賠償の支払を求めて訴えを起こした。

一審、二審ともXらの請求を認めたところ(ただしY2らに対する請求は棄却されている)、Y1が上告した。

判決:労働者側勝訴。二審の判決が受け入れられて、Xらの請求が認められた(賠償額は、X1について4万円、X2について5万円の計9万円)

Aの行った退職勧奨は、多数回かつ長期にわたる執拗なものであり、退職の勧めとして許される限界を超えている。

この事件の退職勧奨は、従来の取り扱いと異なり、年度を超えて行われ、また、Xらが退職するまで続けると述べられており、勧奨が際限なく続くのではないかとの心理的圧迫をXらに加えたものであって、許されない。

Xらが勧奨に応じないならば、組合の要求に応じない、提出物を要求する、配転をほのめかすなどしたことを考えると、Xらは退職勧奨によりその精神的自由を侵害され、また、耐えうる限度を超えて名誉感情を傷つけられ、さらには家庭生活を乱されるなど、相当な精神的苦痛を受けたと容易に考えられる。

よって、この事件における退職の勧めは違法であり、Y1は、Xらが被った損害倍賞の責任を負う。


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