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ケーススタディー【保険外務員】


保険会社外務員の労働者性

解釈例規は、生命保険の外務員について、以下のような取扱いをする場合は、労働基準法の適用はない(昭23.1.9基発13号)としています。

なお、「たとえ保険外務員と称するものであっても実質上労働関係が存するとみなされるときには、法の適用があると解釈されます。


身分切り替えによる労働者性の変化

生命保険会社の営業職については、成績に応じて、以下のように身分が切り替わる場合があります。

委任契約

初期の研修期間などの扱いで、試用期間的な取扱いとなりますが、正社員ではありません。

労働契約

本採用となり、営業職に編入されます。労働者としての保護を受けます。

委任契約(外務嘱託)

基準となる勤務実績を果たせなかった営業職の身分を外務嘱託に切り替えます。

外務嘱託はあらかじめ定められた期間内に一定の成績を上げなければ、契約解除されます。

このような一方的な身分変更の是非が裁判で争われました(第一生命保険事件 東京地検 平成12.2.25)。

裁判所は、一方的に労働契約を委任契約に移行させることはできないが、「あらかじめ」そのような移行条件を定めておき、これを契約書に盛り込んであることから包括的合意が成立していたので、特段、当該者への恣意的な取扱いがなされていない限り、全体が一つの大きな契約だったのだとして、このような移行を認めています。

また、外務嘱託へ切り替えにあたって「6ヶ月後の契約終了」を予告しているので、労働基準法20条解雇予告が適用されるような解雇には当たらないともいっています。

泉証券事件 大阪地裁 平成11.7.19

証券会社の嘱託の契約は、契約切り替えの経緯、報酬の決定方法等から労働契約だといえる。


千代田生命事件 東京地裁 平成9.10.28

生保の営業職員が資格維持基準を満たせない場合には、嘱託に資格変更し解嘱するとする旨の規程に基づく資格変更・解嘱は有効とされた。


同居の親族で労働者になる者とは

同居の親族は事業主と居住および生計を一にするものであり、原則として労働基準法上の労働者としません。

ただし、同居の親族であっても、以下の条件から、実態として他の労働者と同様であるとみなされる場合、労働者として扱われます(基準発153号 昭和54.4.21)。

(1) 業務を行う場合に、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。
(2) 就労の実態が、当該事業場における他の労働者と同様であり、賃金もこれに応じて支払われていること。
(3) 始業および終業時刻、休憩時間、休日、休暇等、賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切りおよび支払い時期等が、就業規則その他に定めるところにより、その管理が他の労働者と同様になされていること。

ケーススタディー【傭車運転手】


傭車運転手の労働者性

〔「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(昭60.12.19)〕

いわゆる傭車運転手とは、自己所有のトラック等により、他人の依頼、命令等に基づいて製品等の運送業務に従事する者ですが、その「労働者性」の判断に当たっては、一般にその所有するトラック等が高価なことから、「使用従属性」の有無の判断とともに、「事業者」としての性格の有無の判断も必要になります。


(1)「使用従属性」に関する判断基準


「指揮監督下の労働」に関する判断基準

イ 仕事の依頼、従事業務の支持等に対する許諾の自由の有無

当該許諾の自由があることは、指揮監督関係を否定する重要な要素になりますが、一方、当該許諾の自由がないことは、契約内容による場合もあり、指揮監督関係の存在を補強する一つの要素に過ぎないものと考えられます。

ロ 業務遂行上の指揮監督の有無

a 業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無

運送物品、運送先及び納入時刻の指定は、運送という業務の性格上当然であり、これらが指定されていることは業務遂行上の指揮監督の有無に関係するものではありません。

運送経路、出発時刻の管理、運行方法の指示等がなされ、運送業務の遂行が「使用者」の管理下で行われていると認められる場合には、業務遂行上の指揮命令を受けているものと考えられ、指揮監督関係の存在を肯定する重要な要素となります。

b その他

当該「傭車運転手」が契約による運送という通常の業務のほか、「使用者」の依頼、命令等により他の業務に従事する場合があることは、当該運送業務及び他の業務全体を通じて指揮監督を受けていることを補強する重要な要素となります。

ハ 拘束性の有無

勤務場所及び勤務時間が指定され、管理されていないことは、指揮監督関係の存在を否定する重要な要素となりますが、一方、これらが指定、管理されていても、それはその業務内容から必然的に必要となる場合もあり、指揮監督関係の存在を肯定するひとつの要素となるに過ぎないものと考えられます。

横浜南労基署長(旭紙業)事件 最高裁 平成8.11.28 東京高裁 平成6.11.24 横浜地裁 平成5.6.17

  車の持ち込み運転手が、積み込み作業中に転倒し、骨折等の傷害を負った。労基署に対し、労災申請を行ったが、給付対象の労働者にはあたらないとして不支給処分となり、審査請求・再審査請求も棄却された。

一審の判断

業務遂行上の指揮監督関係、時間的及び場所的拘束性の程度、労務提供の代替性や業務用機材の負担の実情、報酬の性格等を総合的に考慮すると、労基法上の労働者と同等。不支給処分取消。

二審の判断

実態上は、専属的な下請業者として運送業務を行い、運送に必要な経費及び事故の場合の損害賠償責任を負担するものとし、従業員とされていないために、就業規則は適用されないし、福利厚生の措置も取られず、通常の労働者であれば被保険者とされる、労働保険、社会保険の被保険者とされず、労働者であればその賃金から源泉徴収される、源泉徴収所得税を控除されない。会社側でも、報酬以外の労働費用やトラックを所有したときの経費等が節約されるといったことから、報酬も従業員としての運転手を雇用した場合の給与よりは多額を支払うことができる事情にあったのである。この就労形態は、労基法上の労働者のそれとみることは困難である。

最高裁の判断

労働者には該当しない。上告棄却。

(1) 訴外会社が、運輸業務の性質上、当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示以外には、上告人の業務の遂行に関し、特段の指揮監督をしていない

(2) 上告人の時間的、場所的な拘束の程度も一般従業員と比較してはるかに緩やか

(3) 報酬の支払方法、公租公課の負担等からみても、労働者に該当しない

ニ 代替性の有無 指揮監督関係の判断を補強する要素

他の者が代わって労務提供を行う、補助者を使う等労務提供の代替性が認められている場合には、指揮監督関係を否定する要素となりますが、一方、代替性が認められていない場合には指揮監督関係を補強する要素のひとつとなります。

加部建材・三井道路事件 東京地裁 平成15.6.9

ダンプ持込者(傭車運転手)と運搬業務委託者との傭車運搬委託契約が、勤務時間や業務遂行の拘束性、報酬の労務対価性などから判断して、民法上の雇用契約や労基法上の労働契約には該当しないとされ、同業の運転手に対する暴力行為などを理由とする傭車運搬委託契約の解除が、解約権の濫用に該当せず、有効とされた。


和歌の海運送事件 和歌山地裁 平成16.2.9

自己所有の貨物自動車運転手が、高血圧脳内出血・脳梗塞により、追突事故を起こし身体障害者になった。いわゆる傭車運転手であった。所得税は源泉徴収していたが、社会保険料等は控除されていなかった。その一方、仕事の指示は逐次指示を受けていた。実態として自分の意思で休みを取ることもできなかった。

裁判所の判断

配送業務に従事する傭車運転手は、運送会社に使用される労働者とはいえないが、傭車運転手に運送会社の指揮監督の下に労務を提供する関係が認められ、雇用契約に準じるような使用従属関係があった。よって、信義則上、被告は原告に対し、安全配慮義務を負うべき立場にあった。原告の休日の取得を妨げたという非難を免れず、過重な業務に従事させたものである。

損害賠償総額6,886万余円を認容(医療費48万余円、入院費5万余円、休業損害60万余円、入通院慰謝料85万余円、逸失利益は症状固定時を56歳として3,987万余円、慰謝料2,700万円)。


呉港運送・倉本組事件 大阪地裁 平成15.8.29

傭車運転手に、陸運局の指導により賃金規程を適用することになったが、その時点で「従業員」となったとした。


真壁組事件 大阪高裁 平成10.10.23

生コンミキサー車運転手の労働者性が認容された。


セキノ興産事件 昭和49.2.22

自己所有のトラックを持込んで業務を行うトラック運転者について、下記状況から、雇用契約に自動車賃貸借契約を含んだ一種の混合契約であったとして、労働者性を求めた。

(1) 勤務時間が午前9時から午後5時30分と義務づけられている

(2) 毎日会社の配車係から配達先、配達内容などの指示を受け、積み込み、配達に従事するかたわら集金、注文取りなどの業務を行う

(3) 配達には、会社の助手が就くことがあり、逆に会社の自動車の助手に就いたり、他の自動車を運転することがある

(4) 当日の配達が終わっても、午後5時30分までは加工作業の手伝いなどを行わせられることも多い

(5) 報酬は他の従業員に比しても必ずしも高いものでなく、ロッカーの配置、使用などは同じ待遇であった


報酬の労務対償性に関する判断基準

報酬が出来高制ではなく、時間単位、日単位で支払われる場合には、下記(1)、ロのようにその額が高い場合であっても、報酬の労務対償性が強く、「使用従属性」の存在を補強する重要な要素となります。

「労働者性」の判断を補強する要素

(1)事業者性の有無

イ 機械、器具の負担関係

「傭車運転手」は高価なトラック等を自ら所有するので、一応、「事業者性」があるものと推認されます。

ロ 報酬の額

報酬の額が同社の同種の業務に従事する正規従業員に比して著しく高価な場合には、当該報酬は、「事業者」に対する代金の支払いと考えられ、「労働者性」を弱める要素となります。

ただし、報酬の算定方法によっては、報酬の額が著しく高額なことが「労働者性」を弱める要素とならない場合もあります。

(2)専属性の程度

イ 他社の業務に従事することが制約され、又は他社の業務に従事する場合であっても、それが「使用者」の紹介、斡旋等によるものであるということは、専属性を高めるという意味であり、「労働者性」を補強する要素のひとつとなる場合もあるものと考えられます。

ロ 報酬に固定給部分がある等生活保障的要素が強いと認められる場合も、上記ロと 同様、「労働者性」を補強する要素のひとつになるものと考えられます。

(3)その他

報酬について時給制であったり、給与所得として源泉徴収を行っているか否か、労働保険の適用対象としているか否か、服務規律を適用しているか否か等は、当事者の認識を推認する要素であり、当該判断を補強するものとして考えて差し支えないでしょう。


車輌運行管理業務の判断基準

(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準によります)

次のような要件に該当する場合には、「請負」になります。

(1) あらかじめ定められた様式により運行計画(時刻、目的地など)を注文主から提出させ当該運行計画が安全運転の確保、人員体制などから不適切なものとなっている場合には、受託者がその旨を注文主に申し入れ変更できるものとなっていること。
(2) 自動車事故などが発生し、注文主が損害を被った場合には、受託者が注文主に対して損害賠償の責任を負う(または求償に応ずる)旨の規定を契約書に明記するとともに、当該責任を負う意思及び履行能力を担保するため、受託者が自動車事故などに係る任意保険に加入していること。
(3) 運転者のみならず、管理車両の整備(定期整備を含む)及び修理全般、燃料・油脂などの購入、車両管理のための事務手続き、事故処理全般などについても受託することで、注文主の自動車の管理全体を行っているものであり、また、当該受託業務の範囲を契約書に明記していること。

労働基準法研究会報告(昭和60年)より

研究会の判断 運転手H:労働者である 運転手G:労働者でない
事業の内容 主として公共土木工事の設計、施工 建築用コンクリートブロックの製造及び販売
運転手の業務の種類、内容 会社施工の工事現場において土砂の運搬の業務に従事するいわゆる白ナンバーのダンプ運転手 自己所有のトラック(4トン及び11トン車、1人1台)による製品(コンクリートブロック)の運送
契約の内容 (1)運転手は、積載量10トンのダンプカー1台を所有し、会社と契約して会社施工の工事現場で土砂運搬を行っている。
契約書は作成しておらず、専属として土砂運搬を行うもので、本人が自己の意思で他社の建設現場ヘダンプ持ちで働きに行くことは暗黙のうちに会社を退社するに等しいものと考えられている。
(2)ダンプを稼働した場合の報酬は1日につき35,000円であり、その請求は本人が毎月末に締め切って計算のうえ会社に対し行っている。
会社は、この請求に基づいて稼働日数をチェックし、本人の銀行口座へ翌月10日に振リ込んでいるが、この報酬については、給与所得としての源泉徴収をせず、運転手本人が事業所得として青色申告をしている。
(3)稼働時間は、午前8時から午後5時までとなっているが、ダンプによる土砂運搬がない場合には、現場作業員として就労することもできる。
この場合には、賃金として1日につき5,500円が支払われる。したがって、本人は土砂運搬作業の有無にかかわらず、始業時間までに現場に出勤しておリ、現場では、いずれの場合にも現場責任者の指示を受け、出面表にはそれぞれの時間数が記録されている。
現場作業員として就労した場合の賃金は、一般労働者と同様、月末締切りで翌月5日に現金で支払われ、この分については、給与所得としての源泉徴収がされている。
(4)ダンプの所有は運転手本人となっており、ローン返済費(月15万円)、燃料費(月20日稼働で15〜16万円)、修理費、自動車税等は本人負担となっている。
(5)社会保険、雇用保険には加入していない。
書面契約はなく、口頭により、製品を県外の得意先に運送することを約したもので、その報酬(運賃)は製品の種類、行先及び箇数により定めている。
業務従事の諾否の自由 会社は配車表を作成し、配車伝票によって業務を処理しており、一般的にはこれに従って運送していたが、時にこれを拒否するケース(特段の不利益取扱いはない。)もあり、基本的には運転手の自由意思が認められている。
指揮命令 運送業務の方法等に関して具体的な指揮命令はなく、業務遂行に当たって補助者を使用すること等も運転手の自由な判断にまかされ、時に上記配車伝票に納入時刻の指定がされる程度で運転手自身に業務遂行についての裁量が広く認められている。
就業時間の拘束性 通常、運転手は午後会社で積荷して自宅に帰り、翌日、自宅から運送先に直行しており、出勤時刻等の定め、日又は週当たりの就業時間等の定めはない。
報酬の性格 報酬は運賃のみで、運賃には車両維持費、ガソリン代、保険料等の経費と運転業務の報酬が含まれていたと考えられるが、その区分は明確にされていない。
報酬の額 報酬の額は月額約40万円と、社内運転手の17〜18万円に比してかなり高い。
専属性 契約上他社への就業禁止は定めておらず、現に他の運転手2名程度は他社の運送にも従事している。
社会保険、税金等 社会保険、雇用保険等には加入せず(各人は国民健康保険に加入)、また報酬については給与所得としての源泉徴収が行われず、運転手本人が事業所得として申告している。
労働者性の判断
(1)使用従属性について (1)業務遂行について現場責任者の指示を受けていること
(2)土砂運搬がない場合は、現場責任者の指示を受け現場作業員として就労することがあること
(3)勤務時間は午前8時から午後5時までと指定され、実際の労働時間数が現場において出面表により記録されていることに加え、
(4)土砂運搬の報酬は下記(2)でみるようにかなり高額ではあるが、出来高ではなく日額で計算されていることから、「使用従属性」があるものと考えられる。
(1)仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由があること、
(2)業務遂行についての裁量が広く認められており、他人から業務遂行上の指揮監督を受けているとは認められないこと、
(3)勤務時間が指定、管理されていないこと、
(4)自らの判断で補助者を使うことが認められており、労務提供の代替性が認められていることから使用従属性はないものと考えられ、
(5)報酬が出来高払いであって、労働対償性が希薄であることは、当該判断を補強する要素である。
(2)労働者性の判断を補強する要素について (1)高価なトラックを自ら所有していること、
(2)報酬の額は月20日稼働で70万円(ローン返済費及ぴ燃料費を差し引くと約40万円)であって、その他の事情を考慮してもかなり高額であること、
(3)社会保険の加入、税金の面で同社の労働者として取り扱われていないことは「労働者性」を弱める要素であるが、上記(1)による「使用従属性」の判断を覆すものではない。
(1)高価なトラックを自ら所有していること、
(2)報酬の額は同社の社内運転手に比してかなり高いこと、
(3)他社への就業が禁止されておらず、専属性が希薄であること、
(4)社会保険の加入、税金面で同社の労働者として取り扱われていなかったことは「労働者性」を弱める要素である。
(3)結論 本事例の運転手Hは、労働基準法第9条の「労働者」であると考えられる。 本事例の運転手Gは、労働基準法第9条の「労働者」ではないと考えられる。

ケーススタディー【在宅勤務】


在宅勤務者の労働者性

〔「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(昭和60.12.19)〕

いわゆる「在宅勤務者」とは、自宅において就業する労働者をいいますが、このような就業形態の者は今後増加していくものと考えられることから、自営業者、家内労働者等と区別し、どのような形態の「在宅勤務者」が労働基準法9条の「労働者」に該当するか、その判断基準を明確にする必要があります。


「使用従属性」に関する判断基準

(1)「指揮監督下の労働」に関する判断基準

イ 仕事の依頼、従事業務の指示等に対する許諾の自由の有無当該許諾の自由があることは、指揮監督関係を否定する重要な要素になりますが、一方、当該許諾の自由がないことは、契約内容による場合もあり、指揮監督関係の存在を補強する一つの要素に過ぎないものと考えられます。

ロ 業務遂行上の指揮監督の有無

会社が業務の内容及び遂行方法を指示し、業務の進捗状況を本人からの報告等により把握、管理している場合には、業務遂行過程で「使用者」の指揮監督を受けていると考えられ、指揮監督関係の存在を肯定する重要な要素となります。

ハ 拘束性の有無

勤務時間が定められ、本人の自主管理及び報告により「使用者」が管理している場合には、指揮監督関係の存在を肯定する重要な要素となります。

ニ 代替性の有無 指揮監督関係の判断を補強する要素

当該業務に従事することについて代替性が認められている場合には、指揮監督関係を否定する要素となります。

(2)報酬の労務対償性の有無

報酬が時間給、日給、月給等時間を単位として計算される場合には、「使用従属性」を補強する重要な要素となります。


「労働者性」の判断を補強する要素

(1)事業者性の有無

イ 機械、器具の負担関係

自宅に設置する機械、器具が会社より無償提供されている場合には、「事業者性」を薄める要素となるものと考えられています。

ロ 報酬の額

報酬の額が、同社の同種の業務に従事する正規従業員に比して著しく高価な場合には、「労働者性」を弱める要素となるものと考えられますが、通常そのような例は少ないです。

(2)専属性の程度

イ 他社の業務に従事することが制約され、又は事実上困難な場合には、専属性の程度が高く、「労働者性」を補強する要素のひとつとなります。

ロ 報酬に固定給部分がある等生活保障的要素が強いと認められる場合も、上記ロと 同様、「労働者性」を補強する要素のひとつになります。

(3)その他

報酬について給与所得として源泉徴収を行っているか否か、労働保険の適用対象としているか否か、採用、委託等の際の選考過程が正規従業員の場合と同様であるか否か等は、当事者の認識を推認する要素に過ぎないものではありますが、上記の各基準によっては「労働者性」の有無が明確に成らない場合には、判断基準のひとつとして考えなければならないでしょう。


他の労働者と差がなければ、労働契約とみなされる

したがって、在宅勤務者であっても、毎日の作業時間や作業方法について、日々指示を受けて作業を行っていたり、報酬についても、時給制となっているなど、他の正規労働者の賃金と変わらないような報酬となっている場合には、形式上「請負・業務委託契約」を締結していたとしても、労働契約とみなされ、その者は労働者となります。

一方、報酬が他の労働者よりも高額であったり、作業の遂行方法などはすべて個人に任せ、他社の業務に就くことも可能な状態であれば、請負契約になるといえます。

また、在宅勤務者に会社の機械を使用させる場合には、別途リース契約などの双務契約を締結し、無償ではなく、有償にする必要性もあるといえるでしょう。

関連事項:内職・在宅勤務・家内労働


労働基準法研究会報告(昭和60年)より

研究会の判断 在宅勤務者I:労働者である 在宅勤務者J:労働者でない
事業の内容 ソフトウェアの開発、計算業務の受託、電算室の総括的管理運営 速記、文書処理
在宅勤務者の業務の種類、内容 会社よりミニファックスで伝送される仕様書等に基づき、プログラムの設計、コーディング、机上でのデバッグを行う。 元正社員であった速記者が、会議録等を録音したテープを自宅に持ち帰り、ワープロに入力する。
契約関係 期間の定めのない雇用契約により、正社員として採用している。 「委託契約」により、納期まで1週間から1ヶ月程度の余裕のある仕事を委託しており、納期の迫っているものは正社員にやらせている。
業務の諾否の自由 会社から指示された業務を拒否することは、病気等特別な理由がない限り、認められていない。 電話により又は出社時に、できるかどうかを確認して委託している。
指揮命令 業務内容は仕様書等に従ってプログラムの設計等を行うことであり、定形化しており、通常、細かな指示等は必要ない。なお、10日に1回出社の義務があり、その際、細かい打合わせ等をすることもある。 業務の内容が定形化しており、個々具体的に指示することは必要なく、週1回程度の出社時及ぴ電話により進捗状況を確認している。
就業時間の拘束性 勤務時間は、一般従業員と同じく午前9時から午後5時(休憩1時間)と決められており、労働時間の管理、計算は本人に委ねている。 勤務時間の定めはなく、1日何時間位仕事ができるかを本人に聴き、委託する量を決める。
報酬の性格及び額 報酬は、一般従業員と同じく月給制(固定給)である。 在宅勤務者個々人についてテープ1時間当たりの単価を決めており、テープの時間数に応じた出来高制としている。
専属性 正社員であるので、他社への就業は禁止されている。
機械、器具の負担 末端機器及び電話代は、会社が全額負担している。 会社がワープロを無償で貸与している。
その他 給与所得としての源泉徴収、労働保険への加入はしていない。
労働者性の判断
(1)使用従属性について (1)業務の具体的内容について、仕様書等により業務の性質上必要な指示がなされていること、
(2)労働時間の管理は、本人に委ねられているが、動務時間が定められていること、
(3)会社から指示された業務を拒否することはできないことに加えて、
(4)報酬が固定給の月給であることから「使用従属性」があるものと考えられる。
(1)会社からの委託を断ることもあること、
(2)勤務時間の定めはなく、本人の希望により委託する量を決めていること、
(3)報酬は、本人の能力により単価を定める出来高制であること、
(4)業務の具体的内容、その遂行方法等について特段の指示がないことから、「使用従属性」はないものと考えられる。
(2)労働者性の判断を補強する要素について (1)業務の遂行に必要な末端機器及ぴ電話代が会社負担であること、
(2)報酬の額が他の一般従業員と同等であること、
(3)正社員として他社の業務に従事することが禁止されていること、
(4)採用過程、税金の取扱い、労働保険の適用等についても一般従業員と同じ取扱いであることは「労働者性」を補強する要素である。
業務の遂行に必要なワープロは会社が負担しているが、他に「労働者性」を補強する要素はない。
(3)結論 本事例の在宅勤務者Iは、労働基準法第9条の「労働者」であると考えられる。 本事例の在宅勤務者Jは、労働基準法第9条の「労働者」ではないと考えられる。

ケーススタディー【製造ライン】


指揮命令の実情により判断

製造業務について、個人と請負契約を締結する場合には、その者を直接指揮命令しないことが必要になります。

このため、「請負」や「業務委託」が成り立つためには、以下のような条件が必要となってきます。


業務の内容・量←注文主から受ける

受託者は一定期間に処理すべき業務の内容や量の注文を注文主から受けるようにします。

注文主からの原材料、部品等の受取りや、注文主への製品の受渡しについて、伝票等による処理体制が確立されていることが必要です。


作業者の配置・人員数 は←受託業者が決定する

業務中は注文主から直接指示を受けることのないよう書面を作成し、それに基づいて受託者側の現場責任者の指示によって作業を進めます。

原材料、部品などの受け取りや受託者から注文主への製品の受け渡しについて、伝票などによる処理体制が確立されていることが必要です。


作業の進め具合←受託業者が決定する

進行速度は受託者自らの判断で決定することができます。従事者の業務時間については、受託側が把握できるようにしておきます。

受託量の増加に伴う受託業務従事者の時間外、休日労働は、受託者側の現場責任者が業務の進捗状況などをみて決定し、指示します。

業務量の増加に伴い、時間外・休日労働が必要な場合は、受託者側の現場責任者がその決定をし、指示を行います。


作業場に設置された機械設備の利用←別途、双務契約を結ぶ

また、注文主の所有する機械、設備などの使用については、請負契約とはリース契約など別個の双務契約を締結し、保守及び修理を受託者が行うか、ないしは保守及び修理に要する経費を受託者が負担していることを要します。

以上から、製造ラインの一部を請負業務とすることは容易ではありません。

ラインごと請け負わせるなどの方法になるでしょう。


ケーススタディー【バンケットサービス】


現場に受託者側の管理責任者を配置する

宴会の設定・運営などのバンケットサービス業務について業務請負行う場合には、その従業員をホテル等が直接指揮命令しないことが必要になります。

このため、「請負」や「業務委託」が成り立つためには、以下のような条件が必要となります。


業務の内容・量←あらかじめ受託業者が注文主と打ち合わせる

受託者は一定期間に処理すべき業務の内容や量の注文を注文主から受けるようにします。

受託者はバンケットコンパニオンがホテル等から業務の遂行の指示を受けることのないよう、あらかじめホテル等と、挨拶、乾杯、歓談、催し物等の進行順序、それぞれの時点におけるサービスの内容・注意事項などについて、取り決めておく必要があります。


作業者の配置・人員数は←受託業者が決定する

業務に従事するバンケットコンパニオンの決定については、ホテル等による指名や面接選考等を行わず、受託業者自らが決定します。

同一宴会を、複数のバンケット業者が請け負う場合は、異なるバンケットコンパニオンが共同して1つのサービスを実施することがないよう、あらかじめ各バンケット業者が担当するテーブルやサービス内容を明確に区分します。


サービスの進め具合←受託業者責任者が現場を仕切る

宴会が予定した時間を超えた場合の請負契約に定められたサービス提供の終了時間の延長についてのホテル等との交渉は受託者側の現場責任者が行います。この場合、コンパニオンへの指示も、受託者側の責任者が行います。


受託業務による損害発生←受託業者が責任を負う

給食調理などの場合では、契約書等に食中毒等の発生により注文主が損害を被った場合、受託者が注文主に対し損害賠償責任を負う(又は求償権に応ずる)旨の規定を明記しておきます。


ケーススタディー【研修医】


指揮命令下での労務遂行であれば労働者

医大卒業生は、卒業後、指導医の指揮下で2年以上研修医として医療活動に従事するよう定められています。

最高裁は、臨床研修医の場合、すでに国家試験に合格し、医師免許を交付されて医業をなし得る医師であり、研修の内容が点滴・採血を自ら行い、指導医の許可を得た場合は1人で患者に対する処置をしている、また、研修医の勤務状況を病院側が管理しているという実情を取り上げて、研修医は労働基準法9条にいう「労働者」であるとしています。

関西医科大学研修医(未払賃金)事件 最高裁 平成17.6.3

医科大学の卒業生が付属病院で臨床研修を受けていたが、自宅で急性心筋梗塞により急死した。研修時間は、午前7時30分から午後10〜11時頃まで及び、指導医が宿直のときは副直を担当し、休日にも頻繁に呼び出されていた。研修時間中は指導医の指示に対する諾否の事由はなかった。

研修医は、奨学金として6万円、副直手当として1万円が支給されるのみであった。これが最低賃金法違反として争われた。

最高裁は、奨学金等が給与所得として源泉徴収まで行われていたことに着目し、最賃法上の労働者に当たることを認めた。

なお、同事件は、(1)死亡原因が病院側の安全配慮義務違反による過労が原因だとして債務不履行による損害賠償請求として、(2)私学共済に加入されなかったことが不法行為として損害賠償請求として、別途争われており、この両事件とも労働者性が認められている。

関連事項:過労死


ケーススタディー【医療事務】


現場に受託者側の管理責任者を配置する

病院の医事事務などの受託業務について業務請負を行う場合には、その従業員を病院側が直接指揮命令しないことが必要になります。

このため、「請負」や「業務委託」が成り立つためには、以下のような条件が必要となります。


業務の内容・量←あらかじめ受託業者が注文主と打ち合わせる

受託業務従事者が病院等の管理者又は病院職員等から、その都度業務の遂行方法に関する指示を受けることがないよう、受託する"すべて"の業務について、業務内容やその量、遂行手順、実施日時、就業場所、業務遂行に当たっての連絡体制、トラブル発生時の対応方法等の事項について、書面を作成し、管理責任者が受託業務従事者に対し具体的に指示を行います。


業務遂行状況←受託業者は随時把握しておく

受託業者は、管理責任者を通じ定期的に、受託業務従事者の様子や病院等の担当者の意見を聴取する。あるいは、これらの者との打合せの機会を活用し、受託業務従事者の業務遂行についての評価を受託業者自らが行います。


従事者の服務規律←受託業者が指示する

職場秩序の保持、風紀維持のための規律等の決定、指示は、受託者が自ら行います(衛生管理上等別途の合理的理由に基づいて病院等が労働者の服務上の規律に関与する場合を除きます。)。

聴取及び打合せの際や、定期的巡回によって、職務場所での規律、服装、勤務態度等の管理を受託者自らが行います。

こうしたことについて、あらかじめ病院の担当者に対して説明します。


業務上の問題発生←受託業者がその責任を負う

受託業務の処理により、病院等及び第三者に損害を与えたときは、受託者が損害賠償の責任を負う旨の規定を請負契約に定めておきます。


ケーススタディー【実習生】


実態判断により労働者ではないとされる

商船大学の実習生、看護婦等要請所の生徒については、民間の事業場に委託して実習を行う場合、「労働者」ではないものとして扱うという労働省通達(昭和57.2.19 基発121号)が出ています。

関西医科大学研修医(未払賃金)事件(最高裁 平成17.6.3)の判決では、この通達に触れ、上記の実習生は教育活動の一環として、通常、一般労働者とは別の場所で行われ、直接生産活動に従事させるものではないこと、実習生の勤務・履修状況について最終的に学校が把握、管理していること、委託先事業場から支給されている手当も1日300〜500円程度で実費補助ないし恩恵的な給付に過ぎないことなどの実態を総合的に勘案したうえでの判断だとしました。


ケーススタディー【大工】


労働基準法研究会報告(昭和60年)より

研究会の判断 大工A:労働者である 大工B:労働者でない
事業の内容 住宅建築工事 中層ビル建築工事
大工の業務の内容 住宅の床、壁、天井等の建付を行う。発注者から材料の供給を受けて、当該建築現場内においてのみ刻み、打付け等の作業を行う。 ビルの梁、柱、壁等の形にベニヤ板等により型枠を作成する。当該部分に、生コンを流し込むことにより梁、柱等が建造されていく。材料は発注者から供給を受ける。ベニヤ等の刻み、打付けは当該建築現場において行う。
契約関係 書面契約はなく、口頭による。受注部分は、発注者自身が請け負った住宅の一区画である。報酬は3.3u当たり5万円を基本とし、工事の進捗状況により、毎月末を支払日としている。 書面契約はなく、口頭による。受注部分は、ビル建築現場における一区画を15名のグループで請け負ったもの。報酬は3.3u当たり15万円。支払は随時請求することも工事の進捗状況により可能であるが、工事終了後、一括してグループ全体として受ける。Bはグループの代表として報酬を受け、グループの構成員にはBから分配をする。
業務従事の指示に対する諾否の自由 Aは継続的にこの発注者から仕事を受けており、断ると次から仕事がもらえなくなって収入が途絶えることを恐れて、事実上仕事の依頼を断ることはない。しかし、仕事を断ろうと思えば断る自由はあり、都合が悪ければ実際に断ることもある。また、例えばAが刻みを終えると、次は打付けをするようにという業務従事の指示があり、Aはこれを拒否できない。 複数の発注者から仕事を受けており、仕事の依頼を断ることもある。
指揮命令 発注者はAに仕様書及び発注書で基本的な作業の指示を行い、さらに作業マニュアルで具体的な手順が示されている。また、定期的に発注者の工事責任者が現場に来て、Aらの作業の進捗状況を点検している。また、他の現場の建前への応援作業を指示される場合があり、この場合には、発注者から日当の形で報酬の支払を受ける。 作業方法等に関しては、発注者から、他工程との関連から、施工時期や安全施行に関する指示を受けることはあるが、その他の施行方法については、状況を見ながら自己が判断して決定する。また、他の現場への応援作業を依頼される場合があるが、この場合の報酬は、基本的に他のグループとの間でやりとりされる。
就業時間の拘束性 Aは、原則として毎日発注者の事務所へ赴き、そこで工事責任者の指示を仰いだ後に現場に出勤している。また、作業を休む場合には、発注者に事前に連絡することを義務付けられている。勤務時間の指示はされていないが、発注者に雇用されている他の労働者と同じ時間帯に作業に従事しており、事実上毎日午前8時から午後5時まで労務を提供している。 当該工事内の始業、終業時間は一応定められているが、Bはこれに拘束されることはなく、工事の進捗状況により、発注者と相談の上作業時間が決定される。朝礼や終業時のミーティングに参加することはあるが、義務付けられてはいない。
代替性の有無 Aが自己の判断で補助者を使用することは認められない。 施行に当たり、B自身が作業することは契約内容になっておらず、Bが自己の判断で補助者を使用することは自由である。
報酬の性格 報酬は請負代金のみで、交通費等の経費はすべてAの負担となるが、他の現場へ応援に行く場合は、発注者の雇用労働者と同程度の額が日当の形で支払われる。 報酬は請負代金のみで、交通費等の経費はすべてBの負担となる。なお、グループ内の他の構成員への報酬支払責任は最終的にBが負う。
その他 材料加工用の工具は、釘等を含め、発注者側に指示されたものをAが用意するが、高価な物はない。工事途中に台風などにより破損した箇所は発注者側の経費により修理される。社会保険、雇用保険には加入せず、報酬についてはA本人が事業所得として申告をしている。 材料加工用の工具は、高価な据置式の工作機械を含めてBらが用意したものを使用する。社会保険、雇用保険には加入せず、報酬については事業所得として申告している。
労働者性の判断
(1)使用従属性について (1)業務従事の指示に対して許諾の自由を有していないこと、
(2)業務遂行について、かなり詳細な指示を受け本人に裁量の余地はあまりないこと、
(3)勤務時間についても実質的な拘束がなされていることから使用従属性があるものと考えられる。
(1)仕事の依頼についての諾否の自由はあること、
(2)業務遂行について、裁量が広く認められており、指揮監督を受けているとは認められないこと、
(3)勤務時間が指定、管理されていないこと、
(4)自己の判断で補助者を使用することが認められており、労務提供の代替性が認められていることから使用従属性ははいものと考えられる。
また、報酬が出来高制となっており、労務対償性が希薄であることは、当該判断を補強する要素である。
(2)労働者性の判断を補強する要素について 工具等を自ら負担していること、社会保険の加入、税金の面で労働者として取り扱われていないことは「労働者性」を弱める要素であるが、上記(1)による「使用従属性」の判断を覆すものではない。また、代替性が認められていないことは、労働者性を補強する要素となる。 高価な工具を自ら負担していること、社会保険の加入、税金の面で労働者として取り扱われていないことは、「労働者性」を弱める要素である。
(3)結論 本事例の大工Aは、労働基準法第9条の「労働者」であると考えられる。 本事例の型枠大工Bは、労働基準法第9条の「労働者」ではないと考えられる。

ケーススタディー【俳優】


労働基準法研究会報告(昭和60年)より

研究会の判断 俳優C:労働者である 俳優D:労働者でない
事業の内容 映画の撮影の事業、制作期間5ヶ月(うち撮影期間3ヶ月) 映画の撮影の事業、制作期間5ヶ月(うち撮影期間3ヶ月)
俳優の業務の種類、内容 映画作品の撮影現場において、一言だけ「台詞」がある喫茶店のウエイトレスの役を演じる。 映画作品の主役を撮影現場において演じる。
契約の内容 ある程度撮影が進行した段階で、撮影日時、場所を特定して出演することを、口頭により制作会社と約したもの。契約期間は2日間であるが、撮影の進行状況によっては、拘束日数が数日間延長されることもある。報酬は、俳優の実績、人気や役柄の重要性に応じて設定されている「ランク」と呼ばれる出演料の基準により約定されている。 制作会社との書面契約により、3ヶ月の撮影期間において必要な都度出演することを約したもの。いわゆる「ノーランク」であり、契約締結に際して報酬を交渉の上決定したが、その報酬は実際に撮影に要した日数によらず一定額とされている。
業務従事の指示に対する諾否の自由 当初から撮影日時等が特定されているが、撮影期間を数日間延長する旨の指示があった場合に、これを事実上拒否することはできない。 出演依頼が多く、スケジュールが詰まっていることも多いので、都合の悪い時などはロケ撮影の日程の変更を主張することができる。
指揮命令 演じる役の性質上、演技内容、方法等については、あらかじめ決定された場面設定によりほとんど特定されているが、撮影の状況によっては、監督等が具体的な指示を行い、自己の裁量によって演技する部分はほとんどない。また、監督等の指示により、当初の依頼とは異なる役を演じさせられることがある。 演技内容については、事前あるいは撮影の途中に監督等と打合せを行う。その段階で俳優としての自己のイメージなども主張するなど自分の意向が、かなり反映される。
撮影時間の拘束性 映画制作の性質上、撮影時間は指定・管理される。一日の撮影時間の中の具体的な撮影、休憩、異動の時間の割り振りはCの都合を考慮せずに一方的に決定され、これに従わざるを得ない。また、制作会社の都合で当初決まっていた撮影の時間帯を変更する場合であっても、Cはこの指示に従わなければならない。 決定された撮影時間には拘束されるが、実際の撮影時間の決定においては、Dの都合が優先的に考慮される。
報酬の性格及び額 報酬は拘束日数に基づいて算定されていないが、拘束時間が大幅に延長された場合には多少追加の報酬を受ける。報酬の額は、「ランク」の最低の5万円である。 報酬の額は、3ヶ月の撮影期間すべてに対するもので、実際の日数にかかわらず、2千万円弱である。「ランク」に基づいて出演料が決定される俳優に比べて著しく高い。
専属性 3ヶ月の撮影期間中においても、他会社の作品に出演することは、日程上可能であれば制限はなく、当該制作会社の作品に専属的に出演してはいない。
その他 社会保険、雇用保険には加入していない。報酬については、エキストラとして出演しているアルバイトと同様に制作会社が給与所得としての源泉徴収を行っている。 社会保険、雇用保険には加入せず、報酬についても、Dが事業所得として申告している。また、撮影に用いる高価な衣装は自分で用意する。
労働者性の判断
(1)使用従属性について (1)撮影期間が延長される場合であっても拒否することはできないこと、
(2)演技方法等があらかじめ特定され、本人に裁量の余地はほとんどないこと、
(3)具体的な撮影時間等の割り振りが一方的に決定され、これに従わざるを得ないことから使用従属性があるものと考えられる。
また、当初の役以外の役を演ずることを拒否できないことは、当該判断を補強する要素である。
(1)業務従事の指示に対する許諾の自由があること、
(2)演技方法について本人の意向が相当反映されること、
(3)撮影時間の決定に当たって本人の都合が優先的に考慮されることから使用従属性はないものと考えられる。
また、報酬の額が撮影日数に対応しておらず、その額が他の俳優に比べて著しく高いことは、当該判断を補強する要素である。
(2)労働者性の判断を補強する要素について 税金の面で労働者として取り扱われていることは、労働者性を補強する要素となる。 高価な衣装を自ら負担していること、社会保険の加入、税金の面で労働者として取り扱われていないことは、「労働者性」を弱める要素である。
(3)結論 本事例の俳優Cは、労働基準法第9条の「労働者」であると考えられる。 本事例の俳優Dは、労働基準法第9条の「労働者」ではないと考えられる。

ケーススタディー【撮影技師】


裁判でも判断は分かれる


新宿労基署長(映画撮影技師)事件 東京高裁 平成14.7.11 東京地裁 平成13.1.25

カメラマンが撮影先の旅館で脳梗塞により死亡。家族が遺族補償を求めたが、労基署は労働者でないという理由で不支給処分とした。

一審の判断

労働者性を否定。

仕事の諾否の制約、時間的・場所的拘束などがあるが、これは仕事の性質・特殊性に伴う当然のものであり、撮影業務遂行上に相当程度の裁量があり、使用者による指揮監督があったとは認めがたい。

二審の判断

労働者だと認めた。業務起因性については、判断を留保した。

専属性は低く、就業規則の適用もなく、報酬も事業所得として申告されているが、監督の指揮監督の下に業務が行われ、報酬も労務提供機関を基準にして算定して支払われる。個々の仕事の諾否の自由が制限され、時間的・場所的拘束性も高い。機材もプロダクションのものを使用している。


ケーススタディー【ホステス】


使用従属性等によって判断


クラブ「イシカワ」(入店契約)事件 大阪地裁 平成17.8.26

入店契約を結んで働いていたホステスが、解約を通告された。ホステスはこの契約が雇用契約に当たるとして、解雇予告手当・未払賃金(懲戒処分的な減給が総額の10分の1を超えていた)と遅延損害金の支払を求めた。

裁判所の判断

入店契約は、労務提供であり、労働基準法の適用がある。

解雇予告手当534,600円、未払賃金147,500円が認容。付加金請求は棄却。

(1) 使用従属性

原告には仕事依頼の応諾の自由はない。

業務遂行上の指揮監督が認められる(小規模なミーティングの他、月1回の点呼を実施)。

タイムカードで管理され、遅刻や欠勤のペナルティがあって、拘束性が認められる。

契約の成否は個人的な要素に負うところが極めて高く、代替性はない。

(2) 労務対償性

1日出勤すれば30,000円は保証、売上額によって加算、という報酬には労務対償性が認められる。

(3) 事業者性

原告負担の衣服料が高額であり、時給が7,000円以上であったとしても、事業者性を認めることはできない。

(4) 専属性

勤務時間外に他の業務に従事することが可能だとしても、それをもって専属性を否定することはできない。

(5) 口座制(ホステスチャージの個人払い)による管理

ホステスチャージは一旦クラブの口座に送金された後に各人に支払われており、クラブの接客サービスと一体となった制度であり、口座客を持つホステスをデパートのテナントと同視することはできない。

※ただし、ホステスチャージについては、賃金としての性格を有しているとはいえないので、解雇予告の算定には含まれない。

(6) 慣習等

外形上、原告に売上が計上され、所得税法上や社会保険上の事業主として扱っていたとしても、入店契約の内容を決定づけるものではない。

(7) 有期雇用者であるとの店側の主張

期間を1ヶ月としてその都度更新してきたという被告主張には、証拠が認められない


パインヒル・インターナショナル事件 東京地裁 平成11.3.19

クラブと大ママとの契約が、ホステスの指導・管理だけでなく、接客業務も契約の本質であったとして、労働契約に該当するとされた。


長谷川実業事件 東京地裁 平成7.11.7

ホステスとして接客サービスという労務を提供し、歩合制を含む賃金を支払うという労務契約であるとの判断が示された。


ルイジュアン事件 東京地裁 平成3.6.3

クラブ店舗内でクラブと共同して、または独自の立場で遊興飲食業を営む契約の色彩が濃く、雇用契約とは著しく異なる


労働基準法研究会報告(昭和60年)より

研究会の判断 撮影助手E:労働者である 撮影技師F:労働者でない
事業の内容 映画の撮影の事業、制作期間5ヶ月(うち撮影期間3ヶ月) 映画の撮影の事業、制作期間5ヶ月(うち撮影期間3ヶ月)
撮影助手・技師の業務の種類、内容 映画作品の撮影現場において、撮影のための光量の測定や色温度の計測、機材のセッティング、ピントの調整等を行う。撮影スタッフのランクの中でもサードと呼ばれ、指示系統の序列の中で最後位に位置する。 映画作品の撮影現場において、出演者の動きなどを見て、監督や証明技師等と打ち合わせた上でカメラアングル等を決定し、カメラを操作する。その他に、「ロケハン」といわれる撮影準備作業に参加するなど作品全体の構成決定に参加する。一般に「メインスタッフ」と称される。
契約の内容 制作会社と口頭の約束により、3ヶ月の撮影期間内を目安に、大まかな撮影スケジュールを特定し、撮影作業に従事することを約したもの。報酬については、サードの撮影助手の相場を参考にして、拘束日数を目安に算定されている。 制作会社との書面契約により、撮影の準備作業を含め5ヶ月間の制作期間作業することを約したもので、報酬は拘束を受ける月数により算定されている。
業務従事の指示に対する諾否の自由 3ヶ月間の撮影期間は、ロケ参加依頼等作業従事の指示を拒否できない。 5ヶ月間の制作期間は、ロケ撮影の参加依頼等を拒否することはできない。
指揮命令 作業の内容、方法等については、基本的にはチーフの撮影技師から、機材のセッティングの位置、ピントの調整程度の詳細に至るまで指示がある。撮影現場の状況によっては、作業方法が予め特定され、大まかな指示にとどまる場合もあるが、その場合でも、チーフの撮影技師に作業の進捗状況を報告するなど、いずれの場合も自己の裁量により決定し得る部分はほとんどない。また、監督等の指示により、撮影以外のパートを手伝わせることもある。 カメラアングルなど撮影方法等について、事前あるいは撮影の途中に監督等と打合せを行う。その段階での自己の提案は採用される部分が多く、監督等から一方的な指示を受けることはない。
撮影時間の拘束性 決定された撮影時間には拘束される。また、実際の撮影時間は、大物俳優のスケジュールに基づき設定され、自己の都合を反映させることはできない。 決定された撮影時間には拘束される。また、撮影時間の決定に当たっては主の俳優のスケジュールが優先され、原則として自己の都合を反映させることはできない。
報酬の性格及び額 報酬は、拘束日数に基づいて算定されており、拘束時間が延長された場合には延長された日数に応じて追加の報酬を受ける。報酬の額は、1ヶ月当たり15万円である。 報酬は、基本的には拘束される月数を目安に算定され、報酬の額は1ヶ月当たり、150万円弱である。
機材、器具の負担 撮影に使用する機材等は、自己所有の物を持ち込むことはない。 自己の所有する機材等を撮影に持ち込んで使用することはない。
専属性 当該制作会社に専属はしないが、撮影期間中は他の制作会社の作品において作業することは実際にはできない。 当該制作会社に専属はしていないが、5ヶ月の制作期間中は、他会社の作品で作業することはほとんどない。
その他 社会保険、雇用保険には加入していない。報酬については、作業の補助者として就業しているアルバイトと同様に制作会社が給与所得としての源泉徴収を行っている。 社会保険、雇用保険には加入せず、報酬についても、Fが事業所得として申告している。また、撮影に当たっては、自己の判断で補助者を使うことが認められている。
労働者性の判断
(1)使用従属性について (1)作業従事の指示を拒否できないこと、
(2)業務遂行について、通常は詳細な指示があり、本人に裁量の余地はほとんどないこと、
(3)撮影時間も自己の都合とは関係なく決定されて、これに従わざるを得ないことから使用従属性があるものと考えられる。
また、報酬が拘束日数に基づいて算定されることは、当該判断を補強する要素である。
(1)業務従事の指示について諾否の自由を有していないことは、労働者性を肯定する要素であるが、
(2)業務の遂行方法について一方的な指示を受けることはなく、本人の裁量の余地が大きいこと、
(3)自らの判断で補助者を使うことが認められていることから使用従属性はないものと考えられる。
(2)労働者性の判断を補強する要素について 税金の面で労働者として取り扱われていることは、労働者性を補強する要素となる。 社会保険の加入、税金の面で労働者として取り扱われていないことは、労働者性を弱める要素である。
(3)結論 本事例の撮影助手Eは、労働基準法第9条の「労働者」であると考えられる。 本事例の撮影技師Fは、労働基準法第9条の「労働者」ではないと考えられる。

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