就業規則の周知(労働基準法106条)

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就業規則の周知(労働基準法106条)により、就業規則は使用者の内部的取扱基準であることを超えて従業員に対する客観的な準則になります。

就業規則の周知は就業規則をして事業所の小労働基準法たる効力を生ぜしめる前提要件であると考えられています。

就業規則は次の方法によって周知することが必要です。

  1. 常時作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付ける。
  2. 書面で交付する。
  3. 磁気ディスク等に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する。

就業規則の内容を知らなければ従業員は就業規則を守りようがないのですから、これは当然の理を表したものといえます。

フジ興産事件 最高裁 平成15.10.10

就業規則が拘束力を生ずるためには、その適用を受ける事業所の労働者に周知させる手続きを要する。 原審は、旧就業規則を労基署長に届け出た事実を確定したのみで、その内容を労働者に周知させる手続きが取られているかどうか認定しないまま、旧就業規則に法的規範としての効力を肯定し、懲戒解雇を有効とした。

原審の判断には法令の適用を誤った違法があり、原判決を破棄し原審に差し戻す。

関西定温運輸事件 大阪地裁 平成10.9.7

労基法所定の周知方法が採られていないからといって、直ちに就業規則の効力を否定するべきではないが、使用者において内部的に作成し、従業員に対し全く周知されていない就業規則は労働契約関係を規律する前提条件をまったく欠くというべきであるから、その内容がその後の労使関係において反復継続して実施されるなどの特段の事情がない限り、効力を有しないと言うべきであり、特段の事情があったと認めるに足りる証拠もない。


就業規則の効力発生要件

懲戒処分を行うためには、就業規則にその事由と手段とを定めることが必要ですが、その前提として就業規則が有効に成立していなければなりません。

問題は、意見聴取(労働基準法90条)、労働者への周知(労働基準法106条)、監督官庁への届け出(労働基準法89条)のいずれが欠けると、就業規則としての効力に欠けることになるのかです。

労働者への周知については、常時各作業場の見やすい場所に、就業規則のほか、労働基準法及び同法による命令を掲示するか、又は備え付ける等で足りるとされています。

猪高学園事件 名古屋地裁 昭和58.5.23

周知義務を定めた労働基準法第106条1項は、単なる取締規定というべきではなく、必ずしも同条1項所定の周知方法がとられることまでは要しないが、少なくとも労働者がこれを知ろうと思えば知りうるような状況におかれていることが就業規則の効力要件である。

大洋興業事件 大阪地裁 昭和58.7.19

労働基準法第106条1項の周知手続の履践義務は、就業規則の効力要件ではなく、使用者において、その事業場の労働者に対し、就業規則の存在および内容を周知せしめ得るに足りる適宜な方法により告知されれば足り、同法90条所定の手続を経て就業規則を定めている以上、有効である。

国鉄国府津運転所事件 横浜地裁小田原支部 昭和63.6.7

国鉄運転所における勤務時間内入力を使用者が長年にわたり放置してきた以上、右入浴を理由に賃金カットするためには、右行為が就業規則に反することを周知徹底すべきであるが、右周知義務は尽くされたと認められた。

駸々堂事件 大阪地裁 平成8.5.20

団交において提示され、事業場の事務室兼休憩室に備え置いて、従業員に対し周知させたこと認められ、就業規則が有効だとされた。


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