出向中の労災

出向先に安全配慮義務がある

出向中に出向先での事故によりケガをすることもあります。

労災等の際に問題となる安全配慮義務などは、基本的には日常の労務を行っている出向先の義務であり、出向元は従たる義務を負うともいえます 。

大成建設事件 福島地裁 昭和49.3.25

安全配慮義務は、まず労働に関する指揮命令権の現実の帰属者たる出向先の使用者においてこれを負担すべきものであるが、身分上の雇用主たる出向元の使用者も、当然にこれを免れるものではなく、当該労働者の経験、技能等の素質に応じ出向先との出向契約を介して労働環境の安全に配慮すべき義務を負うと解するのが適当である。

ただし、出向元が出向先での労災発生の危険を知りながら出向させたケースでは、出向元も責任を逃れることはできません。最終的にはケースバイケースとなるでしょう。

出向労働者に係る保険関係が、出向元事業と出向先事業とのいずれにあるかは、出向の目的及び出向元事業主と出向先事業主とが当該出向労働者の出向につき行った契約ならびに出向先事業における出向労働者の労働実態等に基づき、当該労働者の労働関係の所在を判断して決定すること

(昭和35.11.2 基発932号)

保険料は出向先が負担

このため、出向社員は出向先で労災保険に加入します。

賃金を負担するのが出向元であっても、出向先が支給しているものとして本人分の保険料を納付します。


出向先と出向元で休職の基準が違う場合

私傷病で休職に入る場合も、出向先では休職期間が1年で、出向元では1年6ヶ月である、というように、期間が異なる場合があります。

「休職」が、期間満了による退職につながる処置と考えれば出向元の権限内だと解されますし、その判断が就労困難による労務提供の免除ということだとすれば、その権限を持つ出向先の判断によるとも考えられます。

このため実務的には、あらかじめ、どちらの取扱いを適用するか、決めておくことが必要となります。


出向元が賃金の一部を負担している場合

出向元が支払った賃金相当部分については、労働基準法11条に規定する賃金と同等(=賃金名目)とみなし、合算して取り扱うこともできます。

出向先事業所は、この部分についても賃金に当たるものだと、労基署に申し出ておくことが必要です。

当然、保険料は上がりますが、そうしないと、補償費用の基礎となる平均賃金が下がり、結果として補償額が少なくなってしまいます。

当該出向労働者が、出向元事業主と出向先事業主とが行った契約等により、出向元事業主から賃金名目の金銭給付を受けている場合であっても、出向先事業主が、当該金銭給付を出向先事業の支払う賃金として、労災保険法第25条(注:現在は労働災害の保険料の徴収等に関する法律第15条その他)に規定する賃金総額に含め、保険料を納付する旨を申し出た場合には当該金銭給付を出向先事業から受ける賃金とみなし、当該出向労働者を出向先事業に係る保険関係によるものとして取り扱うこと。

(昭和35.11.2基発932号)


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