在宅勤務

在宅ワークとは

事業主と雇用関係にある労働者が自宅で業務に従事することを在宅勤務といいます。

厚生労働省は「在宅ワーク」という言葉を使って、ガイドラインを定めていますが、ここでは在宅ワークを次のように定義しています。

在宅ワークの定義

情報通信機器を活用して請負契約に基づきサービスの提供等を行う在宅形態での就労のうち、主として他の者が代わって行うことが容易でないものをいい、例えば文章入力、テープ起こし、データ入力、ホームページ作成などの作業を行うものがこれに該当する場合が多い。ただし、法人形態により行っている場合や他人を使用している場合などを除く。

在宅勤務は業務に従事する場所が自宅であることや、労働者の勤務時間帯と日常生活時間帯とが混在せざるを得ないことから、労働基準関係法令の適用関係を整理する必要があります。

自宅で労働するという形態のとらえ方の違いによって、適用される法律関係も違います。

在宅勤務の形態 適用法規等
企業の従業員が自宅で電子メールなどによる会社の指示を受けながら就労する 雇用関係にあり、労働基準法が適用される。みなし労働時間等の適用が検討されるのはこの形態
発注元の指示により、製品の製造などに従事する。他人を使用することはない 内職従事者などには、家内労働法が適用される。単純なテープ起こしなどはこれに当たる
発注元から指示をうけ仕事をするが、仕事の内容には創意工夫を加えることができる 請負関係であり、民法の適用を受ける。厚生労働省の「在宅ワーク」のとらえ方はこれに近い

みなし労働時間適用の条件

次の要件をすべて充たす場合、在宅勤務に労働基準法38条の2で規定する「みなし労働時間」が適用できるとされています。

みなし労働時間制の下においては、労働者は、就業規則で定められた「所定労働時間」労働したものとみなされます。

(1) 当該業務が、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
(2) 当該情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
(3) 当該業務が、随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

これと異なり労働時間の算定が可能と思われる場合、例えば労働者が自宅内に専用の個室を確保し勤務時間帯と日常生活時間帯が明確に区分するよう取り決めがされており、その条件下で随時使用者の具体的指示を受けつつ業務が行われるような場合は、みなし労働時間制は適用できません。

なお、「通常必要とされる労働時間」を別途、書面による労使協定で定め、これを労働基準監督署に届け出た場合は、その時間労働したものとみなされます。

この「通常必要とされる労働時間」が法定労働時間を超える場合には、36協定の締結と時間外労働に関わる割増賃金の支払いが必要です。

深夜に労働した場合は、深夜労働に関する割増賃金が必要です。

事業主は、日報等により、労働時間の状況を把握することに努めなければなりません。


その他の留意点

また、雇用労働者が在宅勤務中に業務が原因で生じた災害は、労災保険給付の対象となります(私傷病は対象とならない)。

これがSOHOなどの個人事業主で業務委託を受けて仕事をしている場合は、労災保険の適用を受けることができません。

業務内容等は文書で明確にしておくことが望まれます。

また、在宅勤務中に要する通信費や情報通信機器等の費用負担は、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則等に定めておくことが望まれます。

報酬の支払期日について厚生労働省のガイドラインは、「成果物を受け取った日から起算して30日以内とし、長くても60日以内とすること」としています。

在宅勤務 普及促す
育児・介護両立支援「みなし労働」適用へ 厚労省検討

厚生労働省は会社員が自宅などで働く在宅勤務が普及するよう「みなし労働制」の適用範囲拡大など関連法制の整備を検討する。

育児や介護など個人の事情に応じた働き方ができる環境を整え、女性や高齢者の就労を促す。

働き手のすそ野を広げて少子高齢化で先細って行く労働力を補い、年金など社会保障制度の担い手を増やす狙いもある。

会社員が通信機器などを活用して自宅などで仕事をする「在宅勤務」は労働時間の管理が難しく、導入に二の足を踏む企業が多い。

実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ労使で決めた時間だけ働いたとみなす「みなし労働制」を適用すれば企業は社員の在宅勤務を認めやすくなる。

現在「みなし労働制」は研究者や弁護士、経営企画など特定業務に限定した「裁量労働」と、外回り主体の営業などを想定した「事業場外労働」の2つに認めている。

ただ例外規定の色彩が濃く、一般の会社員の在宅勤務は厚労省が方針で要件を示すにとどまっている。法制度上の位置づけがあいまいなため企業の利用が進んでいない。

厚労省は来年度から一部企業で在宅勤務の「モデル事業」を実施し、社員の生産性や満足度、企業の労務管理などに及ぼす効果を検証。その結果を踏まえて、一般社員の在宅勤務にも幅広く「みなし労働制」を適用できるよう労働基準法など関連法政を改める。

2007年の通常国会への関連法案の提出を目指す。

みなし労働制を在宅勤務に適用できる旨を労働基準法に明記したり、育児、介護、地域活動、ボランティアなどで毎日の出勤が難しい個人に在宅勤務を認めたりする要件を新設する。

無秩序に広がれば混乱を招くおそれもあるため労使合意を前提にすることや、育児休業法で休業を認めている「子供が1歳になるまでの期間」などに適用を限定する案も浮上しそうだ。

日経新聞 (2004.11.11)


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