労働者が一方的な退職をした場合の退職金について

労働者の一方的な退職時の判断はケースバイケース

判例は、懲戒解雇に伴う退職金の全部または一部の不支給は、これを退職金規程などに明記して労働契約の内容として初めて行うことができ、そのように明記すれば賃金全額払の原則には違反しないとしています。

また、退職金の功労報償的性格に照らして考えれば、そうした規定を一般的に公序良俗違反とすることも適切だとはいえないとしています。(三晃社事件 最二小判 昭和52.8.9)

しかし、退職金の性格からは、退職金不支給規定は、労働者のそれまでの勤続の功を抹消(全部不支給の場合)ないし減殺(一部不支給の場合)してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合においてのみ、適用できるものと考えられます。

会社の承諾を得ないで無断で一方的に退職した場合も、原則として2週間経つと退職の効力が発生することになりますが、このような場合に退職金を支給しなければならないかどうかという問題が生じます。

こうした場合は、退職日までの2週間を勤務しなかったことによる業務上の支障、突然退職の影響、事務引継の有無など、諸般の事情を考慮し、ケース・バイ・ケースで判断しなければなりません。

橋元運輸事件 名古屋地裁 昭和47.4.28

退職金の全額を失わせるに足る懲戒解雇の事由とは、労働者に永年の勤続の功を抹消してしまう程の不信行為があったことを要し、労働基準法20条但書の即時解雇の事由より更に厳格に解すべきである 。

栗山製麦事件 岡山地裁玉島支部 昭和44.9.26

従業員が会社の都合も考えずに辞めるときは、仕事に支障を来すことになるからであり、これを有効と認めることは即ち退職金をもって労働契約の債務不履行(2週間の効力発生期間を勤務しないことなど)について損害賠償にあてることに帰着し、これは労働基準法16条(賠償予定の禁止) 、24条(賃金の全額払) に反することを是認することになるから、仮に右定め(円満退職者以外には退職金を支払わない旨の就業規則)があったとしても、右の法律に反するものとして無効である。

大宝タクシー事件 大阪地裁 昭和57.1.29

退職を申し入れても2週間は勤務義務があるので、これを怠ることは労働者の義務違反であるから退職金不支給も正当 。


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