企業の危急存亡時の配転

倒産防止のためと認められれば条件が緩和

企業の存続について危険があり、倒産等を防止するためには人事異動が必要とされる状況下での配転は、高度の合理性があると認められます。

滋賀マツダモータース事件 大阪高裁 昭和50.1.17

業績挽回を目的とする機構改革による人事に不満を抱き、社長、取締役との話合いが不調に終った労働者が、就業規則にもとづいて解雇通知を受けたので、解雇は違法であるとして、従業員としての地位保全等の仮処分を申請した事例。

会社は莫大な赤字を克服するため社運をかけて機構改革を実施しようとし、これに伴う人事異動に他の部課長はすべて異議なく応じて会社の業績挽回に取り組もうとしていたに拘らず、ひとり控訴人のみが、・・・右人事異動に応じなかったのであるから、その時期からみても控訴人の地位からしても、控訴人の右所為が他の従業員に及ぼす影響は少なくなく被控訴会社の業績挽回にも支障を生ずる虞があったものと考えられ、これを前記就業規則の「やむを得ない業務の都合による時」に準ずるものとして解雇はやむを得ないものと認められる。

日本コロンビア事件 東京地裁 昭和50.5.7

求人申込票の職種欄には「テレビ(殊にカラーテレビ)製造関連業務」と就業場所欄には「川崎工場」との記載があることが認められる。しかし、右記載は雇用当初における予定の職種、勤務場所を一応示すにとどまるものであって、将来とも職種、勤務場所を右記載のとおり限定する趣旨のものとみることは困難である。したがって、本件配転命令が雇用契約に違反する無効なものであるということはできない。

人事、機構面、生産面、営業販売面等について種々の会社再建策を決定、実施することとした場合に、その一環としての本件配転命令は就業規則に基づくものであり、これに応じないことは、企業秩序を乱す重大な規則違反であり、このような行為におよんだ原告をそのまま企業内に残しておくならば、被告の企業秩序維持は困難となるから、原告は被告から排除されてやむを得ない。配転を拒否したことに対して行った懲戒解雇は有効である。


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