退職と損害賠償

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退職と損害賠償


実際の損害額を立証するのは容易ではない

労働基準法第16条は、「契約不履行についての違約金」「損害賠償額を予定する契約」を禁止しています。

違約金

労働契約の期間内に退職する等の労働契約の不履行について、損害発生の有無にかかわらず使用者が取り立てる一定の金額

損害賠償の予定

契約の不履行について、賠償すべき損害額の実害のいかんにかかわらず一定の損害賠償の金額を定めておくこと。

労働者の退職の時期と手続き如何によっては、使用者に損害が発生する場合もないとはいえません。

上記の労働法の規定は、「損害賠償額を予定する契約」を禁止するのであり、現実に生じた損害を請求することは差し支えないことになり、この場合、使用者は労働者に対して損害賠償の請求を行うことができます(民法415条民法628条)。

しかし、損害賠償債権と賃金支払い債務を相殺することは許されず(労働基準法24条)、賃金は賃金として労働者に支払われなければなりません。


急に辞めた労働者の代替確保のための求人募集の費用は請求できるか?

労働者が突然退職したときに、使用者は突然の退職によって被ったとする損害賠償債権と賃金支払い義務との相殺を主張し、退職前の1ヶ月分の賃金などの支払いを拒むことが多いのが実態です。

関連事項:賃金未払いのトラブル

心情的な問題はあるにせよ、損害賠償を請求するために必要な退職と損害の発生との因果関係、損害賠償の範囲などの裁判上主張、立証が極めて困難です。

求人募集をするか否か、またどのような方法でするかは、経営上の問題です。

たとえ急に退職したからといって、その費用をすべて労働者が負担すべきいわれはありません。

使用者が費用を負担することは当然です。

日本ポラロイド事件 東京地裁 平成15.3.31

ヘッドハンティングした従業員に対し、1年以内に退職した場合は全額返還との約定により200万円を支給した。これが労働基準法16条の禁止する「違約金」「損害賠償額」に当たるかが争点となった。裁判所は法に抵触すると認め、会社の請求を退けた。

労働者に労務提供に先行して経済的給付を与え、一定期間労働しない場合は当該給付を返還する等の約定を締結し、一定期間の雇用関係の下に拘束するという、いわゆる経済的足止め策も、その経済的給付の性質、態様、当該給付の返還を定める約定の内容に照らし、それが当該労働者の意思に反して労働を強制することになるような不当な拘束手段であるといえるときは、労働基準法5条、16条に反し、当該給付の返還を定める約定は、同法13条、民法90条により無効である。


ケイズインターナショナル事件 東京地裁 平成4.9.30

労働者は入社4日で、病気を理由に欠勤し、退職。

会社は客先との取引(1,000万円)を失い、労働者に対し200万円の賠償を約束させた。

裁判所は、信義則を適用し、労働者に請求額のおおよそ3分の1に当たる70万円の賠償金を支払うように命じた。


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