所持品検査

所持品検査

所持品検査が適法とされるためには、次の4要件が満たされる必要があります。

(1) 所持品検査を必要とする合理的理由に基づくこと
(2) 一般的に妥当な方法と程度で行われること
(3) 制度として職場従業員に対して画一的に実施されるものであること
(4) 就業規則その他明示の根拠に基づき行われること

また、検査の必要性や方法についても大きなポイントとなります。

明らかに必要性がない場合や、あまりにもたびたび行われる場合は、異議を申し立て、拒否することもできると考えられます。

所持品検査が適法とされた判例

日経クイック情報(電子メール)事件 東京地裁 平成14.2.26

会社が、ある社員に誹謗中傷メールが送られてきた事件等について、調査するため、原告に対して、事情聴取を行ったことなどに対し、当該従業員が、(1)名誉毀損、(2)調査の際入手したデータの返却、またそのデータを印刷し多数に閲覧したことに対するプライバシー侵害、などについて慰謝料など550万円の訴えを起こした。

いずれも棄却された。

東京高裁は、

企業秩序の維持確保のため、企業は、違反行為の内容、様態、程度等を明らかにして、乱された企業秩序の回復に必要な業務上の指示、命令を発し、又は違反者に対し制裁として懲戒処分を行うため、事実関係の調査をすることができる、とした。

また、私用メールについて、原告にはその疑いをぬぐい去ることができない状況であったとした上で、会社が行った調査は、業務に必要なデータファイルサーバー上のデータ調査であり、ファイルの内容を含めて調査する必要が存する以上、その調査が社会的に許容しうる限界を超えて原告の精神的自由を侵害した違法な行為であるとはいえない、との判断を示した。

帝国通信工業懲戒解雇事件 横浜地裁川崎支部 昭和50.3.3

本件所持品検査は就業規則、特殊勤務規定、服務規律等の明文の根拠に基づいて、権限を与えられた守衛によって行なわれ、かつその実施につき企業の機密漏洩を未然に防止するとの具体的必要性があったものと認められる。

そして、その具体的必要性が生じたとき以降、退門しようとする従業員に対し画一的に実施され、これを行なう根拠については守衛から一応の説明があり、その方法もことさら従業員に屈辱感を与えるものではなく、妥当な方法と程度において行われたものと認めるのが相当である。

してみると本件所持品検査は・・・適法であり、従業員はこれを受忍する義務があるものといわなければならない。

西日本鉄道事件 最高裁 昭和43.8.2

就業規則に「所持品検査を求められたときは、これを拒んではならない」と規定していた。

靴の中の検査を求められた従業員が、これを拒否したため懲戒解雇処分となり、この無効を訴えた。

裁判所は、この懲戒解雇を有効とした。

いわゆる所持品検査は、被検査者の基本的人権に関する問題であって、その性質上つねに人権侵害のおそれを伴うものであるから、たとえ、それが企業の経営・維持にとって必要かつ効果的な措置であっても、当然に適法となるものではない。

しかし、制度として画一的に実施され、就業規則その他、明示の根拠に基づいて行われる場合は、方法や程度が妥当性を欠く等の事情がないかぎり、労働者は検査を受け入れるべき義務がある。

所持品検査が違法とされた判例

神戸製鋼所事件 大阪高裁 昭和50.3.12

入門時の私品点検は、持込の許されない物品を所持していることを疑うに足りる相当な事由がある場合に限りこれを行うことができ、単なる会社側の見込みだけによって所持品検査をすることは許すべきではない。所持品検査での就労遅延による賃金カット分の支払いを命じた。

日立物流事件 浦和地裁 平成3.11.22

財布がなくなったとの顧客からの連絡により引っ越し作業員に行った所持品検査に関して、就業規則等の明示の規定に基づかない点で違法であり、また明示の同意なくして身体に触れたものであるから方法としても妥当ではない。慰謝料30万円の支払いを認容。

サンデン交通事件 山口地裁下関支部 昭和54.10.8

私物の提示を求めて着衣の上から手で触ったり、被検査者自身に全てのポケットの中袋を裏返しさせたり等の一律に被検査者全員に対し強要しうる所持品検査のやり方は、 バス乗務員に不信感を露骨に表明し、多大の屈辱感を与えかねない。著しくその方法・程度を逸脱している。

慰謝料30万円の支払いを認容。

芸陽バス事件 広島地裁 昭和47.4.18

所持品検査の対象となるものは乗務と密接に関連するもの、すなわち、服装検査のほか、乗務に際し会社から命ぜられて業務上携帯した物品、乗務に際し特に携帯した私物に限られるとし、通勤用自家用車内の点検を拒否した解雇は無効。

東陶機械事件 福岡地裁小倉支部 昭和46.2.12

労働者の携帯品検査拒否は意識的に悪意をもってなされたものではなく、衝動的にとられた行動で情状はさほど悪質とは思われないこと等から懲戒事由には該当しない。

 

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