出向と労働条件低下

労働条件低下の程度いかんで判断は異なる

労働条件の低下があるからといって、その出向命令がただちに無効とされることはありません。

光洋自動機事件 大阪地裁 昭和50.4.25

本件出向命令は、経済上および生活環境上の不利益をもたらしているのではあるけれども、本件出向による賃金の減少は僅少でその日常生活に直接影響を及ぼす程のものではないし、・・・賃金の減少は将来において十分回復する可能性のあることが窺われ、その他の生活上の不利益についても特段に重要なものとは認められない。

以上によれば、本件出向命令は、然るべき業務上の必要性を欠くものではなく、申請人の既得の権利利益を著しく損なうようなものでもないことが明らかである。

東京エンジニアリング事件 東京地裁 昭和52.8.10

出向することにより労働条件が従来のそれに比し著しく過酷低劣となればいざ知らず、ある程度の変動は避けがたいものとして容認しなければ出向業務の多い会社のような企業にあっては(出向をできるだけ避け、また、労働条件の変動を少なくする企業努力は必要であるが)業務運営は行詰まってしまう。

反面、出向先において労働条件が著しく低下したり、不測の不利益を招くおそれのある場合は、出向命令は無効とされます。(神鋼電機事件 津地裁 昭和46.5.7、ダイワ精工事件 東京地裁八王子支部 昭和53.9.22)

この場合、不利益を解消するための代償措置、例えば出向手当等を支払う等の措置が必要となります。


出向を命じられたが、年休の継続取扱いは可能か

在籍出向は、出向元・出向先の双方において労働関係が存するが、年休の取扱では出向元における勤務期間を通算した勤続年数に応じた日数を付与する(昭和63.3.14 基発第150号)とされています。

転籍の場合は、出向先との間で新たな労働関係が成立するとする見解が有力であるため、出向元会社との勤務期間は通算されないのが原則です。


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