始末書

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始末書は本人の意思により提出されるべきもの

上司が管理・監督権に基づき始末書の提出を求めることはあります。

一般的に始末書には2つの種類があります。

提出命令の性格の違いによって、法律的効果は大きく異なってきます。

始末書 懲戒処分の一つとして、自らその非違行為を確認、謝罪し、将来同様の行為を繰り返さないことを誓約させるもの
顛末書 事の顛末を報告させることを目的とした、単なる事実経過的な報告書

顛末書の提出を業務命令の一環として命ずることは問題ありません。

しかし、懲戒処分の一環としての「始末書」の提出は本人の任意に委ねられるというのが原則です。

これを強制した場合は、ある種の懲戒処分だと判断されますから、重ねて別の処分を下すことはできなくなります。

その提出に応じない従業員に対し、業務命令に違反したものとして懲戒処分の対処となるかを争った裁判で、懲戒処分の対象とはできないという判断が示されています(福知山信用金庫事件 大阪高裁 昭和53.10.27、丸十東鋼運輸倉庫事件 大阪地裁 昭和53.1.11 豊橋木工事件 名古屋地裁 昭和48.3.14)。

学校法人柴田学園懲戒事件 青森地裁弘前支部 平成12.3.31

労働者は、労働契約を締結して雇用されることによって、使用者に対して労働提供義務を負うとともに、企業秩序を遵守すべき義務を負う一方、使用者は、始末書の提出によって企業秩序の回復を図ることができるから、始末書の提出を強制する行為が、労働者の人格を無視し、意思決定ないし良心の自由を不当に制限するものでない限り、使用者は、非違行為をなした労働者に対し、謝罪の意思又は反省の意を表明する主旨の始末書の提出を命ずることができ、労働者が正当な理由なくこれに従わない場合には、これを理由として懲戒処分をすることができると解するのが相当である。

・・・企業秩序違反すなわち就業規則上定められた非違行為を行ったとはいえない場合にまで、始末書を要求することは、その趣旨を逸脱するものとして許されないと解するのが相当である。


甲山福祉センター事件 神戸地裁尼崎支部 昭和58.3.17

始末書や謝罪文等の提出を命ずるのは、譴責という懲戒処分を実施するため、あるいは従業員に自己反省をなさしめ、職場の規律の保持という目的を達成するための手段に他ならないから、・・・業務命令とは別異の事象に属するものである。

・・・自己の誤りを陳謝し、再び同様の職場規律違反を犯さないことを確約する趣旨・・・の文書提出自体本人の意思に基づくほかない行為であって、個人の意思を尊重する現行法の精神からいって、・・・これを強制することは許されない。


豊橋木工事件 名古屋地裁 昭和48.3.14

個人の意思の自由は最大限尊重されるべきであることを勘案すると、始末書の提出命令を拒否したことを理由に、これを業務上の指示命令違反として更に新たな懲戒処分をなすことは許されない。


丸住製紙事件 高松高裁 昭和46.2.25

始末書の提出命令は、懲戒処分を実施するために発せられる命令であって、労働者が雇用契約に基づき使用者の指揮監督に従い労務を提供する場において発せられる命令ではない。

・・・近代的雇用契約のもとでは労働者の義務は労務提供義務に尽き、労働者は何ら使用者から身分的、人格的支配を受けるものではないこと、現在の法制度のもとでは、個人の意思の自由は最大限に尊重せられるべきであり、始末書の提出の強制は、右の法理念に反することを考慮すれば、始末書の提出命令は業務上の指示命令に該当しないものと解するのが相当である。


国際航業事件 大阪地裁 昭和45.11.19

本来解雇すべき事案であったが、一応減給処分にとどめ、始末書を求めたところ、これに応じなかったので、解雇とした。

まず、減給処分としたうえで、始末書の不提出という事態を契機にさらに解雇処分を行おうというものであるから、右解雇処分が行われる以上、右は一つの行為について再度処分することにほかならない、とされ処分無効と判断された。

ただし、提出を求めること自体は、違法性を有するものではありません(東芝事件 東京地裁八王子支部 平成2.2.1)。

最近では、会社は始末書の提出を求めることができるとした判例もあります。

西福岡自動車学校事件 福岡地裁 平成7.9.20

一事不再理の法理は、私的制裁規範である就業規則の懲戒事項にも該当し、同一の懲戒事由に対して二回以上にわたって懲戒処分を課することは許されないと解すべきである。

しかし、労働者は労働契約上、企業秩序維持に協力する一般的義務を負うものであるから、始末書等の提出を強制する行為が労働者の人格を無視し、意思決定ないし良心の自由を不当に制限するものでない限り、使用者は非違行為をなした労働者に対し、謝罪の意思を表明する内容を含む始末書等の提出を命じることができ、労働者が正当な理由なくこれに従わない場合には、これを理由として懲戒処分をすることもできると解するのが相当である。


あけぼのタクシー事件 福岡地裁 昭和56.10.7

始末書の提出を強制しても、その内容が提出者の人格を無視し、著しくその名誉を毀損して意思決定の自由ないしは良心の自由を不当に制限するものでない限り、必ずしも内心の自由を侵すことにならないから・・・始末書の提出を業務命令として命ずることも、また、その不提出を懲戒処分の事由とすることもできる。

これに対し、行為内容について報告を求める報告書(顛末書)としての始末書なら、それが業務に関するものであれば、労働者は使用者に業務の遂行内容について報告する義務があるので、このような事案の内容を明確ならしめる目的等である限りにおいて、業務命令として「報告書としての始末書」を求めることはできるといえます(淀川製鋼所事件 大阪地裁 昭和45.4.17)。

ただし、その業務命令に自己反省や謝罪などの内容を織り込むことは強制することはできないと考えられています(阪本紡績事件 大阪地裁 昭和59.12.26)。


業務命令としての始末書(顛末書)

事実経過の報告として「始末書」の提出が求められることもあります。

この場合には、明確に業務の一環として出される命令であり、よほどのことがないかぎりこれを拒否することはできません。

もし拒否すれば業務命令違反としての責任を問われることになります。

提出したくないという意思は表明しても、拒否すれば処分もありうることの覚悟が必要です。


始末書提出拒否を人事考課に反映させることはできる

始末書不提出を人事考課上不利益に扱うことは可能です。

また、後日別の懲戒事由が起こった場合、前回の始末書不提出(=反省の態度がみられない)を考慮して処分を加重することはできます。


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