退職強要の判断について

退職強要の判断の基準

退職勧奨が執拗に繰り返され、労働者の自由な意思決定を妨げるような場合には、退職勧奨は違法な退職勧奨(退職強要)として退職勧奨(退職強要)自体が不法行為となり、損害賠償の対象となります。

また、こうした違法な退職勧奨(退職強要)により、労働者が退職届を提出した場合には、強迫による意思表示として取り消される場合や、事実上の解雇として争われる可能性もあります。

強要かどうかの具体的な判断の基準は以下の通りです。

(1) 勧奨の回数・期間は、退職を求める事情の説明や優遇措置などの退職条件の交渉に通常必要な限度にとどめているか 。
退職勧奨を利用として、無理矢理出頭させていないか。
(2) 勧奨の際の言動は、被勧奨者の名誉感情を害することのないように配慮しているか 。立会人はいたか。
(3) 勧奨者の数、優遇措置の有無などを総合的に勘案し、全体として被勧奨者の自由な意思決定がさまたげられる状況ではないか。

なお、勧奨のやり方が不法かどうかと、その退職の合意が有効か無効かは、それぞれ独立した問題だという判断も成り立ちます。

したがって、本人の真意によって退職願を出したと認められれば、任意退職として有効とされることもあります。

播磨造船事件 神戸地裁龍野支部 昭和38.9.19

任意退職の勧告が仮に不法な企図ないし誤った認定に基づくものであるならば、不服な被勧告者は、これに応じなければよいのであり、一旦これに応じて退職願が提出された以上、その提出が承諾となり、又は、承諾期間経過後の故にあらたな申込とみなされて、承諾が与えられ、雇傭契約の合意解約が成立し得ることは、当然であって、反対に解すべきゆえんを知らない。

そして、その合意解約が有効か無効かは、別に考察すべき問題であり、任意退職の勧告の不当性が、必然的に合意解約の無効を来たすものではない。

むしろ、任意の退職願提出は、合意解約に伴う不利益の受忍とみるべきであって、勧告の不法性を拭い去るものと解すべきである。


退職強要を目的とした研修

実質的に転任処分である長期の研修は、職務命令とは認められない場合があります。

また、研修の必要性がないことが明らかな場合や、研修の目的に照らして実施内容が著しく不相応な場合には、裁量権の逸脱ないし濫用に当たるとされることになります。


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