懲戒処分の事由

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懲戒処分となる事由


欠勤・遅刻・早退

欠勤や遅刻、早退が懲戒処分の対象となるのは当然です。


要介護者を理由とする転勤拒否

就業規則に転勤の規定があれば、社員は転勤命令に従う義務があります。

しかし、これはあくまでも「原則」で、「合理的理由」があれば拒否できる可能性が生じます。

「寝たきりの親を介護しなければいけないので」という理由で転勤を拒否する場合は、合理的な理由があると判断することが可能です。

ただし、小さな子供がいることが、ただちに転勤拒否の理由にならないと判断された事例もあります。


職務専念義務違反

労働者は所定労働時間内は、その労働力をいわば使用者に売り渡した時間であるといえますから、その時間中は使用者の指揮命令に服し、その職務に専念することが義務付けられているといえます。

したがって、使用者の許可承認なく勝手に業務以外のことに時間を消費することは、職務専念義務違反となります。

大正製薬事件 東京高裁 昭和48.11.8

勤務時間中は職務に専念しなければならないし、外商員も右規則に従うものとされていること、尤も喫茶店入店行為といえども休憩に値する時間中であれば格別、外商員がルート票に予定し命じられた最初の得意先への訪問活動に着手するに先立ち、原判決に判示のように、一再ならず同僚を誘ない、ないしは談り合わせて入店し長時間にわたることは、外商員としての業務の進行を円滑にするために必要不可欠であるとは認められない。


住友不動産ホーム事件 東京地裁 平成9.5.15

営業職員の解雇事件。

本件解雇までの約1年11ヶ月間まったく売上がなく、しかもその間、無断欠勤したり、出勤しても外出先の報告をもせずに外出してそのまま帰宅してしまうことが多く、かつ、営業の基本となる記名カードもほとんど取得せず、原告が果たして営業活動をしているのかどうかも不明瞭な状態が続いたうえ、原告は上司である支店長に反抗的な態度を取り続け、勤務態度改善の意欲も認められなかった。

相当な理由があり、(解雇は)有効であると言うべきである。


年休取得理由の不記載

年休の利用目的は問わないという判例上の原則が確立しているので、それを記入しないからといって制裁処分に付するのは行き過ぎです。


研修命令の拒否

研修は業務命令ですから、その拒否は許されず、懲戒処分の対象となります。

仕事が忙しいというだけで拒否することは、合理的な理由とはなりません。

会社は、研修拒否は許容できないという立場にたって、きちんと労働者を指導すべきです。

ただし、次回の参加を制約したときは「譴責」程度にとどめるべきだといえます。

なお、研修の必要性を明示しないまま、単に研修受講のみを命令し強制すると、背後に不法・不当な意図があるのではないかと推認されることもあります。

アヅミ事件 大阪地裁 昭和62.8.21

何故に営業研修を受けなければならないのか、その意義を十分に把握できないまま、その内容や期間について十分な明示を受けることなく、被申請人の職制から営業研修に従うようただ迫られた事実を認めることができるのであるから、右のような経緯に鑑みれば、労働者が営業研修命令を不当労働行為であると考えて、これを一時拒否したことには、それなりの理由があるというべきである。


子会社への在籍出向を拒否

就業規則に包括的な出向規定があれば、合理的な理由のない出向拒否は業務命令違反として処分の対象となり得ます。

ただし、転籍出向の場合は本人の承諾が必要です。

関連事項:出向・転籍


経歴詐称

社員が採用される際の履歴書等に偽りの経歴を記載した場合、これは会社への背信行為ですから懲戒の対象にはなるといえます。

ただし、それは「重大な経歴詐称」に限られますので、その事実を知っていたなら採用しなかったであろうと思われる内容に限られます。


勤務時間外の二重就労

就業規則に二重就労禁止を盛り込むこと自体は差し支えありません。

しかし、懲戒処分ができるのは、

  1. 会社に対する労務の提供に支障を及ぼす場合(長時間や深夜に渡るアルバイト)や、
  2. 競業他社での労働のケースに限定することが適切です。

詳しくは:兼業禁止


横領

事実が確認されれば、当然、懲戒処分とされます。

詳しくは:懲戒解雇


接待費で私的な飲食をする

営業社員などは、ある程度の接待費の支出を裁量で任せられている場合があります。

このような場合に、その権限を濫用して専ら私的な飲食に接待費を充てるといった行為が判明した場合には、その行為は刑法上横領罪にも該当しうるものといえます。

就業規則に「会社内における窃盗、横領、傷害等刑法犯に該当する行為があったとき」などの懲戒規定があった場合、この規定によって処分することも可能です。

しかし、このためには、その行為があったことを裏付ける証拠が必要です。証拠には、接待費を申請した際の証拠書類や、本人や関係者の供述等が考えられます。

さらに、本人に弁明の機会が与えられなければならないと考えられます。

何もせずに懲戒処分を行ってもよいというわけではなく、最低限、原則として社員本人の事実確認を求め、その内容を書面に記録しておくことが必要です。

また、事実が確認された場合でも、事案が軽微であり、今まで同様の処分を受けたことがない、あるいは本人が反省の情を述べ、被害金額を返還しているような場合は、いきなり懲戒解雇をすべきではなく、減給・出勤停止等の処分にとどめるべきだといえます。


労働者の身なりを制限できるか

業務命令だからといって、企業は何でも命令することができるわけではありません。

企業の秩序を維持・確保するために必要な範囲に限定され、これに影響しない労働者の個人的な自由にまでは介入できないとされています。

東谷山家事件 福岡地裁小倉支部 平成9.12.25

髪を茶髪に染めて出勤してきた社員に対し、上司が再三にわたり黒く染め直すよう命じた。社員は少し茶色が残る程度に染め直したが、始末書の提出を拒否したところ、反抗的だとして解雇された。

裁判所は解雇を無効とした。

(その後、和解により職場復帰と解決金50万円支払)

企業としては労働者に必要な規制、指示、命令等を行うことが許されるというべきである。

しかしながら、このようにいうことは、労働者が企業の一般的支配に服することを意味するものではなく、企業に与えられた秩序維持の権限は、自ずとその本質に伴う限界があるといわなければならない。

特に、労働者の髪の色・型、容姿、服装などといった人の人格や自由に関する事柄について、企業が企業秩序の維持を名目に労働者の自由を制限しようとする場合、その制限行為は無制限に許されるものではなく、企業の円滑な運営上必要かつ合理的な範囲内にとどまるものというべく、具体的な制限行為の内容は、制限の必要性、合理性、手段方法としての相当性を欠くことのないよう特段の配慮が要請されるものと解するのが相当である。〔中略〕

債権者が頭髪を黄色に染めたこと自体が債務者会社の就業規則上直ちにけん責事由に該当するわけではない。


イースタン・エアポートモータース事件 東京地裁 昭和55.12.15

ハイヤ運転手の口ひげの是非が問題となった。

「ひげをそり、頭髪はきれいに櫛をかけること」と義務づけた服務規律の有効性が争われたが、裁判所は、この規定自体は有効としたものの、規定で禁じ得るのは無精ひげであるとか、異様・奇異なひげのことであって、他人に不快感や反発感を与えない口ひげまで禁じることはできない、とした。


私生活上の行為

企業外の行為であっても、場合によっては懲戒処分の対象になることがあります。

従業員が「あの会社の社員があんなことをしている・・・」といわれる社会的言動は、会社のイメージをダウンさせるため、信義則上の義務違反となります。

笹谷タクシー事件 最高裁 昭和53.11.30

タクシーの乗務員が勤務時間外において職場の後輩に対し、飲酒運転を容認し、けしかけた。

裁判所は、従業員の職務外でなされた職務遂行に関係のない行為であっても、企業秩序に関連を有し、企業の社会的評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められる場合には、懲戒解雇の理由となる、とした。

その一方で、会社の社会的評価に及ぼす悪影響がそれほど重大とはいえない場合には、そのような私生活上の行為を理由とする懲戒解雇は無効であるという判例もあります。

日本鋼管事件 最高裁 昭和49.3.15

政治デモ参加中に逮捕され、起訴された。

最高裁は懲戒解雇を無効とした。

ただし、「営利を目的とする会社がその名誉、信用その他相当の社会的評価を維持することは、会社の存立ないし事業の運営にとって不可欠であるから、会社の社会的評価に重大な悪影響を与えるような従業員の行為については、それが職務遂行と直接関係のない私生活上で行われたものであっても、これに対して会社の規制を及ぼしうることは当然認められなければならない。」としている。


社内における不倫

この問題は、取り扱いが微妙です。

まずは、社内における不倫による懲戒を認めた判例は、

長野電鉄事件 長野地裁 昭和45.3.24

バス運転士とガイドとの交際を厳格に禁止していたバス会社にあって、これを理由とする懲戒解雇処分について。

運転士と車掌は2人だけで同一バス内において長時間勤務を共にし、また長距離区間の定期バスや観光バスに乗務する場合には、勤務の途中で宿泊を共にせざるを得ない特殊な職場環境に置かれているため、男女間の風紀問題が発生し易い機縁が多く、運転士と車掌間に不純な関係が生じたときは、事故や不正行為の原因となることもあり、乗務計画にも差支えを生ずるばかりでなく、職場の規律を弛緩せしめる虞があるため、会社は平素従業員を戒め、特に運転士に与える服務必携にも、職場規律の1項目として「職場内の異性との交際については、特に慎まなければならない。」と摘示してその注意を喚起し、また宿泊も別の箇所に設ける等の配慮をしていることが認められる。

このような状況のもとにおいて、運転士が本件のような非行を敢えてしたことは、著しく風紀・秩序を乱したものというべきこと明らかである。

運転士は本件非行によって会社の体面を汚し、かつ、損害を与えたものであることが明らかであるというべきである。運転士の本件非行は労働協約に定める懲戒解雇事由に該当し、これに対して会社のなした通常解雇処分は有効であるというべきである。


逆に、社内における不倫による懲戒を認めなかった判例は、

繁機工設備事件 旭川地裁 平成1.12.27

水道配管会社における不倫事案。

女性事務員が、妻子ある男性従業員と男女関係を含む恋愛関係を継続することは、特段の事情がない限り、その妻に対する不法行為となる上、社会的に非難される余地のある行為であるから、会社の就業規則所定の「素行不良」に該当し得ることは一応否定できないところである。

しかしながら、同規定中の「職場の風紀・秩序を乱した」とは、これが従業員の懲戒事由とされていることなどからして、会社の企業運営に具体的な影響を与えるものに限ると解すべきところ、女性事務員及び男性従業員の地位、職務内容、交際の態度、会社の規模、業態等に照らしても、女性事務員と男性従業員との交際が会社の職場の風紀・秩序を乱し、その企業運営に具体的な影響を与えたと認めるに足りず、本件解雇は、懲戒事由に該当する事実があるとはいえないから無効である。


所持品検査はできるか

労働者に対する所持品検査も、その理由がもっともであり、方法が適切ならば、行うこともできます。

西日本鉄道事件 最高裁 昭和43.8.2

使用者がその企業の従業員に対して金品の不正隠匿の摘発・防止のために行う、いわゆる所持品検査は、被検査者の基本的人権に関する問題であって、その性質上つねに人権侵害のおそれを伴うものであるから、たとえ、それが企業の経営・維持にとって必要かつ効果的な措置であり、他の同種の企業において多く行われるところであるとしても、・・・そのことの故をもって、当然に適法視されうるものではない。

問題は、その検査の方法ないし程度であって、所持品検査は、これを必要とする合理的理由に基づいて、一般的に妥当な方法と程度で、しかも制度として、職場従業員に対して画一的に実施されるものでなければならない。

そして、このようなものとしての所持品検査が、就業規則その他、明示の根拠に基づいて行われるときは、他にそれに代わるべき措置を取りうる余地が絶無でないとしても、従業員は、個別的な場合にその方法や程度が妥当を欠く等、特段の事情がないかぎり、検査を受忍する義務がある。

このことにより、裁判所は、所持品検査において脱靴の指示に従わなかったのは、「職務上の指示に不当に反抗し、・・・職場の秩序を紊(みだ)したとき」に該当すると判断した。

関連事項:服務規律


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