未払い賃金での付加金
付加金とは
付加金の支払いは、裁判所が相当悪質な不払事案だと判断した場合に限定して命じられます。(労働基準法114条)
これは、アメリカ公正労働基準法16条による附加賠償金制度の趣旨を導入したものです。
付加金の支払いを命ずるか否かは裁判所の裁量ですが、使用者の悪質さ、不誠実さも重要な要素となります。
付加金を請求できるのは次の場合です。
(1) | 解雇予告手当を支払わないとき(労働基準法20条) |
(2) | 休業手当を支払わないとき(労働基準法26条) |
(3) | 割増賃金を支払わないとき(労働基準法37条) |
(4) | 年次有給休暇の賃金を支払わないとき(労働基準法39条) |
付加金の額は、不払金と同額です。
労働基準法第114条(付加金の支払)
裁判所は、第20条、第26条若しくは第37条の規定に違反した使用者又は第39条第6項の規定による賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあった時から2年以内にしなければならない。
付加金の支払義務は、条件に該当したときに自動的に発生するものではありません。
労働者が裁判所にその支払いを請求し、裁判所がその請求を妥当と認めて、その支払いを使用者に命じた場合に初めて発生するものです。
したがって、労働者が付加金支払いの請求をしなければ、裁判所は、たとえ未払金があっても付加金支払いを命ずることはできません。
労働者が裁判所に訴え出るまでに全額が支払われた場合も、付加金の請求はできません。
付加金については判決確定の日の翌日から民事法定率である年5%の遅延損害金が請求されます。(江東ダイハツ自動車事件 最高裁 昭和50.7.17)
ただし、付加金の請求は支払義務違反のあったときから2年以内となっています(法律上除斥期間といわれるもので、消滅時効とは違って不変です)。
付加金の請求では、通常の賃金を含めた125%の賃金を前提として付加金の125%要求できるという考え方と、付加金は割増賃金部分の25%のみについて命じうるという説があります。