平均賃金の最低保障

実賃金の60%が最低保障

平均賃金には最低保証額が定められています。(12条1項但書)

この額は以下のように決まっています。(昭和30.5.24 基収1619号)

(1) 賃金が、労働した日もしくは時間によって算定され、または出来高払制その他の請負制によって定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60
(2) 賃金の一部が、月、週その他一定の期間によって定められた場合においては、その部分の総額をその期間の総日数で除した金額と前号の金額の合算額

したがって、平均賃金の算定期間中いくら欠勤が多くても、例えば日給制の場合は日給額の6割程度が平均賃金として保障されることになります。

この計算方式は、日給月給制(賃金は月決めであるが欠勤日数に応じて差し引かれる)の場合も、準用されます。

「賃金の一部もしくは全部が、月、週その他一定の期間によって定められ、且つ、その一定に期間中の欠勤日数もしくは欠勤時間数に応じて減額された場合においては、欠勤しなかった場合に受けるべき賃金の総額をその期間中の所定労働日数で除した金額の100分の60(昭和24年労働省告示第5号第2条)」という計算方法により計算した金額を最低保障額とする。

(昭和30.5.24 基収第1619号)


通常の方法で算定できないときの計算

雇入後3ヶ月未満の場合

雇入後3ヶ月未満の労働者について平均賃金を算定すべき事由が発生した場合は、「雇入れ後の期間」とその賃金とで平均賃金を算定します。(12条6項)

雇入後3ヶ月未満の場合でも、賃金締切日があり、少なくとも一回分の完全な賃金締切期間がある場合には、賃金締切日から起算します。

完全な一賃金締切期間に満たない場合は、雇い入れ後の期間をもって平均賃金の算定期間とすることになっています。(昭和27.4.21 基収1371号)

しかしながら、平均賃金の算定期間である3ヶ月間のうち半分以上も私病により欠勤しているような場合には、平均賃金がその労働者の通常の賃金よりも極端に低額になってしまいます。

そこで、労働基準法12条1項ただし書きは、平均賃金は次の各号の1によって計算した金額を下回ってはならない、として最低補償額の計算方法を定めています。

試用期間中の場合

試用期間中に算定事由が発生した場合には、その期間中の日数を算定期間としてその期間中の賃金を賃金の総額として計算します。

控除期間が3ヶ月以上にわたる場合、雇入当日の平均賃金、使用者の責に帰すべからざる事由(私傷病等)により休業が3ヶ月以上にわたる場合等

算定対象となる算定期間と賃金がなくなってしまうなどで算定不能となるため、このような場合には都道府県労働局長がこれを定めることになっています。

算定期間が2週間未満の労働者

算定期間が2週間未満の場合で、すべての日に稼働している者については、賃金総額の6/7をもって平均賃金とします。(昭和45.5.14 基発375)

賃金額が他の労働者と比較して著しく違う場合

また、短時間就労や長時間残業などの違いにより他の労働者と比べると賃金額が著しく異なる者については、当該事業場における過去の同種労働者の労働時間等を勘案して賃金額を修正したうえで、平均賃金を算定すべきとされています。(昭和45.5.14 基発375)

日々雇い入れられる者の場合

これらの労働者は稼働にむらがあるばかりでなく、日によって就業する事業場を異にし、賃金額も変動することが多く、一般常用労働者の平均賃金と同一に取り扱うことが適当でないので、厚生労働大臣が別に定める金額を平均賃金とするとされています。

日々雇い入れられる者の場合

一昼夜交替勤務者の場合

所定労働時間が2暦日にわたる場合は、始業時刻の属する日における「1日」の労働と取り扱うことになっています。

例外として、一勤務が明らかに2日の労働と見なされる場合(例えば丸二日間通しの勤務をし、これを交代制で繰り返す場合など)は、原則通り、当該1勤務を2日の労働として計算します。

ただし、2日分と認められる勤務であっても、その2暦日目に平均賃金算定理由が生じた場合は、その始業時刻の属する日(つまり2日間の第1日目)に事由が発生したものとして取り扱われることとなり、総日数の計算においても、その日は含めないこととされています。(昭和45.5.14 基発374号)

定年後引き続き再雇用された場合

定年後に引き続いて再雇用されたが、3ヶ月を待たずに解雇され、平均賃金の計算が必要となったような場合は、定年前~定年後の期間を実質的には一つの継続した労働関係にあった期間とみなします。

したがって、再雇用後の期間だけではなく、定年前の期間も含めた3ヶ月間(賃金の締日がある場合はそれ以前3ヶ月間)が、平均賃金の算定期間となります(昭和45.1.22 基収4464号)。

転籍者の場合

原則は転籍先に期間で計算されます。

同一企業グループ内での人事交流などのために、実質的には同一会社で勤務したと同様であるとみなされる場合は、旧会社の期間を通算した3ヶ月間を算定期間としても差し支えないとされています。(昭和45.1.22 基収4464号)


端数処理

平均賃金は銭の単位まで求め、銭未満の端数が生じた場合は、これを切り捨てることとされています。(昭和22.11.5 基発232号)

なお、休業補償を算定する場合は、平均賃金に所定の日数を乗じることになります。これに1円未満の端数が生じた場合は、「特約がある場合には、その特約によりその端数が整理され、特約がない場合は1円未満の端数を10銭の単位で四捨五入して支払う」こととなっています。(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律)

ちなみに、労災保険における給付基礎日額の計算の場合、1円未満の端数が生じた場合には、1円に切り上げることとされています。(労災補償保険法8条の5)


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