研修生の場合の在留資格
最大3年間の技能実習制度
日本で技術、知識の習得を目的として研修生を受け入れることがあります。
研修生には就労の対価としての報酬を支払うことはできませんが、研修に必要な実費弁償の範囲(宿泊費、食費、小遣い、等)で「研修手当」を支払うことは認められています。
この研修生を、研修の名目で受け入れ、現実には単純労働に従事させるというケースが多数生じました。
このため、技能実習生制度が設けられ、研修生の受け入れについては、国のコントロール下に置かれています。
また、研修プラス労働という、技能実習制度が設けられ、(財)国際研修協力機構(JITCO)の指導の元に実施されています。
この制度を利用すると、最大3年間の技能実習が可能です。
研修期間においては、座学による研修がプログラムされていなければなりません。
研修生に支払われるのは「研修手当」であって「賃金」ではありません。また、名前だけの研修で、実態が単純労働と変わらないというのでは主旨に反します。
ケガなどの場合、労災の適用を受けることが容易ではない(認められたケースもある)ので、別途、保険に入る必要があります。
研修期間終了前の所定の時期に、「研修成果(日本語による学科試験及び実技試験)」「技能実習計画」「在留状況」も3つの評価をすべてクリアした外国人に対しては、在留資格が「研修」から「特定活動」(法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動が可能)に変更され、晴れて研修生から技能実習生に移行できるわけです。
こうした技能実習生(在留資格「特定活動」を有し、雇用関係の下でより実践的な技能等の修得のための活動を行おうとする外国人)は、研修実施先の企業と雇用契約を結び、賃金を受けとることができるようになります。
技能実習生は研修生とは異なり、被雇用者であることから、労働関係法令等が適用され、時間外・夜間・深夜の作業に従事することも可能となります。
技能実習の場合、受入企業は、仲介となった協同組合等に「手数料」を支払い、組合から研修生に「手当」が支払われる仕組みになっています。
ところが、「手数料」>「研修手当」、であり、しかもこの差がかなり大きいので、トラブルになることがあります。
受入企業は「十分な費用を支払っている」と主張し、実習生は「少ない賃金で働かされている」という認識を持つからです。
なお、技能実習生は、研修生と同様、教育・訓練を受け、技術・技能・知識等を修得することを目的として日本に滞在している(=お金を稼ぐことを主要目的としているわけではない)わけですから、以下の3つの点で通常の労働者と異なります。
(1) | 転職は原則認められていません(研修と同一の技術、同一の期間) |
(2) | 家族帯同が認められていません(「短期滞在」による家族の訪問や本人の一時帰国は、所定の手続きをとれば可能です) |
(3) | 技能実習計画で到達すべき技能水準が定められています(技能実習2年コースでは「技能検定3級」、技能実習1年コースでは「技能検定基礎1級」) |
研修生要件
研修生は、次のいずれにも該当する者をいいます。
(1) 共通の要件
- 18歳以上の外国人
- 研修修了後母国へ帰り、日本で修得した技術・技能を活かせる業務に就く予定がある者
- 母国での修得が困難な技術・技能を修得するため、日本で研修を受ける必要がある者
(2) 研修型態による個別の要件
1 企業単独型研修の受入れ(企業が単独で行う研修生の受入れ)
- 送出し国の国または地方公共団体、あるいは、これらに準ずる機関の常勤の職員であり、かつ、その機関から派遣される者
- 受入れ機関の合弁企業または現地法人の常勤の職員であり、かつ、その合弁企業または現地法人から派遣される者
- 受入れ機関と引き続き1年以上の取引実績、または過去1年間に10億円以上の取引の実績を有する機関の常勤の職員であり、かつ、これらの機関から派遣される者
2 団体監理型研修の受入れ(受入れ団体がそのメンバーである企業等と協力して行う研修生の受入れ)
- 現地国の国・地方公共団体からの推薦を受けた者
- 日本で受ける研修と同種の業務に従事した経験がある者
受入条件
研修生を受け入れるためには、次の要件を満たす必要があります。
(1) | 申請人の修得しようとする技術、技能、知識が同一作業の反復のみによって修得できるものではないこと |
(2) | 申請人が18歳以上であり、かつ、母国に帰国して修得した技術、技能又は知識を要する業務に従事することが予定されていること |
(3) | 申請人の母国において修得することが不可能又は困難である技術、技能又は知識を修得しようとすること |
(4) | 研修が日本の公私の機関の常勤でかつ5年以上の経験を有する者の指導の下に行われること |
さらに、研修の内容に実務研修が含まれる場合は、併せて次の条件を満たす必要があります。
(5) | 研修生用の宿泊施設を確保していること |
(6) | 研修生用の研修施設を確保していること |
(7) | 研修生の人数が受入れ機関の常勤の職員の20分の1以内であること (商工会議所・中小企業団体などの特殊な機関が行う研修の場合、緩和措置あり) |
(8) | 研修生の生活指導を担当する職員が置かれていること |
(9) | 研修生の研修中の死亡、負傷、疾病罹患の場合の保険など保障措置を講じていること |
(10) | 研修施設について労働安全衛生法に規定する安全衛生上必要な措置に準じた措置を講じていること |
(11) | その研修生が、次の外国の機関から派遣されている場合
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関係機関
公益財団法人 国際研修協力機構(JITCO)
〒108-0023 東京都港区芝浦2-11-5 五十嵐ビルディング11階・12階
TEL 03-4306-1100
FAX 03-4306-1112
東京駐在事務所
〒108-0023 東京都港区芝浦2-11-5 五十嵐ビルディング11階
TEL 03-4306-1190
FAX 03-4306-1117
なお、研修生と技能実習生との違いをまとめると下記の表のようになります。
研修生と技能実習生の違い
項目 | 研修生 | 技能実習生 |
---|---|---|
在留資格 | 研修 | 特定活動 |
資格の性格 | 非労働者 | 労働者 |
給付 | 研修手当 | 給与 |
給付の意味 | 生活実費 | 労働の対価 |
残業 | 不可 | 可能 |
シフト勤務 | 原則不可 | 可能 |
雇用契約 | 不要 | 必要 |
就業規則 | 非適用(準拠) | 適用 |
健康保険 | 非適用 | 適用(強制) |
国民健康保険 | (適用) | (適用) |
厚生年金 | 非適用 | 適用(強制) |
国民年金 | (適用) | 適用(強制) |
労災保険 | 非適用 | 適用(強制) |
雇用保険 | 非適用 | 適用(強制) |
研修生保険 | 適用(強制) | 非適用 |
技能実習生保険 | 非適用 | 適用(任意) |
労働関係法令 | 非適用(準拠) | 適用 |
研修・技能実習制度の見直し
入管法の改正により、研修生・技能実習生の保護の強化を図るため、次の活動を行うことができる在留資格「技能実習」が新設されます。
(1) 「講習による知識修得活動」および「雇用契約に基づく技能等修得活動」
イ 海外にある合弁企業等事実上の関係を有する企業の社員を受け入れて行う活動(企業単独型)
ロ 商工会等の営利を目的としない団体の責任および管理の下で行う活動(団体管理型)
(2) (1)の活動に従事し、技能等を修得した者が雇用契約に基づき修得した技能等を要する業務に従事するための活動
これにより、雇用契約に基づく技能等修得活動は、労働基準法、最低賃金法等の労働関係法令等が適用されるようになります。また、(1)から(2)への移行は、在留資格変更手続により行うこととなります。