休業とは
「休業」とは、労働者が労働の意思を有するのに、会社の業務上の都合により就業できなかった場合などをいいます。
使用者の責に帰すべき事由
この「使用者の責に帰すべき事由」とは、
(1) 民法536条2項にいう「債権者の責に帰すべき事由」(故意、過失または信義則上これと同視すべき事由)よりも広いが、しかし
(2) 不可抗力によるものは含まないとされています。
この場合、不可抗力にあたるといえるためには、
ア その原因が事業の外部より発生した事故であること
イ 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてなお避けることのできない事故であること
の二要件を備える必要があります。
また事業の全部または一部の経営が停止される場合だけでなく、特定の労働者に対してその意思に反して就労を拒否した場合なども含まれます。
ノースウエスト航空事件 最高裁 昭和62.7.17
工場の焼失、機械の故障、原材料不足、資金難、生産過剰による操業短縮、監督官庁の勧告による操業停止などといった企業経営上の障害を原因とする休業の場合は、すべて「使用者の責に帰すべき事由」に該当し、休業手当を支払わなければならないことになる。
親企業から資材・資金の提供をうけて事業を営んでいた下請企業が、親企業の経営難のため資材・資金の確保が困難になり休業したという場合には、労基法上での不可抗力による休業とみることはできず、休業手当の支払義務が生じます(昭和23.6.11 基収1998号)。
また、新規学卒採用内定者に対して自宅待機を命じた場合も使用者は休業手当を支払わなければなりません。
争議行為と休業
ストライキの場合、組合員以外の残りの労働者を就業させられない場合は一種の不可抗力とみられ、その残りの労働者に休業手当の支給義務はないと解されます。
使用者が正当な行為としてロックアウトを行った場合は、ロックアウト期間中の賃金支払義務は免れます(違法なら支払義務を負う)。
関連事項:派遣労働→
休業中の賃金はどうなるか
民法第536条第2項は「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない」とし、使用者の責に帰すべき事由によって労働者が就業できなくなった場合は、反対給付である賃金を受ける権利があると、規定しています。
しかし、この民法の規定は、労使間の特約で排除することも可能であり、また実際に全額を支払わせるためには、最終的には民事訴訟によらなければならないことになるので、労働者の保護に十分であるとはいえません。
そこで、労働基準法第26条は「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」と規定し強行法規をもって労働者の平均賃金の100分の60以上を保障しています。