雇用期間の定めのある場合の退職について

労働契約期間

有期労働契約は、その期間の長さについて次のように定められています。

  • 原則は上限3年
  • 高度の専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約については上限5年
  • 満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約については上限5年
  • 一定の事業の完了に必要な期間を定める労働契約(有期の建設工事等)についてはその期間

有期契約は、原則として途中解約できない

期間の定めのある労働契約、いわゆる有期契約の場合は、原則として途中解約(退職、解雇)できません。

個人対企業であっても、契約は契約です。それが法律を超える取り決めとなります。

これに対抗しうるのは、権利濫用と公序良俗違反のみです。


期間をもって報酬が定められている場合

  1. 原則:今の契約期間は途中解約できないし、解約する場合も、契約期間の前半に、契約打ち切りを予告する必要があります。(民法第627条第2項)
    労働者が解約したい場合は、企業にお願いして、途中解約させてもらうことになるでしょう。
  2. 契約期間が6ヶ月以上の場合、3ヶ月前に予告する必要があります。(同条第3項)
    ただし、自動更新規定がなければ、期間満了と同時に、契約は切れることになるでしょう。

やむを得ない理由がある場合

やむを得ない理由があれば、即時に雇用契約を終了させることもできます。(民法第628条

理由なしでも契約解除はできるのですが、事由が当事者の一方の過失によって生じたときは、相手方に対して損害賠償の責任を負うとされています。

したがって、どちらが「やむを得ない」理由の原因となっているかがポイントです。

もしも、企業に当初の約束と違う点があれば、労働者側から約束を守ってもらうよう催告され、それが是正されないようなら、労働者側が雇用解約した場合でも、相応の合理性が認められる可能性が高まります。

期間の定めのある雇用契約が、期間満了後も双方の異議なく事実上継続された場合は、前契約と同一の条件で更新されますが(黙示の更新)、この場合は2週間の予告期間をおけばいつでも辞められます。(民法第629条1項、民法第627条

契約の中に、「双方から申し出がない場合、1年間の自動更新とする」など、自動更新規定があれば、あらためて1年契約を結んだことになりますから、注意が必要です。


中途解約の特約

有期雇用の場合、「やむを得ない事由」がなければ途中解約できないとされますが、労使双方の合意に基づく契約書中で、「いずれか一方の申し出により期間途中でも解除できる」という条項を設けることができます。

では、途中解約できないという民法の規定と、契約書による中途解約の規定は、いずれが優先されるのでしょうか。

民法は第627条で「途中解約はダメ」とし、第628条によって「やむを得ないならできる」と、これを緩和する規定となっています。

この第628条の規定を、契約期間内について当事者が過度に拘束されることを回避するために設けられたものだと解釈するならば、「中途解約の特約」もこれに近いものといえます。

この中途解約の特約が、限定的であり、明確な条件を定めている限りでは有効と考えられます。

逆に、「いつでも、どんな理由でも30日前に予告すれば解約できる」という決め方では、そもそもの契約期間の意味がなくなりますから、有効とは解されなくなります。

また、労働者側については、期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第14条第1項各号[契約の期間を5年とすることができる労働契約]に規定する労働者を除く。)は、当分の間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる、と定められています。


事実上更新したとき

期間の定めのある雇用契約が期間満了後も事実上継続された場合は、前契約と同一条件で更新されたものと推定されますが(民法第629条)、この場合は、労働者は期間の定めのない契約と同様に、一方的解約(民法第627条)ができます(民法第629条)ので注意が必要です。

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