忠実義務違反

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忠実義務違反


使用者に不当に損害を与えない義務

労働者が使用者に対して雇用契約上負担する義務は、労務の提供義務に限らず、使用者に不当に損害を与えないようにすべき義務(忠実義務)にも及ぶとされています。

在職中の競業避止義務や秘密保持義務などは、この忠実義務に根拠を求めることができるとされています。


解雇が有効だとされた判例


東京貨物社事件 東京地裁 平成12.11.10

イベント設営業務などを行う会社の営業課長の地位にあった者が在職中に競業行為を行ったことを理由とする解雇の効力を是認。


三朝電機製作所事件 東京地裁 昭和43.7.16

営業秘密とされた事項を漏らし、使用者に安値受注のやむなきに至らせたことなどを理由とする解雇の効力を肯定。


解雇が無効だとされた判例


医療法人思誠会(富里病院)事件 東京地裁 平成7.11.27

医師による抗生物質過剰投与問題といった患者の生命や身体の安全にかかわる病院の診察方法の改善について指導を求めるため保健所へ病院の実態について申告し内部告発したとしてなされた医師2人に対する解雇。

同人らに不当な目的は認められないこと、保健所への申告内容が保健所を通じて公表されたり、社会一般に広く流布されることを予見ないし意図していたとも認められないこと、病院は本件申告の翌日に同人らを解雇したものであるが、本件解雇通告時はもちろん、その後も保健所を通じて申告内容が外部に公表されたことはなく、病院が保健所から不利益な扱いを受けたこともないことなどからすると、保健所への申告を理由とする本件解雇は無効である。


取引先から個人的に謝礼をもらっている

謝礼の種類には次の2種類があり、どちらに分類されるかによって、取り扱いが異なります。

謝礼


特定な業務・事象への便宜

自己の担当する業務遂行中、取引先に便宜を図ったことにより謝礼金を受けた場合は、会社の業務について自分の会社よりも取引先の利益を優先したと見なされることが多くなります。

当然に不正行為になり、それも重度の懲戒の対象となります。

場合によっては、刑法上の背任罪(刑法247条)にもあたります。

刑法247条(背任)

他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

以上は、金額の多寡にかかわりないと解されています。

また、当該社員の職務に直接関与しない事柄であっても、現実に謝礼を受け取り、何らかの便宜を図ることで、特定の企業に発注が決定したような場合には、会社へ損害を与えたということができるとされ、懲戒解雇が有効とされる場合もあります(後楽園スタジアム事件 東京地裁 昭和53.7.13)。


特定な業務・事象と関係ない謝礼の授受

金額的価値が大きい場合、会社に対する誠実義務違背とされる可能性が高くなります。

いずれにせよ、原則として、取引先から謝礼を受け得ることは禁ずるとともに、固辞できなかった場合は、会社への報告義務を徹底することが適当でしょう。

また、就業規則上、かような行為について具体的に懲戒事由としていない場合は、至急、懲戒事由を追加する必要があります。

その場合、単に「業務を利用して不当に金品その他を受け取り」といった規定だけでなく、「故意に会社に損害を与えた場合」も設けておき、かつ、「会社に必要な報告をしなかった場合」といった条項も設けておくとよいでしょう。


他の従業員の不正行為の申告義務

一般的に、店舗のような店で店員として勤務する従業員は、雇用契約上の具体的義務として、客による万引きを防止する等の防犯義務を負担するほか、信義則に基づくいわゆる誠実義務として、雇用主に経営上の損害を与えないよう配慮すべき義務をもっています。

さえき事件 福岡地裁小倉支部 平成10.9.11

自らの店の商品を盗取するなどの不正行為をしないことはもとより、他の従業員による不正行為を発見した時は、雇用主にこれを申告して被害の回復に努めるべき義務をも負担するものと解するのが相当である。

そして、従業員自らが商品を盗取するなどの不正行為をした場合にはこれが不法行為を構成することは明らかであるが、更に、他の従業員による不正行為を発見しながらこれを雇用主に申告しないで被害の発生を放置した場合には、その不作為が前記内容の誠実義務に違反する債務不履行を構成するのみならず、その不作為によって他の従業員による不法行為(不正行為)を容易にしたものとして、不法行為に対する幇助が成立するというべきである。


会社への忠誠心、日本が世界最低「非常にある」・・・9%

日本人の会社への帰属意識や仕事への熱意は世界最低水準――。そんな結果が、米世論調査会社のギャラップの調べで明らかになった。

帰属意識や熱意が「非常にある」と判定された人の割合はわずか9%で、調査した14か国のうち最低。4人に1人が「まったくない」とされ、職場に反感や不満を感じているという。

調査は2005年3月に電話番号から無作為に選んだ1000人を対象に、「自分の得意なことを行う機会が毎日ある」「自分が何を期待されているかがわかっている」「自分の意見が考慮されているように思う」「成長を励ましてくれる人がいる」など12問を5段階評価で答えてもらい、総合的に評価した。

その結果、仕事への忠誠心や熱意が「非常にある」が9%、「あまりない」が67%、「まったくない」が24%となった。

03〜04年に同じ調査をした他国と比べると、「非常にある」はシンガポールと並んで最低、最も高い米国(29%)の3分の1以下だった。一方、「まったくない」はフランス(31%)に次ぐ2番目の多さだ。

同社は「米国は不満があれば転職する。

日本は長期雇用の傾向が強いこともあって、相当我慢しているのではないか」と分析している。

(asahi.com 2005.5.13)


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