出向とは

在籍出向は出向元従業員としての身分は保持される

労働者が採用された企業の従業員としての地位を保持したまま、子会社や関連会社などにおいて、相当長期間にわたり労務を提供する人事異動のことをいいます。

労働契約関係が維持される点で「転籍」と区別され、指揮命令権者が変わる点で「配置転換」と区別され、また相当長期間継続する点で「応援」等と区別されます。

出向は、一見すると長期の出張に似ていますが、出張の場合、出張先にはその社員に対する仕事の指揮命令権はなく、出張社員と出張先との間には雇用関係は発生しません。

関連事項:転籍とは

助成金制度

雇用保険に基づく雇用調整助成金として、出向期間中に出向元が支払った賃金の一部が、国から支給される制度があります。

労働時間や休日など、労務管理上の規定は、出向先の就業規則が適用されます。

定年・退職金制度など、労働契約上の地位に関する事項については出向元の就業規則が適用されます。

在籍型出向の出向労働者については、出向元及び出向先の双方とそれぞれ労働契約関係があるので、出向元及び出向先に対しては、それぞれ労働契約関係が存する限度で労働基準法等の適用がある。すなわち、出向元、出向先及び出向労働者三者間の取決めによって定められた権限と責任に応じて出向元の使用者又は出向先の使用者が出向労働者について労働基準法等における使用者としての責任を負うものである。

(基発333号 昭和61.6.6)

出向期限、出向が終って戻る場合の職場などを確認し、できれば合意しておくことが権利の保全からも後日の紛争を防ぐ観点からも重要です。

出向先は懲戒処分をできますが、解雇権限は出向元にあるので、出向者が解雇相当だと判断される問題を起こした場合は、出向先は出向元に解雇の申し入れをする必要があります。


出向のタイプ

出向には次のような種類があります。

人材援助型 出向元と出向先の業務提携に伴って発生する出向。提携先への業務移譲などがあり、経営指導・技術指導のために出向させられるケース
人材育成型 従業員の能力育成のため、関連分野の企業に出向させるケース。たとえば、メーカーの従業員が販売子会社に出向して販売ノウハウを取得する、など。
中高年処遇型 中高年従業員を処遇する手段が自社内に見いだすことが難しいため、子会社の管理職などに出向させて、親会社でのノウハウを生かしてもらうもの。
雇用調整型 いわゆるリストラの一環として、整理解雇を回避するための手段として用いられる。余剰員員を子会社、関連会社に出向させるなどが典型例である。出向元企業への職復帰を予定していないものもある。

配転と出向

出向か配転かの判断基準は、親会社から子会社への人事異動であれ、系列企業間の人事異動であれ、グループ企業間の人事異動であれ、労務指揮権の所在と異動先企業の法人格の有無にあります。

名村造船所事件 大阪地裁 昭和48.8.16

異動先企業が組織上・経営上密接に関係する同一グループに属していても、労務指揮権の主体が移転している以上出向にあたる

日本ステンレス・日ス梱包事件 新潟地裁高田支部 昭和61.10.31

役員・人事権・労働条件等からみて実質的に同一とみられる子会社への出向は、配転と同じ法理が適用される。


出向と労働者派遣

労働者派遣は、雇用主のもとを離れて他人(派遣先)の事業所でその指揮命令を受けて労務に服する点で出向に類似しています。

出向は、出向元と出向先双方との二重の労働契約関係(包括的な労働契約関係だけでなく、部分的なものも含む)を生ぜしめる点で、労働契約関係が派遣元との間においてのみ生じる労働者派遣とは区別されます。


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